キャラへの愛が深まる『シュタインズ・ゲート 比翼恋理のだーりん』インプレッション

ゲーム Xbox 360 インプレッション
アドベンチャーの傑作『シュタインズ・ゲート』の世界観そのままに、主人公とヒロインたちの甘い恋愛エピソードが描かれる。キャラクターはみな個性派ぞろいで、一般的なギャルゲーとは一味違ったストーリーがくり広げられる『シュタインズ・ゲート 比翼恋理のだーりん』インプレッションをお届けする。

●ヒロインたちとのあったかもしれない物語がここに始まる

 『シュタインズ・ゲート 比翼恋理のだーりん』は、科学アドベンチャーシリーズ『シュタインズ・ゲート』のファンディスク的なポジションの作品である。登場人物は『シュタインズ・ゲート』と同じだが、シリアスな展開にはならず、ヒロインとの恋愛をテーマとしてストーリーが進んでいく。過去に送ることのできるメール(Dメール)を使い、各ヒロインの個別ルートを設定。主人公とヒロインたちの、楽しいやりとりを楽しむことができる。その味わい深いストーリーの魅力を、ファミ通Xbox 360を中心にレビューや攻略記事を担当してきた古株ライター、石井ぜんじがインプレッションする。

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▲『シュタインズ・ゲート』に登場した濃いキャラクターたちが織り成す、新たなストーリー。ファンが待ち望んだ世界線がここにある。

●秋葉原に集った仲間たちに、もう一度会える喜び

 シリアスで重厚なシナリオの評価が高い『シュタインズ・ゲート』。波乱万丈で息もつかせぬ展開が待っているが、ヒロインたちとの結末は必ずしも幸福なものではなかった。そんな不遇なヒロインたちと、思う存分恋愛ストーリーを楽しむことができるのが本作『比翼恋理のだーりん』である。
 『シュタインズ・ゲート』の魅力はシリアスな展開だけでない。ネットスラングを多用した会話の軽快なテンポも、おもしろさの重要な要素だ。『シュタインズ・ゲート』のファンの中にはシリアスな6章以降の展開よりも、序盤の大学のサークル活動を思わせる、軽いノリが好きだという人もいるのでないだろうか。
 本作では、主人公である岡部倫太郎が所属するラボの仲間たち(ラボメン)の日常を、コミカルに描き出している。本作で展開されるのは、悲劇的な要素はないものの、紛れもなく『シュタインズ・ゲート』の世界そのものだ。
 『シュタインズ・ゲート』の熱烈なファンであればあるほど、何よりも心動かされるのは、ラボメンに再会できた、という喜びだろう。物語の方向性は違っても、ラボメンのキャラクターはそのままそこに存在している。
 キャラクターの中には、『シュタインズ・ゲート』の中では明らかにされなかった好みや性癖、能力を見せてくれるヒロインもいる。新たな設定が加わり、よりキャラクター性に深みを増しているといえるだろう。キャラクターを改変すると、それまでとは別人になってしまい、感情移入しにくくなってしまう、ということもありがち。しかし本作ではその懸念は当たらない。この部分は、シナリオライターがラボメンのキャラクター、それを取り巻く世界観を深く理解している証拠だろう。
 まずはラボメンたちに出会えた喜びを、じっくりと味わってほしい。

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▲世界観が少し明るいイメージになっても、ラボメンたちの内面は変わらない。思う存分、躍動する彼女、彼らの姿を楽しもう。

●退屈なギャルゲーと、魅力的な恋愛ドラマとの違いとは?

 本作はヒロインごとに、主人公との恋愛ドラマを基本軸としてストーリーが展開していく。前作の『シュタインズ・ゲート』には緊迫したドラマがあったため、恋愛メインになってしまうとその世界観を壊してしまう、と考えた人もいるだろう。また主人公とヒロインがいちゃつくさまを、延々と見せられてもつまらない、と予想する人がいるかもしれない。

 確かに世間一般でいうところの、いわゆるギャルゲーにはそのような作品も存在する。あまり主人公たちがバカップルだと、プレイするほうが醒めてしまう、ということもよくある話だ。だが、ギャルゲーをひとくくりに“そういうもの”として考えてしまうのはもったいない。恋愛を主題にしたシナリオでも、お互いの揺れ動く感情をていねいに描き、ちょっとした事件や制限を加えればストーリーに起伏が生まれる。ストーリーに起伏が生まれれば、感情のもつれによってドラマが成立する。そしてドラマが成立すれば、シナリオとして飛躍的におもしろさがアップするのだ。
 本作の優れているところは、シナリオライターがその点を熟知しているところだ。確かに本作では、『シュタインズ・ゲート』で見られたような、絶望的な状況は存在しない。しかし『シュタインズ・ゲート』の世界観やキャラクターがあれば、いくらでも事件は起こりうる。ちょっとした困難、解決すべき問題、過去のトラウマ、奇妙な謎などが日常にスパイスをきかせ、それぞれのシナリオに退屈しないドラマを産み出すのである。
 あらすじだけ取り上げてみれば、本作のシナリオはそれほど独創的なものではないかもしれない。だが本作が優れているのは、キャラクターの心情を細かに描いていること、シナリオの起伏をうまく作っているところにある。このことによって、読み手の緊張感と没入感は高まっていく。その結果、プレイヤーはいつのまにかのめりこみ、先を急ぐようにして読み進めるはずだ。熟練したシナリオライターの本領が、ここに発揮されているといえるだろう。

