『ヱヴァンゲリヲン新劇場版-サウンドインパクト-』開発者インタビュー全文掲載

ゲーム PSP
週刊ファミ通6月30日号で掲載した広野啓氏(バンダイナムコゲームス)、須田剛一氏(グラスホッパー・マニファクチュア)、飯田和敏氏(グラスホッパー・マニファクチュア)へのインタビューの完全版を、ファミ通.comでお届けしていく。

●広野啓氏×須田剛一氏×飯田和敏氏へのインタビューを全文掲載

 『ヱヴァ』×バンダイナムコゲームス×グラスホッパー・マニファクチュアという組み合わせで多くのゲームファン、アニメファン、『ヱヴァ』ファンを驚愕させたPSP用ソフト『ヱヴァンゲリヲン新劇場版-サウンドインパクト-』。今回は、週刊ファミ通6月30日号で掲載した広野啓氏(バンダイナムコゲームス)、須田剛一氏(グラスホッパー・マニファクチュア)、飯田和敏氏(グラスホッパー・マニファクチュア)へのインタビューの完全版を、ファミ通.comでお届けしていく。

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■バンダイナムコゲームス
広野啓氏 HIRONO K
『ガンダム』や『マクロス』など、ロボットアニメ作品を題材としたゲームを多数プロデュースしている。

■グラスホッパー・マニファクチュア
須田剛一氏 SUDA 51
『ノーモア★ヒーローズ』や『killer7』など、エクストリームなゲームで業界を牽引するゲームデザイナー。

■グラスホッパー・マニファクチュア
飯田和敏氏 IIDA KAZUTOSHI
『アクアノートの休日』や『巨人のドシン』など、斬新な視点を持った作品を多数制作しているゲームデザイナー。

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――今回のタイトルを観た人は「なぜ?」と思うところがたくさんあると思うのですが……。
飯田和敏氏(以下、飯田) まずはそこをひとつひとつ紐解いていきましょうか(笑)。

――そうですね(笑)。まずは、バンダイナムコゲームスとグラスホッパー・マニファクチュアが『ヱヴァ』のゲームを制作することになった経緯をお聞かせください。
広野啓氏(以下、広野) もともと、弊社とグラスホッパーさんは関係があったのですが、2年ほど前に、今回のタイトルとは別件でおうかがいした際に「『ヱヴァ』のゲームをグラスホッパーさんに企画してもらいたい」という話をさせていただいたんです。そのときは須田さんはいらっしゃらなくて、本作の制作のプロデューサーを担当されている田村さんとお話をさせていただいたのですが、すぐに「やらせてほしい」というお返事をいただけました。
須田剛一氏(以下、須田) もう、すぐに食いつきました。たしか、話があった当日に報告を受けて、「企画書を作ろう」と。もともとバンダイナムコゲームスさんとは、『サムライチャンプルー』や『BLOOD+』でごいっしょさせていただいていました。この2作品が終わった後に、後藤(能孝)さんに『ヱヴァ』をやりたいとお願いしていたんですよ。我々もビッグIPを扱いたい、という想いがあったので(笑)。
広野 『新世紀エヴァンゲリオン』や『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』を題材にしたこれまでのゲームは、シンジ君の立場になるとか、初号機に乗って戦うといった、自分が作品世界の誰かに成り代わるゲームが多かった。でも、それとは違う路線、視点もあるのではないか、と。たとえば、パチンコのホールで『エヴァンゲリオン』を知ったお客さんもいっぱいいたり、映像しか観ていないお客さんもいっぱいいて、ゲームとのリンクがうまく図れていないんじゃないかという思いがすごくあったんです。今回、『ヱヴァ』を構成している映像と音楽を、うまくゲームに落とし込めないかという話をしている中で、「じゃあリズムアクションはどうか」という形になっていったんです。
須田 やはり、『ヱヴァ』って音が印象的じゃないですか。サントラの印象がすごく強い。そこで、リズムアクションという提案をさせていただきました。我々は『ヱヴァ』の物語ではなくて、“A.T.フィールド”というものに注目したんです。使徒だけではなく、各キャラクターの精神世界でのA.T.フィールドも含め、“すべてのA.T.フィールドを突破せよ”というのがゲームのコンセプトになりました。このA.T.フィールドを突破するという行為を、すべて音のゲームに置き換えたらおもしろく仕上げられるのでは、と。
広野 ウチとしても初めての取り組みでしたね。社内でも「リズムアクションと『ヱヴァ』ってリンクするの?」、「書類ではわからん」と言われるわけです。だから、グラスホッパーさんにまず試作版を1個作っていただきました。

