サイバーコネクトツー松山洋氏、二塚万佳氏が講演――エンターテインメント制作の苦しみと楽しさ

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2011年6月17日、京都・立命館大学衣笠校舎にて、サイバーコネクトツーの松山洋氏、二塚万佳氏が講演を行った。

●サイバーコネクトツー流物作りの極意とは?

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▲松山洋氏(写真左)、二塚万佳氏(写真右)

 2011年6月17日、京都・立命館大学衣笠校舎にて、サイバーコネクトツー代表取締役社長の松山洋(まつやま ひろし)氏、プロジェクトリーダー二塚万佳(ふたつか かずよし)氏が講演を行った。これは、立命館大学映像学部が主催する“クリエイティブリーダーシップセミナー”のひとつとして行われたもの。いままでにも、映画監督やCMディレクター、ゲームクリエイターなど、幅広い分野の第一線で活躍するクリエイターが登壇し、映像分野を志す若い学生に対して業界の最前線の現状を紹介してきている。
 そしてサイバーコネクトツーと言えば、卓越した映像表現の手腕で世界に知られるデベロッパーだ。そのトップクリエイターが登壇するとあって、セミナーには多くの学生が詰めかけた。

 登壇した松山氏は、まず会場の学生たちに、「勉強していますか?」と質問。“グローバルイルミネーション”、“テッセレーション”といった専門用語を挙げ、これらを知っている人に挙手を求めたが、手を挙げた人はごく少数。これを見た松山氏は、「立命館大学での講演は2年振り。しかも映像学部の学生さんたちが相手ということで、気張って技術解説の準備をしてきたんだけど……ちょいちょい飛ばして、わかりやすいお話しを展開していきますね」と苦笑しつつ、講演を開始した。

●仕事と割り切ってゲームを作るような人は……(以下略)

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 第一部は、まずサイバーコネクトツーがどんな会社であるか、その説明から始まった。松山氏は、昨今のゲーム業界では、ゲームソフト以外の事業(スロットマシンの制作や、パチスロの映像や基盤、ソーシャルゲームやアプリ系の開発など)を手掛けている会社が多いことを指摘したうえで、「サイバーコネクトツーは、パチスロとソーシャルゲーム制作のオファーについては、無条件でお断りしています」(松山氏)と断言。松山氏は、エンターテインメントの定義はいろいろあることを認めつつも、パチスロはギャンブルであり、エンターテインメントではないとして、「死んでもパチスロはやりません」(松山氏)と宣言し、ソーシャルゲームについても、「本気になれないのでやりません。一度ソーシャルゲームに逃げてしまったら終わりだと思うので」(松山氏)と過激に言い切った。
 つぎに、サイバーコネクトツーが手掛けてきたタイトルを紹介し、開発タイトルを累計すると、全世界で1200万本を販売したことを説明。さらに、1年間におよそ1200タイトルが発売されるゲームソフトの世界において、10万本以上を販売し、利益を出しているタイトルは1割にも満たないという現実を語った。さらに、現在では、世界市場に向かわないときびしいこと、日本の特定の層に向けたタイトルでは世界に通じにくいことなど、シビアな現状を説明。松山氏は、「きびしいことを言うのは、これからゲーム業界に向かおうという人に、まっすぐ向かってほしいと思うからです。こんなはずじゃなかった、となるのは心外ですから」と率直に語った。
 しかし松山氏は、「お先真っ暗かと言えば、そんなことはない。戦いかたを間違えなければ、エンターテインメント業界は超楽しいんです」と語り、サイバーコネクトツーこそがその好例だと説明した。松山氏いわくサイバーコネクトツーは、「先週のジャンプを読んでいないと怒られるし、アニメを見ていないとののしられる、そんな会社です。映画も公開初週に見に行って、一刻も早く感想を語り合おうとするので、平気でネタバレもします。見ていないヤツが悪い、のろまに合わせるような生きかたはしていないんです!」という、ある意味、特異な社風があるのだという。そして、そうした“好きであること”が物を言うのがエンターテインメント業界であり、好きでさえあれば、知識や技術は後回しでもいい、というのが松山氏の主張だ。ただし、「ちょっと好きなくらいでは無理です。好きなら、技術も知識も身に付きます。なかなか能力が身に付かないと思っている人は、考え直したほうがいい」(松山氏)と、きびしい言葉も。「仕事と割り切ってゲームを作るような人は、粉みじんになって消えてしまえばいいと思います」(松山氏)と過激な表現で、とことん“好き”であることが、優れた作品作りにとって不可欠なことであることを強調した。

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●メディアミックスの極意3箇条、“バンナムはスゴイ”!?

