カプコンのオンラインゲームの今後の展望を小野義徳氏に聞く【インタビュー完全版】

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サービス開始から4周年を迎える『モンスターハンター フロンティア オンライン』や、2012年夏のサービス開始を目指してバトルαテストが行われる『イクシオン サーガ』など、カプコンが展開するオンラインゲームの今後や事業戦略について、同社の小野義徳氏にインタビューを行った。週刊ファミ通2011年8月4日号に掲載されたそのインタビューの完全版をお届け。

●カプコンのいくつかのタイトルのオンラインゲーム化をもう少し最近のもので実現したい

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小野義徳
1994年カプコン入社。『ストリートファイターZERO』シリーズや『ストリートファイターIII』シリーズの開発など、多数のビッグタイトルに関わる。『ストリートファイターIV』、『モンスターハンター フロンティア オンライン』ではプロデューサーを務め、コンシューマー・オンライン事業におけるCS副統括兼東京制作部長としても活躍。

――『MHF』に続くオンライン専用タイトルとして、『イクシオン サーガ』が発表されました。今後、カプコンはオンライン専用タイトルを事業として本格的に展開していくとのことですが、まず、現在のオンラインゲーム市場と、ユーザーの意識や動向を、どのように分析していらっしゃいますか?

小野義徳(以下、小野) ここ5年くらいで、オンラインゲームにとっては、いいほうに変わっているなと感じています。いわゆるゲーマーやコアなユーザーに遊ばれてきたオンラインゲームですが、いい意味でも悪い意味でも、カジュアルな人が入って来てくれるようになりました。テレビゲームからの接続以外にも、PCを使ったりですとか、テレビゲームからつないだとしても、オンラインゲームと意識せずに楽しんでいるユーザーが多いですよね。こういった気持ち的なハードルと、ハード面の物理的なハードルが下がったことにより、分母がかなり大きくなりました。また、海外からの輸入タイトルやカジュアルなタイトルがあって、スマートフォンやブラウザゲームもあってと、気軽に、いろいろなところから始める人が増えてきました。まだまだこの流れは続いていくと思いますし、この流れを断ち切らないように、我々はコンテンツを提供していかなければならないと思っています。

――オンラインゲームに対してカジュアルに接するユーザーが増えてきたと。

小野 カジュアルな人と、本気の人が共存しているということですよね。家庭用ゲーム機と同じ流れになってきたと思います。もちろんオンラインゲームを敬遠している人もまだまだいるはずですが、7800円でパッケージソフトを買ってスタートする人と、0円から始めて、月額料金を払って7800円まで積み上げていく人にどのような違いがあるかというと、たとえばアクションゲームが好きなのか、RPGが好きなのかといった、好みの違いでしかないと考えています。カプコンとしては、もちろんどちらかに加担するという気はなく、パッケージを買う人も大切にしながら、オンラインゲームにも力を入れていくということです。海外と比べると、市場の大きさ自体はまだまだかもしれませんが、こういったさまざまなユーザー層ができあがってきたことは、非常にいいことだと思っています。

――『MHF』は大成功を収めていると言ってもいいかと思いますが、ユーザーにここまで受け入れられた要因はどこにあるとお考えでしょうか。

小野 ユーザーとの近さでしょうね。カプコンのほかのゲームにも言えることですが、ユーザーを決して突き放さず、もちろん上から見下ろすこともせず、同じ位置からメッセージを発信し続けてきたことが評価されているのだと思います。極力、ユーザーの近くに寄り添って、否定的な意見も罵倒も賞賛も素直に受け止めて、できるだけ素早くフィードバックすることを意識して運営してきました。ユーザーを待たせることは決してしてはいけませんし、やると決めたことは必ず実行して、難しいことは難しいと伝える。もしかしたら、納得はしていただいていないのかもしれませんが、『MHF』というテーマパークを維持するため、楽しんでいただくために、こういったキャッチボールをできたことは、非常によかったのではないかと思います。また、運営と開発が一体になっていることも要因としてはありますね。製造と販売が足並みを揃えていること、僕はこれを”制販一体”と呼んでいるのですが、全員で『MHF』というテーマパークを作っていこうという意識が、ユーザーの高評価につながっているのだと思います。