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――ディレクターとして飯田さんが参加されたのは、いつごろになるのでしょう?
飯田 おふたりのあいだでリズムアクションがいいのではないか、ということでまとまりつつあるころに、やはり別件で須田さんとお話をしていて、「そういえば飯田さん、『ROCKBAND』シリーズとか激ハマりしてるよね?」と言われたんですよ。
須田 すでにウチに入社することが決まっていたころですね。僕自身、『ヱヴァ』を作るにあたってディレクターを誰にしようか、いろいろ考えていたころです。ウチの若手にやらせるという方法もありましたが、飯田和敏が久々にコンシューマーのパッケージでディレクションを行うにあたって、『ヱヴァンゲリヲン』という題材なら何かすごい化学反応が起こるのではないか、という期待があったんです。それで「『ヱヴァ』どうです? やりませんか?」と伝えたら、「やります」と。ふたつ返事でしたね。
飯田 いったん飲み込んで、よく考えて……。
須田 考えましたっけ?(笑)
飯田 即答はしたんですけど(笑)、ものすごく考えました。
須田 3秒ぐらいのあいだでね(笑)。
飯田 僕なりに、これまでのキャリアというものがあって、僕なりの人生の目標点もあるのですが、そこにはまったくなかったものだったんです。ただ、作品は大好きで、最初の放送からオンタイムで観ていましたし、ずっと追っていたし、ちょうど『破』を観てきた後だったので、挑戦したいという想いはあったんですよね。僕は、異端的ゲームクリエーターと言われていて、ちょうど『ディシプリン*帝国の誕生』を作った後だったので、異端ぶりも極北をいっていたころで。でも、この作品がメディア文化庁で賞をいただいて少し調子に乗っていた部分もあり、“これからも異端を磨こう”と思っていたところだったんです(笑)。
全員 (爆笑)
須田 ちょっと調子こいたんだ(笑)。
飯田 調子こいたんです(笑)。ホドロフスキー(※1)までまっしぐらだ、というつもりでしたが、そこで『ヱヴァンゲリヲン』というビッグIPが舞い込んできたんです。『ヱヴァンゲリヲン』そのものはすごく魅力があるのですが、僕がやることで、それを破壊してしまうんじゃないか、と。某オンライン通販サイトで星ひとつをつけられてしまうんじゃないか、と(笑)。いろいろ逡巡はありましたが、でもやはり「やらせてください!」と。それこそシンジになったつもりですよ。エヴァに乗るのか乗らないのか逡巡した結果、「乗らせてください!」と。
広野 この間、3秒ですから(笑)。
飯田 (笑)。今回のプロジェクトの合言葉は、“すべてのA.T.フィールドを突破せよ”という言葉でした。これはゲームのことだけに留まらないんです。僕もカルトゲームクリエイターとしての限界を感じています。突き詰めていけば、どこかでブレイクスルーがあるのかもしれないけれど、ずっとそこに埋没していてはおもしろくないな、という想いも一方ではあって。
須田 あとはやはり、飯田和敏を、日本もそうですが、とくに海外に向けて、メジャーのゲームデザイナーとして発信しようという想いがありました。
飯田 知る人ぞ知る、ゲームクリエーター'sクリエーターみたいな存在である自覚は僕にもあるので(笑)。ただ、これからはそうではなく、じつはメジャー思考だというところを押し出していこうと。そのように試行錯誤している途中に、このような案件が舞い込んできて、瞬間的に「やろう」と思いました。自分がこの作品のファンであることと、音ゲーのファンであることをミックスして、自分の作家としてのエゴというよりは両者のファンとして、自分が欲しいゲーム、見たいゲーム、遊びたいゲームを作ろうと。
広野 最初に須田さんに言われたんですよね。「今回のディレクターは飯田さんを呼んできました!」と。ただ、僕としては「……どの飯田さんですか?」って(笑)。
飯田 当然の反応ですよね。およそバンダイナムコゲームスさんとは接点がなかったですから。
広野 ぜんぜんリンクしなかったです。
須田 いまだから言えますけど、バンダイナムコゲームスさんは、相当不安だったと思います。
広野 (笑)。
須田 でも、バンダイナムコゲームスさんに提出した企画書が、本当に丁寧に作られていて。手前味噌ですが、ゲームデザイナーとして飯田は天才なんですよ。この題材をどう遊びに組み込むのか、ということを徹底的に考え抜いて、ひとつの答えを出すというのは、なかなかできることではないですし。その結果がスタンダードな遊びかといえば、新しい遊び、新しい何かを提供する部分まで考えて作ってあって。僕としては、見ていてうれしかったですね。プレイステーション時代にカリスマと呼ばれた飯田和敏が帰ってきた、と。
飯田 一度落ちてたけどね。
須田 いやいやいや(笑)。そういうこと言っちゃダメです。落ちてないです。
飯田 (笑)。独自の道を歩んでいたんです。
須田 ホントに、ある意味、NEW飯田和敏といえるんじゃないか、と。
広野 企画書の1枚、1枚が、「この視点おもしろい!」というものばかりだったんですよね。オーソドックスなものから、飯田臭のするものまで(笑)。ただ、それが飛び抜けているわけではなく、やんわりさせてくれているんです。本当の飯田臭を出してしまうと、恐らくとんでもない方向へと行ってしまうので、そこをうまく抑えてくれていました。
飯田 庵野さんの初期のころの活動と、僕の気分というのがけっこう似ているところがあるんじゃないか、って。最初は、ものすごい破壊衝動というのを持っていたと思うのだけれど、庵野さんがいま『序』や『破』でトライしようとしていることは、すごくわかりやすい明快なメッセージとして感じられるんです。
須田 いわゆる、再構成ですよね。
飯田 その作品を預からせてもらう者として、(『ヱヴァ』制作スタジオの)カラーさんたちがいま取り組んでいるであろうことに僕らも足並を合わせて、エッジはあるんだけれど、“わかりやすく、明快でスカっとする、だけど……”みたいな部分は守っていこうと。とにかくバランスを推し量りながら試作版を作っていきました。
須田 飯田さんに僕から企画をリクエストしても「ダメです。わかりづらいです」と逆に言われましたから(笑)。
飯田 マニアックすぎるってね。もっとメジャー感を出さないとダメですって(笑)。
須田 逆にそういう部分でも、ディレクターとして、良し悪しのジャッジをしてくれましたし、すごくいい仕事をしてくれたと思いますね。

