“殺し屋(キラー)”から“処刑人”へ……。

この夏、処刑人がやってくる。『KILLER IS DEAD』最新デモリポート&須田剛一氏インタビュー!【GDC2013】_02

 角川ゲームスから2013年夏にプレイステーション3とXbox 360で発売予定の『KILLER IS DEAD』。
 3月25日よりサンフランシスコで開催中のGDC 2013(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス2013)に合わせて、アメリカでパブリッシングを行うXSEEDにより、本作のプレゼンテーションとインタビューが国内外のメディアを対象に行われた。

 あらためておさらいをしておくと、本作の主人公は、依頼人からのオーダーに応じて犯罪者を処刑することを業務とする近未来の秘密の国家機関“処刑事務所”のひとつ、ブライアン処刑事務所のモンド・ザッパ。プレイヤーはこの、さまざまな武器に変形する改造義手の左腕と、悪人を叩き斬る刀がトレードマークの処刑人となって、数々の“依頼”に挑むことになる。

 プレゼンテーションでは、ボスのひとり“ヴィクター”とのバトルを実機プレイで見ることができたのだが、すぐに気がついたのは、熱と冷たさが同居する独特なクールな雰囲気だ。
 まずはグラフィック。トゥーンシェーディングとはまた違う、バキバキにエッジが立ったハイコントラストな絵作り(開発チームでは“ハイコントラストシェーディング”と呼んでいるらしい)に鮮やかなエフェクトが乗ることで、“冷たい熱気”とでも言うべき独特な空気感がある。
 それはキャラクターも同様で、モンド・ザッパは人殺しという非常にアグレッシブなものを生業としながらも、あくまで殺しを仕事として捉えているわけで、ここでも対称的なものが同居しているのだ。

 戦闘はグラスホッパー・マニファクチュア流の刀を使ったアクションにTPS(三人称視点)スタイルの銃撃などがミックスされ、回避行動などを織り交ぜながらコンボを決めていくといった感じ。
 ちなみにヴィクターとの戦闘中も大仕掛けなステージにド派手なエフェクトが飛び交いまくるのだが、画面がうるさくなりすぎるかと思いきやシックな感じもキープされていて、あくまでデモを見ての感想でしかないが、「やりすぎ、でもクールにカッコいい」という、グラスホッパー・マニファクチュアの従来のケレン味たっぷりの演出の先にある新境地に到達しそうな予感がした。

この夏、処刑人がやってくる。『KILLER IS DEAD』最新デモリポート&須田剛一氏インタビュー!【GDC2013】_10
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▲今回の犯罪者ヴィクターは、曲で感情を操る天賦の才を持つ音楽家“ジュビリー”からその才能を奪い、世界を悪意で満たそうとしている……。というわけで、音楽にまつわるヘッドフォンや音量メーターなどのモチーフが見られる。
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▲ダメージを一定量受けて変身するヴィクター。しかし最後には一刀両断!

心のカタナを研いで待て!

この夏、処刑人がやってくる。『KILLER IS DEAD』最新デモリポート&須田剛一氏インタビュー!【GDC2013】_01

――今回、アートスタイルがすごい印象的ですね。
須田剛一氏(以下、須田) 絵作りに関しては結構時間がかかりました。特に女性キャラクターをトゥーンシェーダーで綺麗に魅せるのは結構難しくて……シャドウの入れ方だけで女性って結構変わってくるんですよね。
 今回セクシーな女性、ボンドガールならぬ“モンドガール”というのがジゴロモード(後述)にたくさん登場しますので、彼女たちにもシェーダーとして乗せられるものを目指しました。

 『ノーモア☆ヒーローズ』でのデビュートレイラーで、プリレンダーのものがあるんですけど、それが結構ハイコントラストで、当初(『ノーモア☆ヒーローズ』で)やりたかった絵作りだったんですね。
 その時は難しかったのですが、『KILLER IS DEAD』では、あの絵に近づけよう、超えようというのを掲げて、アートのリーダーをやっている笠原(隆史氏)が何とかこのシェーダーを仕上げてくれました。
 彼はグラスホッパー・マニファクチュアの歴代の女性キャラクターをほぼ全般やっていまして、本当にエロい女を作らせたら世界一、謙虚に言って世界3大女性モデルアーティストだと思っているのですが、彼らアートのチームのおかげで、今回自信を持って代名詞と言えるアートができたと思います。

この夏、処刑人がやってくる。『KILLER IS DEAD』最新デモリポート&須田剛一氏インタビュー!【GDC2013】_05
▲モンドの後ろで「ボフッ」となってるエフェクト、これが手描き風に動いていてキュートでクール。

