『P4G』がいよいよ発売! アトラス・平岡直人氏インタビュー【ゲームメーカー新時代戦略】

新生インデックスでゲームブランドとして存続する“アトラス”の今後の施策は!? インデックス 取締役 執行役員コンシューマソフトウェア局 局長 インタラクティブゲーム局アミューズメントマシン局 管掌の平岡直人氏に話を聞いた。

●会社名が変わっても“アトラス”のゲームは不変

 ソーシャルゲームの急成長に象徴されるように、ゲーム業界を取り巻く環境は激変している。そんな中、ゲームメーカーの舵取りを担うキーパーソンたちがどういった戦略で挑むのか。インタビューを通じ、ゲーム業界の“いま”と“これから”を探る。
 第4回は、新生インデックスでゲームブランドとして存続する“アトラス”をマネージメントする、インデックス 取締役 執行役員コンシューマソフトウェア局 局長/インタラクティブゲーム局アミューズメントマシン局 管掌の平岡直人氏に話を聞いた。
※本記事は、週刊ファミ通2012年6月21日号(6月7日発売)に掲載されたものです。

インデックス 取締役 執行役員
コンシューマソフトウェア局 局長
インタラクティブゲーム局
アミューズメントマシン局 管掌
平岡直人氏

■コンシューマーゲームはインデックスの最重要事業

――まず、平岡さんの経歴からお伺いします。

平岡直人氏(以下、平岡) 旧アトラスに2001年に入社し、『真・女神転生III-ノクターン』のプロジェクトマネージャーとしてキャリアをスタートしました。それ以降も、“第一開発”という『真・女神転生』シリーズをメインに取り扱う社内の開発チームで、『デジタル・デビル・サーガ ~アバタール・チューナー~』や『デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 アバドン王』、そして『ペルソナ3』、『ペルソナ4』などでも同様にプロジェクトマネージャーを務めました。

――各タイトルの開発チームの進捗管理やマネージメントなどを担当されていた、というわけですね。

平岡 はい。ただ、ゲームボーイアドバンス版の『真・女神転生』と『真・女神転生II』、プレイステーション版の『真・女神転生if...』など、ディレクターを担当したタイトルもあります。その後、2007年より開発全体を統括する責任者として開発タイトルや中期計画の立案などを任され、2011年から現職に就いています。

――開発畑出身の取締役という方は、あまり多くはいらっしゃらないですよね。

平岡 そうかもしれません。開発出身ということで、ユーザー目線に立ったマネージメントができるのでは、と自分では思っています。

――2010年10月にインデックス・ホールディングス、インデックス、アトラスの3社が合併し、新生インデックスが誕生しました。“アトラス”という名称はブランド名となったわけですが、旧アトラス側にはどんな変化があったのでしょうか。

平岡 もともと、アトラスのゲームやプリクラに代表されるアミューズメント事業が好きで入社した人が多い会社でしたので、アトラスというメーカーではなくなったことに関して、動揺がなかったと言えばウソになります。ですが、旧インデックスは携帯サイトやWebの制作事業など、おもにB to B(Business to Business:企業間の取り引き)中心の事業だったのに対し、我々旧アトラスはゲームをお客様に届けるB to C(Business to Consumer:企業と一般消費者の取り引き)という側面があるエンターテインメント事業が主軸です。そのため、一気に組織が変わることなくスタートできましたし、ゲーム開発にも大きな影響を与えずに進めることができました。新生インデックスとなってまだ1年半くらいですので、これからは異なる業種であることを利点とし、互いのノウハウを持ち寄って、新しい可能性を模索するといった相乗効果も期待しています。幸いなことに、コンシューマー(家庭用)ゲーム事業はいちばん好調な事業分野となっているうえ、新生インデックスは、エンターテインメント会社としてB to Cに近い業態転換をしている最中ですので、我々が推力となって会社を引っ張っていけるのではないかと考えています。いまや、コンシューマーゲームはインデックスの主事業ですから、これからも最重要事業として、ユーザーの方々に満足していただける作品作りに取り組んでいこうと思っています。

■今後も新規タイトルを毎年コンスタントにリリースしたい

――2011年のゲーム事業全般を振り返って、どのような年だったとお考えですか?