【注釈】
※1:アレハンドロ・ホドロフスキー。カルトムービーの教祖と呼ばれる映画監督。代表作は『エル・トポ』、『ホーリー・マウンテン』、『サンタ・サングレ』など。

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――本作のゲームの中で異質なものと、シンプルなものはどれになるんでしょう?
広野 “Call of Fourteen”は、異質ですね。イチバン、カジュアルなわかりやすい音ゲーは、“Teardrop”です。
飯田 "Call of Fourteen"はふつうの音ゲーじゃないんです。どんな音ゲーかというと、劇中のセリフをプレイヤーが演奏するというもの。本作のコンセプトとして、“『ヱヴァンゲリヲン』を演奏する”というものがありまして、この“Call of Fourteen”の場合はキャラクターの心情を言葉にして演奏する形になります。“言葉で演奏する”というのは、最近ならHip-Hopや、ラップがそうだと思うんだけれど、もうちょっと僕はルーツを辿っていって、Hip-Hopの前には、ルー・リード(※2)たちがやっていたポエトリーディング(※3)があって、その前にアレン・ギンズバーグや、ジャック・ケルアックのようなビート(※4)と呼ばれた詩人たちがいて。彼らは詩を書くだけではなくて、発話して読むこと、リズムを持って自分の詩を読むことにハマっていたんです。それが一大ムーヴメントになった。そのムーヴメントと『ヱヴァ』をつなげたい、という考えがありました。アニメファンが自分のリズムでキャラクターのセリフを演奏する。しかも、いろいろな名場面の聴きたいセリフを自分で演奏するというものにしようと思ったんです。
須田 やはり『ヱヴァ』の劇中のひと言ひと言に、力がありますから。その言葉が音の素材になっているわけです。ある意味、音ゲーのひとつとして解釈できると思いますね。
広野 セリフをひとつの音符にするという視点は我々にはなかったです。
須田 イチバン最初の試作で作ったのが、“Call of Fourteen”だったんですよ。
広野 そのときのセリフは、「逃げちゃダメだ」でしたね。
須田 この試作をバンダイナムコゲームスさんの人たちに見ていただいて、「あ、こういうことですか」とわかっていただけて、さらに「これはおもしろい」と思っていただけたんです。そこから企画が加速していきました。
広野 その後、もう一段階踏んでますけどね。試作を2回やってるんです(笑)。
須田 僕ら自身もバンダイナムコゲームスさんというA.T.フィールドを突破して、ゲームを作っていたわけです(笑)。
広野 僕は社内の審査を突破して(笑)。

【注釈】
※2:ロックバンド、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのボーカル・ギタリストとして活動後、ソロでの活動に転身。