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 続いては二塚氏が登場。みずからを、「プロジェクトリーダーという、みんなを引っ張る役です。わかりやすく言うと……松山に怒られる役割ですね」とジョークを交えて自己紹介した後、“クロスメディア展開の秘密と仕掛け”と題して、『.hack』プロジェクトの裏側について解説する講演を行った。

 二塚氏は、クロスメディア展開の必然として、非常に多くの人が関わる難しさがあることを指摘。そして成功させるためのポイントとして、「緻密にスケジュールを立てること。そして、ひとつの祭りとして、どこで盛り上げていくかをしっかり決めること」(二塚氏)が重要であることを説明した。
 その実例として取り上げられたのが、『.hack//GU』だ。この作品は、ゲームソフトの『Vol.1』から『Vol.3』までの全3作品を中心に、そのプロローグにあたる全26話のテレビアニメ『.hack//Roots』や、『.hack//GU』専門誌、ラジオなど、幅広い展開をしたコンテンツだ。この『.hack//GU』について二塚氏は、「シリーズ物ではだんだん販売本数は落ちていくのが通例ですが、『.hack//GU』では逆に数字が上がっていきました」と説明。その理由として、「『Vol2』にピーク、祭りを持ってきました」(二塚氏)という戦略を語った。二塚氏は、「『Vol.2』の完成間際は本当にきびしかったが、現場の熱意はすごいものがあり、皆が必死に動いて、必死に物を作りました。『Vol.2』をなんとか2006年9月に間に合わせることができたので、全体がスケジュール通りに進み、うまくかみ合ったのです」と、困難を克服して仕掛けのタイミングを遵守したことが、成功の鍵であったことを告白した。
 以上の話から二塚氏は、「自分たちの作りたい物を作ることは大事です。でもそれだけではなく、どう伝えるかに力を注ぐことも大事。重要なのは、お客様にどう届けるかです」と力説した。

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 つぎに二塚氏は、物作りにおいて大切なこととして、“コミュニケーション”について説明した。その実例として、二塚氏がメインとして制作した映像作品『.hack// G.U. TRILOGY』の制作中のエピソードが披露された。二塚氏は、同作を手掛けるにあたり、物語の核を成すふたり、ハセヲとオーヴァンが、終盤で手を掴むシーンに非常にこだわったのだという。「最初、すぐに掴むような表現になっていたため、NGを出しました。掴むか掴まないか……ここでこう、だろ! と」と、身振り手振りを交えて、制作中の様子を再現するかのように熱弁を振るい、「熱意を持って話して、それが伝わったときの連帯感、いっしょに作りあげたという満足感。それが制作していて楽しいところなんです」と、コミュニケーションによって作品を作りあげていく喜びを、クリエイターらしい視点で語った。
 二塚氏は、講演のまとめに、メディアミックス展開を成功に導くポイントとして、以下の3項目の重要性を改めて解説した。
・徹底的に効率化する
 効率的にミーティングをすること。目的をしっかりもって情報共有ができれば、ムダな確認作業や、ムダな情報を取りに行く行為を減らし、効率よく制作を進めることができる。
・軸をしっかり決める
 何を中心に展開するかをはっきりする。サイバーコネクトツーの場合は、ゲームを中心としたプロジェクトであることをはっきりさせて進める。
・バンダイナムコゲームスはすごい
 冗談めかして挙げられた項目だが、二塚氏が言うには、「松山はまあ、こういう感じなので(笑)。言いたいことはズバズバ言うし、バンダイナムコゲームスさんも頭を抱えていることもありますが、それでもしっかり話をしてもらえる。その関係性がすごく大事なんです」とのこと。「真剣に、ガチで打ち合わせをさせてもらっています」(二塚氏)という関係が築ける相手でなければ、メディアミックスのような大きなプロジェクトを成功させることはできない、ということだろう。

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●『.hack』プロジェクトの新展開、ついに……!