――とはいえ、不平不満をいうユーザーは絶えずいますよね。

小野 運営チームは、多少過激なユーザーからのメールなどで、かなりきびしいご意見や身の危険を感じるような文章もいただくようですが……これはしかたのないことだと思っています。もちろん、犯罪につながるようなことや本当に危険な目に遭っては困りますが、これはお互いに本気でそのゲームに向き合っているということの証明で、オンラインゲームではとくに大切なことですよね。これはオンラインゲームに限ったことではなく、カプコンのほかのゲームでも同じですし、僕がずっとやってきた対戦格闘ゲームでもそうです。なるべくユーザーの目線に立って、いろいろと言われながらもフィードバックを続けてきました。こういったユーザーの意見に対してのフィードバックは、カプコンの伝統としてずっと行ってきて、根付いている文化です。それを『MHF』のチームも実行しているということですね。

――カプコンの文化がオンラインゲームの特性にマッチしていた、ということが言えるかもしれませんね。

小野 マッチしていたと思います。ただ、サービス開始当初は、オンラインゲーム特有のスピード感に適応するのがたいへんでした。「修正に半年待ってくれ」というのは、ありえないことなんですよね。ユーザーにとっては、1分1秒を争っている状態かもしれませんから。そのスピード感に徐々に適応できて、ユーザーの反応が如実に返ってくるということがわかったときは、ものすごい喜びがありました。

――そのスピード感のある運営が実現できた要因はどこにあるのでしょうか。

小野 オンラインゲームは、時間を投資していただいて成立しているわけですから、それをムダにするわけにはいきません。パッケージのゲームもそういう側面はありますが、仮に失敗したとしても一度区切ることはできると思うんですね。もちろん言い訳はできませんが。ただ、オンラインゲームは一度スタートしたらずっと続いていくわけで、途中で立ち止まるわけにはいきませんからね。スタッフ全員がそういったマインドで運営にあたっていますし、ユーザーの意見や要望を迅速に取り入れ、反映、対応できる体制作りにも力を入れました。

――そのほか、オンラインゲームをサービスしていくうえで強く意識されていることは?

小野 とにかくユーザーの目をきちんと見て、何を言わんとしているのかを把握することです。メールであっても掲示板の書き込みであっても、たとえそれが暴言であったとしても、何かしら改善のタネとなるものはあるはずです。ひとりひとりの意見をすべて反映させていくことは非常に難しいのですが、最大公約数的なところを見つけて対応していくというのが、大切にしていることのひとつですね。それと、先ほども言いましたが、“制販一体”です。どの立場からも意見を言い合える空気を作ることが大切。いちばんダメなことは、役割分担はしても、お互いに干渉することをやめてしまうことです。そうすると何も動かなくなります。

――たとえば、どういった意見交換がなされているのでしょうか。

小野 “運営企画”と呼んでいる業務タスクがあるんですけど、開発チームが作り上げてきた、あるパーツをどうやったらもっとゲームにマッチさせられるかを、運営チームに考えてもらうことがあります。開発だけにゲーム作りを任せてしまうと、大きなイベントやモンスターなど、どうしても大掛かりなものになってしまいがちです。もちろん、これはこれで必要なのですが、それだけではオンラインゲームは成り立ちません。その大掛かりなものに至るまでの道筋を考えてもらったり、どうすればおもしろく誘導できるか、ということを検討してもらっています。カスタマーサポートのチームとのやり取りも活発ですね。いいものも悪いものも、1日数百件はメールが届きますが、とくに悪いメールに関しては、それが不具合であるのか改善要求なのか、もしくはモラル的な問題なのか、単なる好き嫌いなのかということをカスタマーサポートのチームが判断して、すぐに適切なチームに報告を上げてもらい、我々の力で対応できるかを検討するようにしています。

――運営の方がイベントやクエストを考えることがあるわけですね。

小野 ただし、開発には縛りなく新しいことを考えてもらいたいので、その部分の追求は完全に任せています。運営は、トレンドや、いま何が必要とされているのかということをリサーチして、それを開発に伝えて、できあがってきたものをチューニングしている、といった形です。伝える、協調する、フィードバックする、これをくり返して、運営だけ、開発だけで完結するのではなく、双方が納得したものだけ届けるようにしています。ケンカもありです(笑)。それでも失敗してしまうことがあるのが、ツラいところですけど。