※3:詩人が自作の詩を朗読するアート形態。

※4:ビート・ジェネレーション。ビートニクとも。

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――続いて、“Teardrop”ですが、まさか『破』の印象的なシーンがリズムアクションになるとは驚きでした。電線を飛び越えるタイミングが、いわゆる音ゲーでボタンを押すタイミングになっているんですね。
飯田 ゲームといえば『マリオ』ということで、横スクロールで障害物をジャンプして避ける。それがリズムアクションになっているところが出発点です。『エヴァンゲリオン』自体、さまざまなカルチャーの影響下にありますよね。自分たちが影響を受けた過去のさまざまなカルチャーに対するリスペクトで『エヴァ』は成り立っているんじゃないかと思うんです。
須田 あとは、アンサーですよね。クリエイターとしてのアンサー。
飯田 うん。それを僕らも受け止めているので、僕らなりにゲームにおけるリスペクトという意味で、まずは『マリオ』のスタイルを借りました。それからジャンプのタイミングを設定するにあたって、ケミカル・ブラザーズ(※5)の『スター・ギター』という楽曲のPVのスタイルを借りています。これは音楽に同期して、さまざまな建物が風景として流れていくというものなんですよ。ベースの音がしたらこの建物が出てくる、みたいな法則があって、観ているとだんだんそれがわかってきて楽しくなるんです。その楽しさを今回のゲームにはめ込もうと。
広野 最初は横スクロールでジャンプしていくだけだったんです。途中のコースが変わるシーンやインターミッションのシーンは後から追加されていって、より『破』のフィルムに近くなっていきましたね。
飯田 その辺はアドリブでした。グラフィックを担当した者が、「どうしてもあそこを再現したい」と言うんですよ。ただ、この件に関して言えば、最初に広野さんが「あのシーン入れないんですか?」って仰っていたのが発端です。
須田 リクエストしてたんだ(笑)。
飯田 「やはり入れたいよね」と言うので、動画を差し込むような魅せかたを考えたんですけれども、ちゃんとリズムアクションの一部として融合できたのは、スタッフの意地でしたね。『ヱヴァ』への愛情と言えるかもしれません。この作品が好きなスタッフを集めたので。僕としては、『破』は『2001年宇宙の旅』に匹敵するアシッドフィルムだと思っているんです。このアタマをぐっしゃぐしゃにされる感じというのを、みんなそれぞれの体験として見てきているんですよね。
須田 世代ごとに、またいろいろな感じかたがありますしね。
広野 相当やりあいましたけどね。「これは『ヱヴァンゲリヲン』としてありえない」とか(笑)。
飯田 いろんな立場のいろんな思いがありますからね。否定するのではなく、そういう捉えかたもあるのか、と可能性を見出していく作業でした。なんだか、優等生的な発言ですみません(笑)。
須田 意見をぶつけ合うというのは大事ですし。そういった意見のぶつかり合いがあるプロジェクトは、だいたいいい結果を生み出しますね。
飯田 楽しかったですよ。とくに僕と彼(岡部氏)なんかは、すごくやり合いました。彼は若い世代で、まだ25歳? 生まれて初めて観たアニメが『エヴァンゲリオン』だったと。
須田 え? そうなの? マジで?
岡部 『ドラえもん』とかは観ていましたけれど……。
飯田 自分の体験として観たものが、『エヴァ』が最初ということだよね。それを聞いて、お前そこまで好きなら、自分でアンサーを出せるのか? 乗り越えられるのか? と本腰でぶつかり合う覚悟を決めました(笑)。