平岡 ひと言で言えば“チャレンジの年”でしたね。2011年は『キャサリン』や『デビルサバイバー2』、『ノーラと刻の工房 霧の森の魔女』などを発売しました。その中でも『キャサリン』と『ノーラと刻の工房 霧の森の魔女』は、これまでのアトラスにはない作品になりました。とくに『キャサリン』は、国内外でさまざまな賞をいただきましたし、ユーザーの方々からの評判も上々のようで、ありがたく思うと同時に手応えも感じることができました。今後も、新規タイトルは毎年コンスタントにリリースしていきたいですね。Wii Uといった新しいハードも登場しますし、新しいハードが出れば、新しい可能性が生まれますから、その中からどういった遊びかたができるか、というのは、つねに考えていきたいです。

――『キャサリン』は、内容もさることながら、ほかのタイトルとは一線を画したプロモーション展開が成功した一例だと感じます。

平岡 ありがとうございます。『キャサリン』というタイトルが持つ個性に合わせたプロモーションを考えていったことで、結果的にユーザーの皆さんに大きな期待を持っていただけたんだと思います。日本で一定の成果が収められたので、北米でも同様の宣伝展開を行ったのですが、あちらでも好評で、全世界累計販売本数も手応えを感じられる数字に達しました。日本人の我々の感性で作った新規タイトルで、海外展開を強く意識した作品ではないにも関わらず、加えて宣伝も日本と類似した手法で展開し、ワールドワイドで一定の評価を得られたというのは今後の自信になりましたね。

―― なるほど。2クール放送されたアニメ『ペルソナ4 the ANIMATION』や月刊誌『ペルソナマガジン』の刊行など、メディアミックスにも力が入っている印象を受けますが。

平岡 我々は、どちらかと言えばコア層の方々には認知していただいているのですが、ライト層に訴求するには、ゲームソフトだけでは限界があると感じていました。そこで、いろいろな方にアトラスのゲームを知っていただこうと、マルチメディア展開といった施策にチャレンジしたのです。『ペルソナ4』に関しては、舞台化やライブなども実施したのですが、会場に足を運んでいただいた方の中には女性ファンも多く、新しいファン層を開拓できたことをうれしく思うと同時に、マルチメディア展開の効果を改めて実感できました。

――『ペルソナ3ソーシャル』など、ソーシャルゲームも好調のようですね。

平岡 ソーシャルゲームからコンシューマーゲームに興味を持つ方もいらっしゃるかもしれないので、オリジナルのソーシャルゲームは別として、自社IPのソーシャルゲーム化はマルチメディア展開の一環として捉えています。今後は『ペルソナ4ソーシャル(仮題)』を始め、『真・女神転生』、『世界樹の迷宮』の両シリーズの新規ソーシャルゲームを夏にサービスインする予定です。

―― ソーシャルゲームに関しては、どのようにお考えですか?

平岡 時間を使って遊ぶという点ではどちらも同じですので、弊社では区別して考えていません。ただ現状は、コンシューマーゲームユーザーが遊びたいゲームと、ソーシャルゲームユーザーが遊びたいゲームに、違いはあると思います。我々はユーザーが望むゲームを提供していきたいと考えていますので、求められているゲームを求められているプラットフォームでリリースしていくつもりです。

■『ソウルハッカーズ』の“つぎ”も考えたい

―― これから、2012年6月14日に『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』(以下、『P4G』)、同年7月5日に『世界樹の迷宮IV 伝承の巨神』、同年7月26日に『ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ』(以下、『P4U』)、8月30日には『デビルサマナー ソウルハッカーズ』と、リリースラッシュですね。

平岡 はい。この夏は、我々にとってひとつの山場です。『P4G』は、もう少し早くお届けするつもりだったのですが、プレイステーション Vitaはある意味モンスターマシンでして。これまでだと、開発の過程で仕様を削ることはあっても、追加していくことはなかなか難しいのが実態でした。ですが、PS Vitaでは逆に「あれもできる! これもできる!!」と、どんどん要素を追加していった結果、開発に想定以上の時間がかかってしまいました。ただ、お待たせした分、いいものに仕上がっていますのでご期待いただければと思います。

――『P4G』は、PS Vitaを牽引してくれるタイトルとして、市場はもちろん、ソニー・コンピュータエンタテインメントも期待していると思います。

平岡 販売店や流通の方々からもそういったお声をいただき、期待を感じています。アトラスは大手ブランドではありませんので、これまで先頭を切ってハードを引っ張るということはなかったのですが、今回は、その役割を担える、我々の代表作の1本になるのではないかという手応えがあります。『P4G』がPS Vitaの、引いてはゲーム業界の活性化に貢献できればうれしいですね。