――公式メンバーサイトなどでPVを公開した瞬間にも、すごい反応があったりしますよね。そういった反応を見て、方向転換されたことなどもありますか。

小野 ムチャクチャありますよ。本当はこの要素を実装しようと思っていたけど、直してから出そう、といった具合に(笑)。オンラインゲームというのは、我々にとってはすごく残酷な一面もあって、ユーザーからの通知簿が毎日毎日届くようなものなんです。PVの閲覧数がこうだったとか、イベントの参加人数は何人だったとか。すべて数値化された結果が、ディレクターやプランナーといった担当者は毎日手渡されるわけですから、もう何も言い訳できない。でも、そういった結果に対して、どうつぎの手を打つのかという判断が、『MHF』のチームでは素早く行われています。あと、スタッフたちによく言うのが、ユーザーと同じスタンスでプレイしようということです。提供したコンテンツの細かいところがわからない、という状況は恥ずかしいですからね。ユーザーの意見は、いろいろな要素が絡み合って出てくることがほとんどです。たとえば難しいからイヤだ、というのは要因としては単純で対処もしやすいのですが、いろいろな要因が絡み合っている場合は、同じスタンスでプレイしていないとわかりません。トータルで全体が見えているのがディレクターなど一部のスタッフたちだけというような状況では、運営はうまくいかないんです。ただ、これを徹底することで、ひとりひとりのユーザーに対して的確なメッセージが出すことかできます。すごくたいへんなことですけどね(笑)。

――『MHF』はコンテンツの量も多いですしね。

小野 どうすれば『MHF』のような運営ができるのか、と聞かれることも多いのですが、どれだけ我慢してやり続けられるか、ということだと思うんですよね。仕事量も多く、もちろんスキルも必要ですし、性に合う合わないも出てきてしまう職種ではありますけど、いかにユーザーの目線に立ち続けていられるか、ということが大切です。

――新規タイトルの『イクシオン サーガ』も動き出しました。ふたつのオンラインゲームを並行して提供していくのは、事業展開の面でも、対ユーザーの面でも難しい部分があるかと思います。

小野 対戦がメインで『MHF』とは毛色の違うゲームですから、社内的にはいい刺激を与え合える関係になると思っています。とは言え、僕が言うのもおこがましいですが、トップクラスのタイトルである『MHF』があるなかで、『イクシオン サーガ』をどう展開していくか、プレッシャーは感じていますね。対戦がメインというジャンル的にも、なじみが薄いですから、難しい部分が多いです。協力するゲームのほうが作るのはゴールがみえやすいですし、日本のユーザーにも受け入れられやすいですからね。ただ、このタイトルの打ち出しかたを探っていくなかで、『MHF』では知りえなかったノウハウや、ユーザーの動向を知ることができるのでは、という期待感もあります。和を重んじる日本人好みのゲームと、それとは対極に位置する対戦メインのゲーム、このふたつのゲームのノウハウを蓄積することは、オンラインゲームだけでなく、この先すべてのゲームを作るうえで大切なことではないかと思っています。また、韓国、台湾、中国など、オンラインゲームが盛んな地域に打って出ていくためにも、必要な勉強ですよね。

――海外での事業展開も視野に入っているわけですね。もちろん『イクシオン サーガ』に限らず。

小野 その前段階として、まずは僕たち日本人が、競い合うという要素をどうすれば日本人に受け入れてもらえるか、探っていかなければなりません。そのためには、ゲーム性にのみ焦点を当て、1年くらいテストをくり返してユーザーといっしょに作っていく、という手法もありなのではないかと考えました。もちろん、そのあいだにグラフィックなどほかの部分もよくなっていきますけど、1年掛けて作り上げた“競い合う”という要素を融合したところで、初めてその答えの第一歩が見えるのではないかと思います。僕らは、『MHF』だけで満足してオンラインゲーム事業を終えるつもりはありませんし、『イクシオン サーガ』を出したからといって『MHF』を軽視するつもりもまったくありません。これから5年、10年先を見据えるなかで、オンラインゲームというジャンルのために、打てる手を打っていきます。

