記憶と平穏を失った主人公が復讐のために立ち上がる!

 2012年もさまざまな大作が発売されるが、海外で大きな注目を集めているのがActivisionの『Prototype 2』だ。オープンワールドのアクションゲームで、ある事件によってすべてを失ったJames Hellerが、復讐のために戦う……という内容だ。

 タイトルに『2』とついているからには当然前作が存在する。というわけで、今回は2009年に海外で発売され、大ヒットしたシリーズ1作目『Prototype』のインプレッションをお届けしよう。本作を知らなかった人も、本校を読んで来たるべき『Prototype 2』に備えるのだ!

 本作の舞台はアメリカのニューヨーク。主人公Alexが死体置き場で目覚めたところから物語はスタートする。あわや解剖寸前というところで意識を取り戻した……というより生き返ったAlexは、警備兵に銃弾を浴びせられるもものともせず、高いフェンスをジャンプで跳び越えて逃走に成功する。このとき、彼は自身の異変に気がついたのだ。なんか俺、超強くなってる……!?

 Alexは自身の身体を自在に変化させられる能力、そして常人とは比較にならないほどのパワーを手に入れていた。その代償として失ったものは、これまでの記憶と平穏な日常生活。いったい彼に何が起こったのか、彼を変えてしまったのは誰なのか。過去の記憶を探し、犯人への復讐を目指すダークヒーロー・Alexの長い物語が、ここから始まるのである。

ダークヒーローが暴れ回る爽快アクション『Prototype』インプレッション【海外ゲーム温故知新】_01
▲パーカーを着ているのが主人公のAlex。ごらんのように、肉体を変化できる特殊能力を持つ。

ニューヨークの街を自由自在に駆け回れ!

 本作はオープンワールドのアクションゲーム。ニューヨークを自在に移動し、特定のポイントで発生するミッションを通じてストーリーを楽しむという流れだ。特筆したいのは、このときの探索がほかのゲームとは比較にならないほど爽快ということ! Alexは前述のように超人的な身体能力を持っているため、なんとビルを垂直に駆け上がることが可能。そのままビルからダイブしてもいいし、ハンググライダーのように滑空もできる。路上を走るときも、クルマを踏みつぶしながら駆け抜けられる。障害物に阻まれることなく箱庭の街を疾走できる、その快感は本作の大きな魅力のひとつだろう。

ダークヒーローが暴れ回る爽快アクション『Prototype』インプレッション【海外ゲーム温故知新】_02
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▲ゲームジャンルは、『GTA』シリーズや『セインツ・ロウ』シリーズに代表される、オープンワールドアクション。多数の人々やクルマが行き交うニューヨークが舞台だ。
▲Alexはその能力を活用して、垂直の壁でも問題なく走ることが可能。文字通り、ニューヨークの町並みを自由自在に闊歩できるのだ。

 またAlexはさまざまな特殊能力を持っており、探索時に役立つのが“他人に変身する能力”だ。Alexはつかんだ人間を吸収することで、その人物の記憶や特殊能力を入手でき、さらに体力を回復できる。こうして直前に吸収した人間には、いつでも変身可能だ。この能力を利用すると、たとえば兵士に変身すれば、厳しい警備の軍事基地に何食わぬ顔で潜入可能。また敵に発見されて追いかけられた場合も、すぐさま他人に変身して追っ手を欺く、なんて使いかたができるのだ。

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▲吸収した相手に変身することが可能。兵士に変われば敵兵士に怪しまれることなく基地へ侵入可能だ。ただし攻撃したり、変身する瞬間を見られるとバレてしまう。
▲特定の敵を吸収すると、その人物が持っていた記憶を奪えることも。こうしてAlexに何が起こったのかが、少しずつ判明していくのだ。

俺の腕はよく斬れるぜ! 身体を変化させて戦う大迫力の戦闘シーン

 本作のもうひとつの魅力が、大迫力のバトルシーンだ。Alexは肉体を自在に変えられるため、たとえば腕を刃にして、アメコミ『X-Men』のウルヴァリンのように敵を切り刻むことが可能。装甲が厚い相手には、手を岩のように硬くして殴りつけ、遠距離攻撃を行ってくる敵には手をムチのように伸ばして遠くから串刺しにすることもできる。戦う相手に合わせて肉体を最適に変化させ、最大限のパワーで圧倒したときの“俺って最強!”感は半端ないのだ。

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▲自分の腕を鋭利な刃物にすれば、攻撃力が大幅アップ。さまざまな敵を切り刻んでやれ!
▲戦車のような厚い装甲を持つ敵には、腕を岩のようにして殴りかかるのが有効。敵に合わせて攻撃方法をチョイスするのだ。

