『アンチャーテッド』シリーズのクリエイターが語る、開発最後の10%がゲームの価値を決める【GDC 2012】

GDC 2012開催最終日の2012年3月9日に行われた、Naughty Dogのベンセン・ラッセル氏による講演は、『アンチャーテッド 砂漠に眠るアトランティス』を例に、残りの10%でゲームをいかに“よいゲーム”を“すごいゲーム”にするかをレクチャーしたもの。

●“よいゲーム”から“すごいゲーム”へ

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▲ときに身振りを交え、アグレッシブに語るベンセン・ラッセル氏。

 記者は不勉強にも“polish”という単語を知らなかったのだが、辞書で調べてみると、“仕上げをする”、“磨き上げる”との意味のようだ。GDC 2012開催最終日の2012年3月9日に行われた、Naughty Dogのベンセン・ラッセル氏による講演“The Last 10: Going From Good to Awesome”は、プレイステーション3用ソフト『アンチャーテッド 砂漠に眠るアトランティス』を例に、残りの10%でゲームをいかに“よいゲーム”を“すごいゲーム”にするかをレクチャーしたもの。つまり、いかに“polish”するかを解説したものだ。日本語流にいうと、ブラッシュアップといったところだろうか。

 「“磨き上げ”に関してはけっこう敬遠されがちだが、ゲームのクオリティーを保つためには必須。ユーザーに不愉快な思いをさせないためにも“磨き上げ”に重点を置くべきだ。意識改革を行う必要はあるが、"磨き上げ”の時間をしっかりと確保することで簡単に対応できる」とラッセル氏。そのうえでラッセル氏は、「ムリな操作をさせない」、「難易度が急に高くなるのはおかしい」、「インターフェースがわかりにくい」といった“磨き上げ”で対応すべき問題点をあげる。「とにかく!」とラッセル氏は強調する。「これはゲームだから誰も気にしないだろう? という発想がダメ。そう思ったら直す必要がある」。


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▲ふんだんに映像を交え紹介。“Polish”前と後は、さながら間違い探しのようだ。

 要は、妥協は禁物ということだろう。なぜならユーザーは些細なことでもゲーム体験に没頭できなくなりがちだからだ。ちょっとしたことでせっかくのゲームにケチがつくのはもったいないというものだ。とはいえ、ラッセル氏が挙げてくれた実際のゲームでの“磨き上げ”の例は、「そういうことにもこだわるのかー」と、思わず関心させられる。たとえば、戦闘中に敵が転がる動きがぎこちなかったら修正、会話中にAIがまるで反応しなかったら修正、不要な1カットが入っていたら修正といった具合だ。実際のところゲーム性にあまり関係のないところも多いこうした“磨き上げ”が、ゲームのクオリティーをワンランクアップさせるというのだ。とくに、『アンチャーテッド』シリーズのような映画を思わせるゲームの場合は、“磨き上げ”はさらに重要になるのだろう。

 では、どうやって“磨き上げ”をしていくのか? まず前提となるのが“磨き上げ”の時間を取ること。『アンチャーテッド 砂漠に眠るアトランティス』では、通常のゲーム開発よりもアルファ版とベータ版の時間を余計にとり、その時間を“磨き上げ”にあてたのだという。「すべての開発工程の20~25%をアルファとベータにあてるべき」とラッセル氏。その際に取り入れたのが“ローリングデッドライン”というもの。ゲームの“磨き上げ”を妨げるのは、ゲームコンテンツが大き過ぎてどこから手をつけたらいいか、わからないという点にある。そこで『アンチャーテッド 砂漠に眠るアトランティス』では、ゲームをいくつかのセッションに分けて、準備“磨き上げ”に取り組んでいったという。


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▲開発全体の20~25%を“polish”にあてるとのこと。

 効率的な承認システムも興味深かった。『アンチャーテッド 砂漠に眠るアトランティス』では3人の責任者がおり、“磨き上げ”の承認にはアルファではひとり、ベータではふたり、そして最終段階では3人全員の承認が必須になったという。階層的な承認システムは、バグを修正することで生じるリスクとのバランスを取るためだ。ちなみに、現場のトップであるエヴァン・ウェルズ氏は、アルファ以降はこの“磨き上げ”に専念。修正が必要な場合は、バグリストに入れていくという。

 今後、きめ細かい“磨き上げ”は、ゲームの価値をさらにわけるものとなりそうだ。


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▲ゲームをいくつかのセッションにわけて“磨き上げ”をしていく“ローリングデッドライン”を採用。

▲バクチェックは担当ごとにタスクを管理し、抱えているバグが少ない開発者は、バグの修正が多い開発者のサポートに回ることも。

▲世界的に名高い『アンチャーテッド』シリーズの品質管理の秘密がここにあった。