――キャラクターが今回はまた渋い感じですよね。仕事人という風体で。
須田 そうですね、必殺仕事人シリーズが大好きで、それで今回は中村主水ならぬザッパ・モンドと。
――そこだったんですね!
須田 いわゆる外国人のキャラクターで、西洋マーケットに向けて仕事人スタイルのゲームを作りたいと思っていたんです。なので(必殺仕事人の闇の裏稼業のように)チームなんですね。事務所という体で仲間がサポートして、ひとつの依頼をこなしていくサイクルも影響されたものです。

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――カタナというモチーフは海外でも喜ばれそうですが、反対側の手が銃にもなるサイボーグハンドになっているっていうのがスゴいですよね。なんでこうなっているんですか?
須田 最初にプロトタイプを作った時のイメージは、彼が飛行機に乗っていて、なぜかカタナを持っているんですね。それでステーキが出てきて、片手からフォークがガチャッと出てきて、カタナで切るというキャラクター像が最初に思い浮かんだんです。それで「あ、これでいこう」と左手を機械化することにして。
 今回は入れられなかったんですが、左手を五徳ナイフのようにして、ドライバーなんかでボスを解体していくというボスバトルのイメージもあったんです。最初は銃はそのおまけぐらいの感じでしたね。
 そこからモンドの背広を着て、ネクタイをして、国の仕事をする公務員であるというのが固まっていった感じですね。

――逆にボスには何か共通するモチーフはあるのでしょうか?
須田 あまり共通するモチーフはないのですが、これまでに誰も見たことないボスファイトを作るということ、どこのスタジオも作れないようなものを出して、皆さんに「こんな敵と戦うんだ」とびっくりしてもらうという部分は意識して作っていますね。

この夏、処刑人がやってくる。『KILLER IS DEAD』最新デモリポート&須田剛一氏インタビュー!【GDC2013】_04

――チェーンソーなどを経て、今回またカタナのアクションに戻ってきたという辺りへの意気込みは。
須田 ソードアクション、スラッシュアクションというのは日本のアクションゲームのお家芸でもあると思うんですよね。すばらしいアクションゲームがたくさんある中で、うちもしっかりと形を作りたいと思っていますし、しっかり磨き上げて、『KILLER IS DEAD』ならではの爽快感を目指したいですね。どういったフィニッシュにするかというあたりも含めて、カタナの気持ちよさは追求していこうと思っています。
――コンボシステムなどはあるのでしょうか?
須田 成長させていくコンボツリーがあります。

――今回ストーリー的には連続ドラマのように進んでいくということでいいでしょうか。新たな章に行くと“今週のエピソード”といった体で新たな依頼がやってくるといったような。
須田 まさにそうですね。プレイヤーにとってもモチベーションになると思います。依頼が来て、今回はどんなやつを処刑するかがわかってきて、どんなボスファイトになるんだと想像しながら進む、そんなサイクルで遊んでほしいですね。
――それが一個一個は関係なかったものが段々繋がってきて……というような。
須田 はい。あと一応、同じミッションに何回も行くこともできますので、どんどん武器のパワーアップもできます。

――日常パートのようなものはないのでしょうか。
須田 いくつかサブミッションは用意してあるんですが、基本的にはずっと処刑が続いていくので、やっぱりプレイヤーは疲れると思うんですよ。なので今回は息抜きにジゴロモードというのを用意しています。これはモンドガールを口説くというシチュエーションですね。それがご褒美として出てきます。
――そういえば、モンドは普通にモテそうなキャラですよね。
須田 こいつはモテますね。導入でそうなんですが、トイレで一発○○てるんですよ。それで呼び出されて任務に行くという。ジゴロモードは本当に注目してほしいですね。

この夏、処刑人がやってくる。『KILLER IS DEAD』最新デモリポート&須田剛一氏インタビュー!【GDC2013】_07

――ところで直訳して「殺し屋(キラー)が死んだ」って、このタイトルにはどういう意味が込められているんでしょう?
須田 元々はワーキングタイトル(仮タイトル)だったんですね。スミスの「Queen is dead」のクイーンをキラーに変えて。でも、何を指しているのかわからない部分も含めてこのゲームにあってるんじゃないかということで、そのまま正式タイトルになっています。逆に、このタイトルで何を思いますか?
――やっぱり最初は『killer7』があると思うんです。で、それを踏まえて「キラー? 死んだよ。これからは処刑人だから」って言っている感じがするんです。
須田 そういう感覚もちょっとありますね。僕は続編に関してあまり意識がなくて、新しいものを生み出して行きたいので……新しいクリエイティブを提供するという宣言なのかもしれませんね。
――あえて名前は断ち切って、でも精神的には繋がっていると。では最後に、ズバッと見得を切るような感じにメッセージをお願いします!
須田 『Killer is Dead』というひとつの劇場が夏にいよいよ公開されますので、ぜひ皆さんの心のカタナを研いで待っていてください!