―― 一方、『P4U』は、アークシステムワークスと共同開発した対戦格闘ゲームという、2012年のチャンレジだと思うのですが。

平岡 そうですね。もともとの経緯としては、RPGというジャンルだけで『ペルソナ』シリーズを展開していても、ファン層が広がっていかないのでは、という危機感を抱いていたからなんです。そんな中で、社内で検討したアイデアの中に、“『ペルソナ』のキャラクターを使った格闘ゲーム”というのがありました。アークシステムワークス様は、2D格闘ゲームという市場でもナンバーワンメーカーであるという認識を持っていたため、思い切って木戸岡様(代表取締役の木戸岡稔氏)に相談したところ、ご快諾いただきまして、今回のコラボレーションが実現しました。プレイステーション3版、Xbox 360版では家庭用ゲーム機向けの要素も追加していますので、じっくりと遊んでいただければと思います。

―― ほかのメーカーやデベロッパーとのコラボは、今後も展開するお考えですか?

平岡 コラボに関しては、双方に新しい可能性が生まれると思いますので、今後も積極的に展開していきたいですね。現在もさまざまな可能性を模索しつつ、各方面にいろいろ相談をしたりしております。もちろん、内製にもこだわりたいと思っていますが、たとえば『P4U』のような格闘ゲームに関しては、長年ノウハウを蓄積されているアークシステムワークス様には絶対にかなわない。弊社にはない、その分野のトップの技術をお持ちのところと、新たな可能性を模索できたらいいですね。また、コラボに限らず、アトラスはRPGというイメージが強いと思うのですが、今後の課題として、RPG以外のジャンルにも積極的に挑戦し、ユーザーの方々に提案していこうと考えています。ヴァニラウェア様が開発し、我々がプロデュースする『ドラゴンズクラウン』も、新しい提案のひとつです。自社開発だけではなく、外部の有力なデベロッパー様やクリエイターの方々といっしょにゲームを開発していくという機会も、増やしていきたいです。

――『 デビルサマナー ソウルハッカーズ』も、心待ちにしているファンの方が多いようです。

平岡 多くの方からつねにご要望をいただいていましたが、ようやく発売できます。本作で、ユーザーの皆さんの反応や感触を見て、“つぎ”も考えたいですね。

『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』

『ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ』

『世界樹の迷宮IV 伝承の巨神』

『デビルサマナー ソウルハッカーズ』

■満を持して『真・女神転生IV』始動

―― そしてこの夏に続く、もうひとつの“山場”が、今後やってきますね。

平岡 はい。ナンバリングとしては約9年ぶりのシリーズ最新作、『真・女神転生IV』をリリースすることになりました。ファンの方々からの要望は、長年にわたっていただいていましたが、続編の発表に関しては慎重に考えていました。ですが、9年かかっただけの作品に仕上がる手応えはあります。私がアトラスに入社して初めて携わった『真・女神転生III』の次回作を、ようやく発表できて、隔世の感はありますが(笑)。とにかく、感無量ですね。

―― それだけ御社にとっても、『真・女神転生』シリーズというのは特別なタイトルだと。

平岡 創業時の看板タイトルですし、『ペルソナ』、『デビルサマナー』といった弊社の主力タイトルの大元となったシリーズですので。おかげさまで、古くからのファンも待ってくださっているようですし、iOS向けにリリースしている『真・女神転生』が好評で、間もなく『真・女神転生II』もお届けできる見込みです(※2012年6月12日に配信開始)。新しいファンの方もいらっしゃいますので、『真・女神転生IV』はぜひ成功させたいですね。

――『 真・女神転生IV』のウリの部分は、どこになるのでしょう?

平岡 既存のファンの方々を裏切らない“正統進化”、というところでしょうか。『真・女神転生』のユーザー層は、比較的古くからのファンの方が多いと思いますし、「これぞ『真・女神転生』!」というものを求めていると感じています。戦闘システムも旧来のものを踏襲しており、『メガテン』たらしめる要素はひと通り入っていると思います。

――『真・女神転生IV』の対応機種はニンテンドー3DSですが、タイトルごとにどういった基準でハードを決められているのですか?