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▲優れたギャルゲーは、ピンク色の言動をただ垂れ流すものではない。ちょっとした事件が起こり、その解決に向けて感情が動いていくものなのだ。

●ヒロインごとに様相が変わる、個別シナリオの魅力

 本作では途中でシナリオが分岐し、個別ヒロインへのルートへと進むことになる。各ヒロインのルートはそれぞれ独立しており、異なったストーリーを楽しむことができるようになっている。
 個別のシナリオは、ヒロインの設定や性格を活かしたもので、そのキャラクター性が存分に発揮される。科学者、発明家としての紅莉栖、メイド喫茶の店員としてのフェイリス、コミュニケーションに問題を抱える萌郁など、それぞれの特徴から生み出されたシナリオは、とても自然で違和感を覚えさせない。各ヒロインのファンの期待に違わない出来になっているといえるだろう。
 特筆すべきは、個別シナリオの中のクオリティーが、全体的に高いレベルで保たれているというところ。複数の個別シナリオのあるギャルゲーでは、いわゆる“ハズレ”のシナリオが出てくるものだ。その点では、本作のシナリオにハズレはなく、これは稀有なことといえる。 
 うがった見方で言えば、本作のシナリオは無難に作られているとも言える。筆者のようにインパクト重視の読み手にとっては、どこか物足りなさを感じる部分もある。前作『シュタインズ・ゲート』のように物語をシリアスな方向に極端に振ることができないので、強いインパクトを残すのは難しいのだ。
 恋愛モノであまり突き抜けてしまうと、ちょっと変わった嗜好のストーリーになりかねない。同じ科学アドベンチャーシリーズのファンディスクにあたる『カオスヘッド らぶChu☆Chu!』は、どちらかといえば“突き抜けた”作品であった。それに比べれば、本作のシナリオは、当たりさわりのないところに着地している。だがそれは、本作の欠点といえるほどのものではない。むしろ多くの人に受け入れられる美点であろう。プレイヤーの期待通りのシナリオが展開されると思ってよい。 
 そんな本作の中で、筆者の心に残ったのは漆原るかのルートだ。いわゆる“男の娘”のヒロインなので、どうしても雰囲気は変わってくる。だがこのルートのおもしろいところはそれだけではない。ファンタジーな展開でありながら、科学アドベンチャーシリーズならではの仕掛けも利いているのがいい。また、岡部が設定した清新斬魔流という剣法に、象徴的な意味を込めているところも見どころ。“男の娘”が題材ゆえ、恋愛ものとしての感情移入は難しいかもしれない。しかしシナリオとして突き抜けたところがあり、とても興味深いものになっていると感じた。

 筆者がお気に入りなのは、前述したるかと、萌郁のシナリオである。粒ぞろいのシナリオの中で、みなさんはどのヒロインのお話が気に入るだろうか? もしかすると、前作でのキャラクター評価が変わることだってあるかもしれない。より深く、長く『シュタインズ・ゲート』の世界を楽しむために、ぜひ本作『シュタインズ・ゲート 比翼恋理のだーりん』をプレイしてみてほしいと思う。

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▲萌郁のシナリオは、そのキャラクターが本編以上に深く掘り下げられている。ライターの萌郁に対する愛が感じられる、とても秀逸な出来ばえとなっている。

【筆者紹介】 石井ぜんじ
ファミ通Xbox 360誌でクロスレビュー、攻略を担当する古株ライター。ゲームの文章を書き始めてから20数年、飽きずに続けております。過去に『NINJA GAIDEN(ニンジャガイデン)』シリーズ攻略本、『シュタインズ・ゲート公式資料集』『科学アドベンチャーシリーズマニアックス』などに参加。これらからも、ファンが本当に喜んでくれる本作りを目指していきたいですね。


[石井ぜんじのレビュー記事はこちら]
※不思議なオリジナリティー溢れる『El Shaddai(エルシャダイ)』インプレッション

シュタインズ・ゲート 比翼恋理のだーりん
メーカー 5pb.
対応機種 Xbox 360
発売日 2011年06月16日
価格 6,090円[税込]
ジャンル アドベンチャー / 科学・恋愛
備考
(C)2011 5pb. Inc./Nitroplus

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