須田 飯田さんが「俺に食いついてきてみろ!」と言ったら、「40のおっさんに何がわかるんだ」ってね。
飯田 そういうことです。
広野 世代間の戦いがあったわけですね、ここに(笑)。
飯田 30代もいるし、中には『ハルヒ』好きもいたり、いろんなアニメファンがいる開発チームでしたね。彼は本当にありえない抜擢なんですよ。ゲーム業界に入って、まだ1本もゲームを作ったことがないんです。
須田 いまでこそウチのスタッフですけれど、もともとはインターンでしたからね。
飯田 僕の教え子です。
広野 そう。だから正直、僕は心配でしたもん。PSPのゲーム作れるのかなって(笑)。でも、飯田さんが「やれる」と言うので、そこは飯田さんを信じて。
飯田 そうね(笑)。彼はデジタルハリウッドの学生で、2年ぐらい付き合いがあったんですけれど、いろいろと僕の活動の場に食いついてきていたので、「コイツはガッツがあるな」と見込んでいたんです。なんで今回、若い世代とやりたかったかというと、『エヴァンゲリオン』に対する認識を知りたかったんですよ。僕らがゲームを届けるユーザーは10代がメインなんですよね。40男が40女を口説くのは簡単だけれども、10代を口説くのは広野さんには適わないわけですよ。
須田 広野さんは相当ヤバいッスよ。
飯田 『AKB1/48 アイドルと恋したら…』のプロデューサーですからね(笑)。
広野 話の脱線具合がひどい(笑)。
飯田 まぁまぁ(笑)。その10代に届けるためにも、積極的にいろいろな立場の人たちを起用しました。
――技術やキャリアは関係なく、『ヱヴァ』が好きないろいろな世代の人を集めて制作されていると。
飯田 とはいえ、僕も業界長いので、この人を置いておけば安心だろう、という目配せはしています。跳ねる部分は跳ねて。そこがいい感じでまとまりましたね。それはやはり『ヱヴァ』という巨大な世界、共通の体験があるからまとまったのであって、最終的には『Q』が観たいっていうことかな、と(笑)。
広野 その想いがいっぱい詰まっているわけですね(笑)。
飯田 どんなゲームを作るべきかをスタッフと話していたときに、こんな話が出まして。『Q』の公開時に1週間ぐらい前から劇場に並んで、このゲームで遊ぶわけです。劇場前で並んでいる1週間をこのゲームで乗り切って、『ヱヴァ』への想いを最高潮に高めた状態で、歴史的な瞬間を目撃しよう、というようなデザインにしたいねって。
須田 このゲームをプレイする人には、『ヱヴァ』のファンやゲームファンなど、いろいろいると思うんです。そんな中、僕らがやりたかったのは、とにかく『ヱヴァ』ファンの人たちがバイブルとして買ってくれるゲームを作りたい、と。『ヱヴァ』ファンの皆さんの中には、ゲームが難しくて遊べないという人たちも、たくさんいると思うんです。でも、このゲームだったらそんな人たちでもクリアーできるし、『ヱヴァ』の世界をゲームの中で体験できる、そんなものにしたくて。とにかく“本物”にしたかったんです。日本の最高峰のクリエイターが集まって作っている『ヱヴァンゲリヲン』というアニメーションに対して、我々も最高のクリエイターを用意する。それは『ヱヴァ』に対する僕なりのリスペクトもありますし、そこまで『ヱヴァンゲリヲン』というものに向き合うことが大事だと思ったんです。
飯田 それを僕らはミーティングでは、“easy access, more deep”という言いかたをしていました。誰でも簡単に遊ぶことができる。ルールブックを見なくても遊べる。だけど、体験としてより深く。僕らはゲームを作っていて、何度も何度もDVDを観直しているんです。それは資料のために観直すというよりは、ゲームの中で文脈が置き換わるので、もう1回映画を観たくなるんです。だから、『ヱヴァ』をしゃぶり尽くすということがゲームを作りながらもできたかな、と。