 続いて、再び松山氏が登壇。サイバーコネクトツーの看板タイトルのひとつである、『NARUTO−ナルト−』を題材にした作品を例に、版権物タイトルを作る難しさが語られた。松山氏は、ビジネスとしてのシビアな内情を説明したうえで、実際に版権作品を作るにあたって、サイバーコネクトツーが心がけていることを解説した。

 まずその前提として、松山氏は改めて、サイバーコネクトツーは”作りたい物を作っている”ことを説明。「『NARUTO−ナルト−』について言えば、マンガの連載が始まってすぐに、企画書のプロトタイプを持って、当時のバンダイに持ち込みました」(松山氏)と、発注に応じて作ったのではなく、みずから作りたい物を作るために、企画を持ち込んだのが始まりであることを力説した。ちなみにバンダイに持ち込んだ理由については、当時のバンダイの状況を辛辣に評したうえで、「我々がキャラクターゲームのお手本を作ることで、版権キャラクターにあぐらをかいた、いい加減なゲームが出続ける状況を止めたかったんです」(松山氏)と、強い使命感を持っていたことを明かしてくれた。
 そして、版権もの作品にユーザーが求めているものとして、一に“好きなキャラクターが使えること”、二に“原作の名シーンを再現されていること”。そしてそれらが実現されたうえで、“ゲームならではの、ifの再現”が求められるという、ニーズの序列について説明。「『NARUTO−ナルト−』の場合で言えば、『NARUTO−ナルト−』らしいものになっているかが何よりも重要。版権をお預かりする以上、我々は、『NARUTO−ナルト−』を好きなだけではなく、ものすごく研究しています」(松山氏)と語り、その例として、詳細な設定資料を見せつつ、開発の実例を解説していった。
 ここで公開された内部資料は撮影禁止だったため、画像はお見せできないが、最新作『NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメットインパクト』の開発資料も含めて、非常に貴重なものばかり。キャラクターや背景の詳細な設定資料や、アニメ『NARUTO −ナルト− 疾風伝』の伊達勇登監督が監修してチェックが入ったコンテやなど、開発最前線の様子が生々しく伝わってくる資料の数々が、惜しげもなく披露された。
 サイバーコネクトツーでは、監修によって受けた指摘を社内のデータベースに蓄積し、設定のルールなどを徹底することで、同じ指摘を二度受けないように注意しているのだという。これも、制作を効率よく進める秘訣なのだろう。

 つぎに、版権ものの魅力を活かしたゲーム性を構築するための方法として、実際にサイバーコネクトツーで行われている手法について解説された。サイバーコネクトツーでは、まずスタッフ全員で、その作品から連想されるキーワードを出し合い、それを組み合わせることで、その作品らしく、おもしろいゲーム性を生み出しているのだという。

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 まとめとして松山氏は、版権ものの『NARUTO−ナルト−』でも、完全オリジナルの『.hack』でも、入り口は違くとも、心がけることは同じで、「いちばん重要なのは、お客様のことをいちばんに考えることです」(松山氏)と説明した。
 そして最後に、「物作りはたいへんで、苦しいことです。苦しくて苦しくて苦しくて、そして楽しい。ちょっとだけ、楽しいほうが強いんです」(松山氏)と、現場の本音を語った。松山氏は、最初から答えが見えているわけではなく、試行錯誤しながら完成させていく過程を「飛行機を組み立てながら飛ばすのと同じです。自分たちで飛ばしながら、落ちないように、組み立てながら無事に着陸させるのが、我々の仕事なんです」と表現。エンターテインメントを作ることの難しさ、楽しさを強調し、第一部を締めくくった。

 なおこの後、学生たちとの質疑応答では、『.hack』プロジェクトの展開について松山氏から意味深な発言が。「『.hack』は、現在3rdシーズンが展開中です。2010年の3月にPSPの『.hack//Link』が発売されて、2010年の5月にライブイベントをやり、年末年始に、『.hack//Quantum』の展開が始まりました。そしてプロジェクトはまだ終わっていません。これから発表されるので、待っていてください」(松山氏)とのこと。発表の時期については明言されなかったが、『.hack』ファンにとっては期待が膨らむ発言だ。

●特別ディレクターが完成間際に嵐を起こす!!