平岡 このタイトルを望むお客様がどのハードに多いか、という判断をしています。とはいえ、ハードの性能上、得意不得意といった部分もありますので、作品で表現したいこととハードの特性も考慮しています。また、Xbox 360は、海外展開を考えたときに外せないハードですので、欧米を見据えた作品に関しては、なるべく据え置き機で開発しようと考えています。ただ、我々が作るタイトルは開発期間が長いものも多く、そのあいだにハードが移り変わることがありますから、移行しやすいハードを選択することもあります。たとえば、『P4G』はもともとPSP用に開発していたのですが、PS Vitaが発表され、「我々が望む携帯ゲーム機がついに出る!」と思い、さらに作品との相性も考慮して、すぐにPS Vita用ソフトとして開発を再スタートしました。

■コンシューマーゲームのラインアップを強化

―― 今後は、アトラスブランドをどう舵取りなさる予定なのでしょうか。

平岡 コンシューマーゲームとソーシャルゲームの双方を展開し、後者(インタラクティブゲーム局)も弊社のゲーム部門のふたつ目の柱にしてきたいと思っています。ただ、一般的にソーシャルゲームの成長が著しいがゆえに、我々もそちらに力を入れていくのではないか、と心配されるゲームファンの方もいらっしゃると思いますが、コンシューマーゲームのリリースを減らすつもりも、ましてや撤退するつもりはまったくありません。逆に、コンシューマーゲーム事業は、インデックスの主事業です。これからも、ゲームファンの方々に満足していただける作品作りに取り組んでいきますので、ご安心ください。いまも、コンシューマーゲームの企画自体は多数挙がっていて、リソース(人的資源などの意)が足りないくらいの状態でして。「リソースがあれば、あれもこれもできるのに」というくらい、力を入れています。コンシューマーゲーム事業はこれからも拡大していきたいですし、現在も実際に開発に着手しているものだけで、10作品以上を並行して進めています。その中には3年後、4年後を見据えたものも仕込んでいますし、それに付随して現在、人材募集を行っており、開発体制も強化する予定です。

―― いま、コンシューマー事業で人材募集できるメーカーは、なかなかないですよね。

平岡 そう思います。弊社は常時募集していますので、ご興味のある方は公式サイトをご覧になっていただければと思います。ソーシャルゲームを含め、幅広い部門で募集しており、必ずしも経験者だけに限ってはいません。未経験者であっても、アトラスのゲーム開発に関わりたい、オリジナリティーがあるゲームを作りたいという熱意ある方は大歓迎です。

―― そういったお話を聞いていると、ゲーム事業がいかに好調かということがうかがえます。

平岡 はい。おかげさまで、ゲームブランド“アトラス”に関するゲーム事業は、しばらくずっと好調です。弊社インデックスの過去の負債に基づいて、株価が変動したりといった部分でご心配をいただくこともあるのですが、現在は負債の圧縮も進み、いかにゲーム事業を拡大していくか、いかによりよい作品を継続的にお客様に届けるかに注力できています。

―― アトラスブランドのゲームをひと言で表すと、どんなゲームとお考えですか?

平岡 “お客様の期待を裏切らないゲーム”でありたいと思っています。手に取っていただいたら、多くの方に満足を感じてもらえるゲームブランドでありたいですね。また、そのレベルのクオリティーになったと手応えを感じられるまでは、リリースをしません。ユーザーの皆さんのお手元に届けて恥ずかしくないものになるまでは発売しない、というのはポリシーです。そのうえで、期待に応えられるものを出しつつ、新しい提案もしていけるソフト会社でありたいと思っています。また、独自性、差別化というものも重視しており、それがアトラスらしい個性溢れるゲームにつながっているのだと思います。

―― では最後に、アトラスが今後、目指すところをお聞かせください。

平岡 ブランド名になったということで、心配されている方もいらっしゃるようですので、「アトラスのゲームなら安心」というブランドイメージの向上を、よりいっそう図っていこうと考えています。先ほども述べた通り、我々コンシューマー事業は拡大戦略で進めています。今後もタイトル数をよりいっそう増やし、なおかつ、クオリティーを下げずにファンが求めている作品を制作していこうと考えています。アトラスのゲームのクオリティーはこれまでと変わりませんし、今後も上がることはあっても、下がることはありません。ぜひ、これからも応援していただければと思います。

 


 

■ゲーム新時代のキーワード
 アトラス 平岡直人氏

新生インデックスとなっても、“アトラス”ブランドのゲームのクオリティーは不変。むしろ、それ以上のものを目指す、と力強く語った平岡氏。そんな平岡氏が挙げた、今後のゲーム業界に必要なキーワードは、“継続”と“革新”。『真・女神転生IV』に象徴されるように、ユーザーが望むものを継続してリリースしつつ、ときには『キャサリン』のような新機軸のゲームにも挑戦するアトラスのポリシーも感じさせる言葉だ。コンシューマーゲーム事業の拡大路線を進める“アトラス”が、“継続”と“革新”を軸に、ゲーム業界で存在感を増していきそうな勢い。今後のアトラスから目が離せない。