広野 試作版をやらせていただいていても、僕らもゲームをやっているとやっぱりまた原作に戻りたくなる気持ちもあるし、この作品のこのカットを切り取ってゲームに落とし込んでいるんだ、ということがわかるとより楽しくなるんですよね。そういう意味で、無限のサイクルができるんじゃないかな、という気がしています。ゲームをやったら映画を観たくなるし、映画を観たらゲームをやりたくなるし。『ヱヴァ』に浸り続けるということができるんじゃないかな、と。僕はイチバン最初の企画の打ち合わせのときに、“easy access”という言葉にすごく惹かれました。ターゲット層の話になるのですが、『破』をご覧になられている方たちを実際に劇場に行って見ていると、『ヱヴァ』自体は16年以上続いている作品なので、世代は2世代ぐらい変わっているんですよ。そうなるとファンの層って上がるじゃないですか。グッと年齢層が上がると思われるんです。ですけれど、劇場に来ているのは、10代後半の高校生とか、大学生なんですね。もちろん上の層の方も多数いらっしゃっていますが。ただ、これを目の当たりにしたときに、僕らのこれまでの作りかたは違うんだな、とホントにハッキリ思いました。そういった部分をちゃんと汲み取っていただけた言葉が、“easy access”という言葉だと思います。
飯田 それでもね、ついついクセで難易度を上げてしまって。
広野 一発目にちゃんと組み上がりましたって出てきてものを試しにやってみたときは、ウチのスタッフもみんな難しくてクリアーできないって言ってましたね(笑)。
飯田 僕らは作っていくうちに慣れちゃうし、難しいものをクリアーしていくことがゲームの気持ちよさだと思っている節があるので、つい難しくしてしまいがちなんですね。たとえば『スペースインベーダー』はプレイヤーがうまくなっていくゲームじゃないですか。
須田 学習していくということでね。
飯田 ゲームが簡単になっていくわけじゃない。ゲーム自体はどんどん難しくなっていって、僕らがうまくなっていく。でも、そういう力学ではない、最近のゲームユーザーの思考というのは、バンダイナムコゲームスの最前線に立たれている広野さんがとくに理解されているので、そこの調整は広野さんに見てもらっています。
広野 とくにカジュアルっぽいゲームを僕は作っていますからね(笑)。
須田 『AKB』もそうですよね。
飯田 そこへいくと僕らは古典派なんです。広野さんは、いまのゲームユーザーの姿をよく知っている。ですので、バンダイナムコゲームスさんの女性のスタッフさんにもたくさんモニタリングで協力していただきました。イージーモードをつけようとか、アシスト機能をつけようという話もあったのですが、ゲームの側がそれをやってしまったら僕らの哲学が壊れてしまう、というジレンマが(笑)。
広野 お手本モードを入れたらいいんじゃないかとか、最後までずっと言っていましたからね。
飯田 気持ちはすごくわかるんだけれど、『インベーダー』育ちとしては、納得しきれない部分があって(笑)。ですからモニターを何度もくり返して、現状できたものは誰でもできるものになっています。2〜3回はゲームオーバーになっちゃうかもしれないですけれど、ちゃんとクリアーできます。さらに、それでは簡単すぎて満足できないという人のためにも、ディープなモードが用意されています。
広野 くり返し遊べる要素はちゃんと入れていますね。