 第二部では、さらに具体的に、ゲーム業界を志す人に対してのアドバイスが語られた。松山氏によると、サイバーコネクトツーには、クリエイターを志望する人たちから、たくさんの作品が送られてくるが、そのほとんどが、既存の作品“のようなもの”なのだという。しかし松山氏に言わせれば、「会社に送って評価される応募作品を作るときに、“のようなもの”を作っている時点で負け」(松山氏)。ゲーム業界を志望する人には、物作りに対して強い気持ちを持ってほしいと訴えた。
 また松山氏は、映像学部の学生に対するメッセージとして、「CGの可能性はまだまだ広がる」と主張した。ただし、ゲーム制作はアイデアとテクノロジーの両方が不可欠であるとも説明。サイバーコネクトツーでは、社内での勉強会を頻繁に開催したり、1年に12回以上も同業他社との交流会を行っていることを明かした。
 そして、日本最大のゲーム開発者向けカンファレンスであるCEDECについて解説し、インターネットでプロが作った資料や講演の模様を収録した動画を無料で見られること、そして実際にCEDEC開催中に会場に足を運べば、最先端の技術を解説する貴重な講演を見られることを説明。さらに、サイバーコネクトツーが開催している単独会社説明会についても紹介し、学生たちにも積極的に勉強することを求めた。

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 その後、立命館大学映像学部の中村彰憲准教授から出されるお題に従って、ディスカッションが行われた。
 ここでは、サイバーコネクトツーの開発体制について具体的な説明がなされた。サイバーコネクトツーには約200人のスタッフがいるが、プランナー、ゲームデザイナーが約20人、プログラマーが約30人、サウンドは6人で、残りはすべてアーティスト、つまりグラフィックを手掛けるスタッフなのだという。これだけの人数がコミュニケーションを密にとって制作するために、サイバーコネクトツーが採用しているのが“トライファクター”という手法。これは、基本的に3人ひと組でチームを組んで作業にあたる体制のことだ。この体制のメリットは、まず少人数のユニットであるため、会議を行う際に発言しないメンバーが生まれないこと。そして多数決を取った場合に必ず結論が出るため、意見が割れて議論が紛糾する事態が生まれにくく、効率化、スピードアップが図れることなのだとか。
 そしてもうひとつ、サイバーコネクトツーらしいのが、“特別ディレクション”というポジションを設けていることだ。サイバーコネクトツーでは、各プロジェクトを進める際に、プランナー、アーティスト、サウンド、プログラマーそれぞれにひとりずつ、最終判断を下す権限を持つ“リード”というポジションを置き、松山氏とともに全体の舵取りを行う。そこにもうひとり、6人目のディレクターとして“特別ディレクター”を配置するのだという。特別ディレクターには、経験が浅く、タイトルを仕上げたこともない新人を任命されるのだとか。するとどうなるかというと、「もめ事がおきます。だってわかってないんだから」(松山氏)。それでもあえて特別ディレクターを配置するのは、経験豊富な“リード”たちは、完成間近でおもしろいアイデアがあったとしても、現実的な判断、つまり無理な工数をかけるのを避け、完成に向けて進める方向を選んでしまいがちだからだという。経験の浅い特別ディレクターは、それがどれだけ時間がかかるかを理解せずに無茶な提案をしがちだが、それがまさに重要なところ。「お客さんには、制作の都合とか関係ないですから。おもしろいから出したんじゃないの? って言われたら何も言えません。そのお客さんに近い状態の存在が、特別ディレクターなんです」(松山氏)との弁は、まさにサイバーコネクトツー流の真骨頂といっったところだ。ただし松山氏によると、「これ、リーダー連中には大不評なシステムです。もめ事になるので」とのこと。新しいシステムを思いつくまではこの体制を続けるとのことだが、「でもいいんですよ。発売した後にもめても、何の意味もないですから。開発中にもめることができてよかった、ということです」(松山氏)という哲学がある限り、変更されることはなさそうだ。