――その最初の一手が、日本にはなじみの薄い、対戦メインのゲームをユーザーといっしょに1年かけて作り上げることなんですね。

小野 もしかしたら、もっと長くテストをやることになるかもしれませんが(笑)。今回は、いきなり幕の内弁当ができた状態で見せるのではなく、弁当箱の大きさだけ見せて、どういったものを詰め込むべきでしょうか、というやりかたです。1年といっても、テストとフィードバックをくり返していたら、あっという間に過ぎてしまうような気がします。また、本当に満足してもらえるものが提供できるか、シビアに判断しなければいけませんから、途中でダメだとわかったら、最初からやり直すことも考えないといけないでしょうね。その一方で、甘えた考えかもしれませんが、いっしょに作り上げていくことで、カプコンならやってくれる、いまはダメでもきっと直してくれるだろう、という信頼関係がある程度築けるのではと期待しています。『MHF』でも、期待外れなことをやるとピタッとプレイをやめてしまう、きびしいユーザーが大勢いらっしゃいます。ただ、休止していても状況はチェックしているようで、いいアップデートがあると帰って来ていただけるんですね。こういう付き合いかたをしてほしい、とは僕たちからは言えませんが、つねにゲーム内で何が起こっているのか、気になってしまうような信頼関係は、築かなければならないと思っています。

――『イクシオン サーガ』はPCでのサービス提供となりますが、ハード選びの基準はどこにあるのでしょうか。

小野 カプコンも会社ですので、いろいろな戦略があるわけですが(笑)、『イクシオン サーガ』の場合は、ちゃんとリサーチをしていきたい、という思いからですね。オンラインゲームに慣れ親しんでいるPCユーザーのほうが、気軽に遊んで気軽に感想を返していただけるのではないかと。まさに“いっしょに作り上げていく”ということができるハードなんですね。もちろん、PCに固執しているわけではなく、ユーザーの要望に応えていくことも大切だと思っていますし、家庭用ゲーム機でも、ゲーム内容に対して最適な環境であったり、オンラインゲームならではの実験的なこともできるようなら、そこに投下していくことも十分ありえます。

――カプコンには、大勢のファンを持つビッグタイトルが数多くあります。そういったタイトルをオンラインゲームにするというような構想はあるのでしょうか。

小野 あるかないかで言えば、ムチャクチャありますよ(笑)。韓国では、『魔界村』をベースにしたオンラインゲームを展開していたりしますからね。もっと推進していきたいと思っています。

――実績のあるタイトルをオンラインゲームにするのは、ユーザーの思い入れなどもあり、かなり難度の高い作業になりますよね。

小野 もとのゲームの魅力をどう活かすか、逆にどこを削ぎ落とさなければならないのか、非常に難しいですね。とくに、その削ぎ落とさられた部分が好きだったユーザーは、裏切られたという気持ちになってしまうと思います。ですから、こういう新しい魅力があるんですよ、といったことは、わかりやすく伝えなければなりません。そういったファンの心情をケアする部分まで描けていないと、サービスとしては不完全だと思います。

――オンラインゲームをビジネスとして展開していく場合、課金のシステムは切り離せないことだと思います。現状は、月額課金、もしくはプレイは無料でアイテム課金という方式が主流ですが、このほか理想として思い描いている構想などは、あるのでしょうか。

小野 正直言いますと、課金の形態は『MHF』が、ほぼ理想だと考えています。散財しないと進めないゲームなんでしょ、といったことも言われますが、基本の月額料金だけ支払えば、基本的にできないことは、ほぼないわけですよね。たとえば追加料金を払わないとゲームが進まない、というようなことは、『MHF』ではしていません。これは声を大にして言いたいです。僕たちが提供しているものは、あくまでのサポート用のアイテムやオプションのサービスであって、無理に購入する必要はないものです。基本の月額料金にしても、最初に一括で払うか、分割払いをするかだけの違いですよね。しかも『MHF』はアップデートごとに新作が出ているようなものですから。とは言え、100点満点だとは思っていません。いま話したような課金に対する考えかたをプロモーションしきれていない面もありますし、お金を使っただけのメリットや快適さと、ゲームの楽しさという部分のバランスをいかに取っていくかは、つねに100点を目指して取り組まなければなりません。『MHF』のやりかたや思想をベースに、どんどん精度を上げていくつもりです。

――いまから5年後のカプコンのオンライン事業について、どういったイメージをお持ちでしょうか。

小野 まず『イクシオン サーガ』が順調にサービスを継続していて、またインタビュー記事の取材を受けられたらいいですね(笑)。あと、先ほども言いましたが、カプコンのいくつかのタイトルのオンラインゲーム化を、もう少し最近のもので実現したいです。社内的な目標としては、カプコンにも完全にオンラインゲームが根付いたね、と思ってもらうこと。もちろん、ユーザーの方にもしっかり認識してもらえるようになりたいです。まだまだ道のりは長いですが、これを実現するために、若い方の力が欲しいですね。求人を見て、ぜひ応募してください(笑)。

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