【注釈】
※5:ダンス・ミュージック界を代表する、イギリスのユニット。

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――いま、お話を聞いて、最初はなんでリズムアクションなんだろう、と思っていたのが、リズムアクションという選択をした理由がよくわかりました。
広野 我々としては、リズムアクションと『ヱヴァ』を掛け算して“アンノウン・シンクロアクション”という言葉で打ち出していきたい、と思っています。こういう遊びかたって、いままでなかったと思うので。
飯田 だから、“第3の音ゲー”というつもりです。音ゲーというつねに需要のあるジャンルに対して、僕らが新しく発明した“第3の音ゲー”を供給したいというトライアルでもあったんです。作り終わって、出来上がったものを見ると、けっこうイケるんじゃないか、と実感しています。

――今回の作品は、リズムアクションなので音の部分もこだわられているのでしょうか?
飯田 そうですね。原作で楽曲を担当されている鷺巣(詩郎)さんにもご確認いただいて、リミックスという形でウチのサウンドスタッフががんばりました。そこに、ウチのサウンドチーフである山岡晃というとんでもない男がいるのですが、彼が魔法をかけたんです。そうしたらPSPとは思えないような音質、音圧の曲に仕上がりました。あまりにもよくできているので、PSPのサウンドが、クラブのサウンドシステムにどれだけ耐えられるのか、クラブのイベントに参加して実験したいと思うほどで。これは僕の個人的な表現活動としてパフォーマンスを続けていこうかな、と。
広野 当初は鷺巣さんの曲をそのまま流そうと考えていたのですが、山岡さんによって日々音が変わりましたね。
飯田 変わりましたねぇ。アボリジニーの吹いてる楽器が入ってきたり。それが使徒の声とリンクしていたり。
須田 完成形がわからなかったですよね。最後どこまでのクオリティーで収めるのかな、と。
広野 ホント、耳もとで聴いてもらいたいです。
飯田 そう。そこで今回、広野さんの仕掛けで『特装版』を用意していただきました。ややお高い商品になってしまいますが、やはり最高の環境でこのゲームを提供したいと思い、制作していただきました。
広野 『特装版』に同梱されているのは、サウンドトラックCDとTシャツ、そしてオーディオテクニカさんに生産協力していただいた、特製のイヤホンですね。
飯田 デザインはオリジナルで、音も最適な状態にチューニングされていると思います。
広野 オススメはやはり『特装版』。このゲームは映像を目で観て、音を耳で聴いて、指で触れてリズムを刻む。これで、五感のうちの3つがフォローできているんです。あとは残るふたつですよね。耳はイヤホンで補助していただいて、同梱されているTシャツで“着る”という、また別の感覚を楽しんでいただく。さすがに匂いは難しいところですが……“売れる匂い”がしていると僕は思います(笑)。
須田 うまい! すごいなぁ、広野プロデューサーは!!(笑)
広野 そういう3パッケージ展開ですね。いろいろなユーザーさんにフィットするような形の3パッケージです。

