クリエイティブ・ディレクターとスタジオヘッドに話を聞いた

 2012年秋に日本マイクロソフトから発売が予定されているXbox 360の期待作『Fable: The Journey(フェイブル:ザ ジャーニー)』。2012年5月下旬、世界最大のゲーム見本市“E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)2012”の開催を目前に控えたタイミングで、同作の開発を手掛けるイギリスの大手ゲームデベロッパー”Lionhead Studios”がスタジオツアーが実施された。こちらの記事では、スタジオのキーマンふたりのインタビューをお届けしよう。
 

『Fable: The Journey』のキーマンふたりにインタビュー【Lionhead Studiosスタジオツアー その2】_01
▲クリエイティブ・ディレクターのGary Carr氏。

改めて問う『Fable』らしさ
クリエイティブ・ディレクター/Gary Carr氏インタビュー
 Lionhead Studiosでは先日、人事に大きな動きがあった。スタジオの創設者で、『Fable』シリーズの生みの親でもあるピーター・モリニュー氏の退社である。そして、彼に代わってスタジオの各プロジェクトを統括することになったのが、『Fable: The Journey』のクリエイティブ・ディレクターを務めるGary Carr氏だ。モリニュー氏と22年間仕事をしてきたというCarr氏は、モリニュー氏の意思を継ぐ人物と言える。そんなCarr氏に、『Fable』シリーズで大事にしていることを聞くと「商業的成功も大切だが、それ以上にファンが満足できて、自分たちが誇りに思えるゲームを作ること」という答えが返ってきた。遊ぶ側だけでなく、作り手も納得する作品、それが『Fable』なのだ。では、具体的に本作ではどんな試みで双方の満足を得るのか? 例に挙がったのは、日本のゲーム文化だった。「日本のRPGはストーリーが力強く、ユーザーもそれを楽しんでいる。我々はそれを常々うらやましく思っていました」。いわく、西欧は日本のRPGのようにストーリーで魅了する作品が少なく、『Fable』シリーズも例外ではなかった。しかし、『Fable: The Journey』は「シリーズで初めてストーリーを勇敢に語る」とCarr氏。日本のゲームファンとしては、本作の物語は大いに注目すべき点となりそうだ。

 また、Carr氏はKinect操作にも言及。スタジオ記事第1弾でも紹介した通り、『Fable: The Journey』はKinect対応タイトルでは珍しい、座ってプレイするスタイルを採用している。「本作はミニゲーム集ではなく、あくまで『Fable』シリーズであり、長い時間プレイすることになるでしょう。そうなると、座ってプレイするのがふさわしい」。また同氏は、今後Kinectを座ってプレイするシステムは増えていくだろうとも語る。「パーティーやエクササイズゲームだけでなく、ちゃんと腰を据えて遊べるコアなKinect対応タイトルが今後多く出てくるはずです」。
 

『Fable: The Journey』のキーマンふたりにインタビュー【Lionhead Studiosスタジオツアー その2】_02
▲スタジオヘッドのMark Webley氏。

『Fable』の本質は変わらない
スタジオヘッド/Mark Webley氏インタビュー
 「現在のもっとも重要なゴールは、『Fable: The Journey』を無事リリースすることだ」。スタジオのヘッド(代表)を務めるMark Webley氏は、自身の仕事についてそう語った。同氏はLionhead Studios創設者のひとりで、プログラマーやデザイナーを経て現在の立場に就いた。そして、『Fable』シリーズには最初期から関わっている。そこで、同氏には若干シビアな質問をしてみた。従来までのシリーズファンは、システムが大きく変化した『Fable: The Journey』の内容に納得できるのだろうか? Webley氏の第一声は「イエス!」。簡潔で力強いものだった。「ファンにはきっと楽しんでもらえると思う。これまで以上に興味を引くストーリーがあり、またKinectによるアクションは、より没入できるものになっている」。そのうえで、同氏はシリーズの本質が変わっていないことを強調した。「突き詰めればストーリーとコンバット。とてもシンプルなことだが、我々はつねにこのふたつに敬意を表している」。革新的でありながら、根幹は不変。『Fable: The Journey』はそんな作品になるのだという。

 Webley氏にはKinectの将来性についても聞いた。「PCのキーボードから始まり、各種ゲームパッドを経て登場したKinectですが、これはコントローラに代わるものではなく、まったく新しいものです。Kinectの登場により、いままでとは違う形でエンターテイメントの楽しみかたが提供できる」。またWebley氏は、Carr氏同様、今後Kinectで遊ぶコアゲームは増えてくると話す。「現在Kinectで多く出ているカジュアルゲームは、Kinectの数ある使い道のほんの一部です。言うなれば、氷山の一角。『Fable: The Journey』が提供する、座ってプレイするKinectの経験は非常にエキサイティングで新しいものになるでしょう」。

 ちなみに『Fable: The Journey』の開発状況は現在最終段階に入っているという。今後はプレイバランスの調整などにじっくりと時間を掛けて、秋の発売を目指すという。