 このように、人間相手には圧倒的な戦闘力を誇るAlexだが、じつは相手にする敵は軍隊であることが大半。銃器はもちろん、ロケットランチャーや戦車、さらにはヘリなど高火力の兵器を活用して攻めてくるのだ。このような状況になってくると、さすがに己の肉体だけで戦うのはちょっと厳しい。ときには敵の武器を奪い取って反撃し、ときにはクルマを投げてぶち当てるなど、さらに過激な戦いが要求される。

 またニューヨークには謎のウィルスがばらまかれているようで、これに感染してゾンビ状態となった人間と戦うことも。問題は、そのなかでも強力な“Hunter”だ。けっこうな序盤から登場するのだが、はっきりいって戦闘能力はAlexよりも大幅に高く、連続攻撃を受けようものなら一瞬で瀕死状態になってしまうほど。逆にこちらの攻撃はほとんど通じず、唯一ロケットランチャーぐらいしか対抗手段が存在しない強敵だ。

ダークヒーローが暴れ回る爽快アクション『Prototype』インプレッション【海外ゲーム温故知新】_08
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▲クルマをはじめとした、さまざまなオブジェクトを持ち上げることも。遠くを飛ぶジャマなヘリにぶつけてやれ!
▲敵の武器や兵器を奪うことも可能。戦車を乗っ取り、周囲のものをすべて瓦礫に変えてしまえ。
ダークヒーローが暴れ回る爽快アクション『Prototype』インプレッション【海外ゲーム温故知新】_10
▲このヌルッとした奴らがHunter。最初に遭遇するタイミングではとても歯が立たない強敵だ。

 このように、超人的な戦闘能力を持つAlexだが、場合によってはそれを上回る敵が出現するため、バトルの緊張感はかなりのもの。オープンワールドのゲームは戦闘がオマケ程度のものも多いが、本作では主軸として扱われており、それに見合う楽しさを味わえるのだ。

EPを溜めてさらに強靱な肉体を手に入れろ

 敵と戦ったりミッションをクリアーすると、EPというポイントを入手できる。このポイントを消費して自身をパワーアップする、成長要素も楽しめるのだ。

 成長できる部分は非常に多い。体力やジャンプ力などの基本的な身体能力の強化に加え、新たな技や特殊能力を取得したり、強化することが可能。自身が成長していることを体感できるばかりか、戦闘がどんどん派手になっていく楽しさも味わえるのだ。なお最初からすべての強化要素を選択できるわけではなく、本編ミッションの進行具合によって新たな強化が解禁されていく仕組み。そのため、ゲーム終盤までAlexを成長させる楽しさが続くのだ。

ダークヒーローが暴れ回る爽快アクション『Prototype』インプレッション【海外ゲーム温故知新】_11
▲アップグレード画面。入手したポイントで基本的な能力を強化したり、新たな技を覚えることができる。

オープンワールド定番のミニゲームも

 ほかのオープンワールドの作品と同様に、メインとなるミッション以外にもさまざまな要素が存在する。大きなものは、イベントと呼ばれるサイドミッションだ。現れた光の球をすべて集めるまでの時間を競う“Movement”、目的の場所にうまく飛び降りる“Glide”、制限時間内にどれだけ敵を倒せるかを競う“Kill”、軍隊と感染者の戦いに参加していずれかを全滅させる時間を競う“War”の、4タイプが存在する。いずれもクリアー時の成績によって金~銅までのメダルが獲得でき、さらに条件を満たせばより上位のプラチナメダルを取得できる。すべてのイベントで好成績を目指す、やりこみプレイも用意されているわけだ。

 それ以外にも、街に隠された光の球やヒントを集めたり、特定の人物を探し出して吸収する、収集系のミニゲームも多数用意されている。すべてを遊び尽くすには、膨大な時間がかかるだろう。

ダークヒーローが暴れ回る爽快アクション『Prototype』インプレッション【海外ゲーム温故知新】_12
▲緑色の球をすべて集めるイベント“Movement”。移動速度やジャンプ力を強化して、ハイスコアを目指せ!

 人間を超越した能力を身につけたダークヒーローになりきって、ニューヨークで暴れ回るのがとにかく楽しい本作。海外ではXbox 360とプレイステーション3、そしてPC版が発売されている。残念ながら日本では発売されていないため、もし興味を持った人は、海外版を扱うショップを調べてみるといいだろう。廉価版が発売されているのでお手ごろな値段で入手できるぞ。

著者紹介 喫茶板東
ファミ通Xbox 360で海外ゲームマニアックス、実績解除愛好会などを担当するフリーライター。ゲームはスポーツ以外ならどのジャンルでも好んでプレイ。『Prototype 2』もそうだけど、今年は『BioShock Infinite』が楽しみ!