――ちなみにデザインは?
広野 草野剛デザイン事務所さんにお願いしています。
飯田 日本のトップデザイナーですね。ゲームの中のインターフェースデザインや取扱説明書など、デザインまわりは一式お願いしています。
広野 イヤホンの色合いもそうですし、箱のデザインもそうですよね。本当に、いろいろなクリエイターのこだわりが詰まった作品になっています。ゆえにたいへんですけど(笑)。
須田 それこそ、“本物”を作っているクリエイターの皆さんが僕らのゲームを遊んだときに、「これは“本物”だ」と思ってもらえるようになったのではないかと僕は思っています。これは『ヱヴァ』のゲームだと、“バイブル”だと言ってもらえる自信がありますし、それだけのものを飯田和敏が作って、バンダイナムコゲームスさんにバックアップしていただいた。僕は、ひとつのバイブルが出来上がったと感じていますね。
広野 本当に触ってみればわかる。触った人が絶対に伝えたくなる。そういう要素が詰まったゲームなんで、僕も今後の展開が楽しみですね。

――最後にひと言ずつメッセージをいただければ。
飯田 皆さんにビックリしてもらえるようなネタを、いっぱい詰め込めたという確信があります。存分に驚いて、楽しんで、大騒ぎしてもらいたいな、と思います。

――ちなみに、飯田さんのファンへ向けた要素というのは用意されているのでしょうか?
飯田 『アクアノートの休日』、『太陽のしっぽ』、『巨人のドシン』、『ディシプリン』と来て、いきなり『ヱヴァンゲリヲン』でしょ? 僕のファンは驚くかもしれないけれど、それはちゃんと見届けてください。飯田作品かどうかは、遊べばわかります。全方位でちゃんとやっています!
須田 新しい原作ゲームが、ひとつ仕上がったと思います。このソフトにはゲームデザイナー・飯田和敏の仕事というものが詰まっていて、彼の『ヱヴァ』への愛情が、遊んでもらえれば感じられると思います。ある意味オフィシャルの作品として解釈してもらえるくらいのクオリティーではないかな、と。そのくらい飯田和敏は庵野さんという方に精神的に近づいて、今回の『ヱヴァンゲリヲン』というゲームを作ったと思うんですね。僕は彼のキャリアの中で最高峰の作品になると思いますし、バンダイナムコゲームスさんと協力して、このシリーズを“第3の音ゲー”としてガンガン出していきたいと思っています。
広野 正直、不安ばかりでした(笑)。結果として、すごく純粋で深くておいしい、これまでに見たことがないようなゲームが出来上がったと思います。本当に新しいジャンルのゲームが生まれたと思いますので、その目撃者になっていただければ。
飯田 いま、僕はわりと晴れ晴れとした気持ちなんですよね。ふつうはゲームのマスターアップって、「アレもしたかった、コレもしたかった」という忸怩たるものがあって、それが次作への想いになったりするんですけれど、いまは清々しい思いでいますから。
広野 ひとつの完成形だと思います。
飯田 自分が作ったというよりは、巨大な力で引っ張られたというか。
広野 そういうストリームに乗ったということですよね。ゲーム業界の新たな何かを生みださなければいけない、神の意思に乗ったという感覚はありますね。ぜひご期待いただければ。ちなみに、このゲームには触れていただいて、聴いていただいて、観ていただかないと、楽しさが伝わりづらい部分がきっとあると思いますので、体験版的な、皆様に触れていただく機会をご用意したいと思っています。その情報にも、ぜひご期待ください!

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ヱヴァンゲリヲン新劇場版-サウンドインパクト-
メーカー バンダイナムコゲームス
対応機種 PSP(プレイステーション・ポータブル)
発売日 2011年9月29日発売予定
価格 6280円[税込]
ジャンル アクション / アニメ・音楽
備考 サウンドトラックEDITIONは8380円[税込]、特装版は11530円[税込]、総合プロデューサー:広野啓、クリエイティブプロデューサー:須田剛一、ディレクター:飯田和敏、サウンド:山岡晃
(C)カラー (C)2011 NBGI ※画面は開発中のものです。

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