●極限状態を生き抜くふたりのサバイバー……!

ノーティドッグ
共同社長
Evan Wells氏

 2012年のE3でも、さまざまな新作タイトルが発表されているが、そのなかでもひときわ異彩を放っているのが、プレイステーション3用ソフト『The Last of Us』(※詳細は【コチラ】)だ。E3 2012で開催された各社のカンファレンスを見る限り、大作アクションゲームはキャッチーで見栄えのする演出を随所に盛り込み、“シネマティックなゲーム体験”を追求する傾向にある。だが、『The Last of Us』は、過剰な演出を抑え、極限状況をひたすら生々しく描写している。そんな作品が、なぜゲームファンのあいだで大きな話題を集めているのか? その疑問を少しでも解消するために、本作を手掛けているゲーム製作会社ノーティドッグの共同社長であるEvan Wellsに話をうかがった。これまで明らかにされていなかった新情報が満載なので、気になる人はぜひチェックしてほしい。


――『The Last of Us』のプロジェクトは、いつごろからスタートしたのでしょうか?

Evan 2009年10月に『アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団』をリリースした開発チームが、ソフトの発売からおよそ半年ほどの構想期間を経て、プロジェクトを立ち上げたのが『The Last of Us』です。だからだいたい2年前くらいでしょうね。

――『The Last of Us』を作ろうと思ったきっかけを教えてください。

Evan ノーティドッグに所属するゲームデザイナーは、ふだんからたくさんの映画や小説などに触れています。ある日、ふたりのゲームデザイナーが、アリの脳を支配し、胞子の拡散に適した場所まで移動させるという、BBC製作の昆虫寄生菌のドキュメンタリー映像を観ていて、「これを人間に置き換えたらどうなるだろう?」と思いついたのがきっかけです。また、それとは別に、『No Country For Old Men(邦題:ノーカントリー)』というコーエン兄弟製作の映画があり、以前から同作と同じようなシンプルなストーリー性や味わいを持つ作品を作りたいと思っていたので、雰囲気作りの参考にしています。

――『The Last of Us』の世界では、いったい何が起きているのでしょうか?

Evan 本作の舞台は、新型のウイルスの蔓延で人口が激減してしまったアメリカです。ストーリーは、感染が広がってから20年が経過した隔離施設のような場所からスタートします。そこには主人公のジョエルと少女エリーのふたりが住んでいて、最初はまったくの他人です。ジョエルは裏社会の運び屋なのですが、ある日、知人からとある依頼を受けます。その依頼とは、エリーをアメリカの東海岸から西海岸まで連れて行くというものです。ジョエルとエリーのふたりは、アメリカを横断する旅のなかで、暴徒化した生存者に襲われたり、崩壊した世界を再建しようとしている人たちと交流を深めたりすることになります。

――ジョエルとエリーは、どんな人物なのでしょうか?

Evan ジョエルは40代の男性です。彼は崩壊する前の“正常だった世界”を知っています。それに対して、14歳のエリーは、崩壊後に生まれています。ジョエルは生きていくためにしかたなく悪いことをしていますが、エリーは正常だった世界を知らないので、私たちが知っているふつうの14歳の少女とは考えかたや価値観が異なります。崩壊後の世界で生き延びるには、アグレッシブかつじゃじゃ馬でないといけないからです。まったく異なる価値観を持つふたりが、極限状況のなかで交流を深めていくのが、本作のおもなストーリーです。

――世代や考えかたの違いを超えて、ふたりが絆を深めていくのですね。

Evan ジョエルはウイルスが蔓延した際に家族や大切な人たちを失った過去を持っています。一方エリーは家族の愛を知らずに育ちました。そのふたりがお互いに欠けている部分を補うことになります。

――ソニー・コンピュータエンタテインメントのカンファレンスで披露されたデモプレイでは、主人公が敵と取っ組み合っているときに、敵の背中にナイフを突き立てるエリーの姿が衝撃的でした。彼女はジョエルの戦いをサポートしてくれるのでしょうか?

Evan エリーは崩壊後の世界で生き延びるために行動しています。ジョエルの戦闘のサポートはもちろん、フィールドに落ちている拳銃の弾を拾ってきてくれたり、敵がいる位置を教えてくれたりします。

――戦闘と言えば、『The Last of Us』の生々しい描写は衝撃的でした。敵を絶命させるために何度も殴らなければならなかったり、相手の隙を突いて背後を取ったときも締め落とすのに時間が掛かったりと、戦闘はひと筋縄ではいかなそうですね。

Evan 敵もまたジョエルたちと同じ立場に置かれているサバイバーです。彼らは死にものぐるいで襲いかかってくるので、非常に手強いのです。また、銃の弾丸にも制限があったりするので、本作の戦闘はつねに緊張感溢れるものになっています。

――人間だけではなく、ミュータント化した人物も登場するのでしょうか?

Evan 現時点では詳細をお伝えすることができませんが、ウイルスに寄生された人間は、“Infect(感染者)”と呼ばれています。人間の敵も多数登場しますが、感染者のほうがはるかに手強く、恐ろしい存在となっています。

――今回のデモプレイでは、朽ち果てた都市のステージが公開されていますが、ほかにはどんなステージが用意されていますか?

Evan 先ほどご説明したとおり、本作のストーリーは、アメリカ大陸を東から西へ渡っていくというものになります。もちろん都市部だけではなく、大自然に囲まれたステージも登場します。

――最後にメッセージをお願いします。

Evan 近年、大作ゲームは、ド派手な表現を追求していく方向に向かっています。しかし、我々は『The Last of Us』で、あえて人間的な感情の機微を表現していくゲームを作ることにしました。ゲームファンの皆さんにそれを感じ取ってもらえるとうれしいです。