 つぎのテーマは、「今後開発を手掛けてみたいプラットフォームは?」という、非常に興味深い話題。これには、松山氏は「いかにもファミ通さんが好きそうなネタですね」と冗談めかした前置きに続けて、「もちろん、各ハードのスペックなどは全部知っていますが、うちの場合、ハードを見ながら仕事をすることはないです」と冷静なコメント。重ねて、「こんなものができたらみんな驚くぞ、というところからスタートするので。Wii Uならこうやって実現できるじゃん、となればWii Uで作るし、Vitaならこうやって表現できるな、となればVitaで作るし。ハードに向いてゲームを作ることはないです」(松山氏)と、改めてアイデアありきであることを強調した。

 さらに、“グローバル開発への取り組みについて”という、突っ込んだ話題についても語られた。松山氏によると、サイバーコネクトツーは上海、台湾のデベロッパーと共同で制作を進めることもしているのだという。これについて松山氏は、「昔は何から何まで自分で作るんだ、という意地がありました。でも、道ばたの小石とか、工数がかかるわりに違いが出ないものにまで手をかけて、結果的にボリュームが少なくなってしまうのでは、それは間違った判断だろうと」と説明。つぎつぎと大作を完成させる過程では、サイバーコネクトツーの表現力が活きるところと、そうでないところを見極めて、効率的に制作を進めていることを明かした。ただし松山氏は、「誰でもいいわけではなく、ちゃんと信頼できるパートナーを選んで仕事をしています」と、クオリティーに影響がないように配慮していることを強調することも忘れなかった。

●ゲームの魅力、そして超難度の課題とは?

 3時間超に及ぶ講演のまとめとして、最後に「私にとってゲームとは?」という、非常にアバウトで難しいテーマが語られた。これについては、松山、二塚両氏の言葉をそのまま掲載しよう。

■二塚氏
「底の知れないおもちゃ箱ですね。娯楽全般がそうだと思いますが、どこまで新しいものを作り出せるかが、僕らの力です。いままで体験したことのない娯楽を作り続けることが、僕らの運命。それが世界を変えると思う。それで勝負していきます」

■松山氏
「ゲームは、仕事であり、趣味。完全に生活の一部。漫画もアニメもそうです。事実なので隠しませんが、これだけやっていると、生活むちゃくちゃですよ。うちの会社は徹夜禁止なので、夜は帰らないとダメです。マスターアップ直前だろうと。そして翌朝9時には来ないとダメ。……でも、それは従業員のルールですから。じつは僕、社長なので。言うことを聞く必要がないので、24時間ずーっと仕事をして、朝まで飲んだ後でも、9時には遅刻しないで出社します。それでも体もどこも悪くないし、視力も両目1.5。そんなふうに、全力で仕事やっていますけど、家庭はダメかもしれません。先日、家に帰ったら、ランドセルがあったので、たぶん息子が小学生になったのかなと。そんな感じです。それくらい。どこかが伸びればどこかが引っ込むから。人間万能じゃないからね」


 なお講演の締めに、松山氏から学生たちにひとつの課題が出された。それは、A4サイズの紙1枚に、ゲームソフトの“アイデア書”を書きなさい、というものだ。内容の条件は、“ほかにふたつとない”ということ。「ゼロから1を生み出すのがクリエイターの仕事だから」(松山氏)という、非常に真っ当な理由から出されたものだが、じつに難度の高い課題だ。松山氏いわく、「これはエンターテインメントを目指す以上、必ず求められます」とのことなので、ゲーム業界を目指す人は、自分なりにチャレンジしてみてはいかがだろうか。松山氏によると、すぐれたアイデア書を作る方法は以下のふたつ。

・見て15秒で伝わること
 「何百字、何千字と書いてくる人がいますが、そんなものは社会では読んでもらえません。赤の他人に書類を読んでもらうには、「何それ、おもしろそう!」と興味を持ってもらえるかが重要なんです」(松山氏)
・友だちに見てもらうこと
 「自分ひとりで何でもできると思わないこと。ほかの人に見せて、「それなんか見たことあるよ」って言われたらやり直しです。「確かに見たことないね」ってたくさんの人に言ってもらえたら、作品として提出できます。私なら、数十人に見せた後で、やっと勝算が持てます」(松山氏)

●講演を終えて

 最後に、講演終了後のおふたりに、少しだけお話しを伺えたので、その内容を紹介しよう。

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――映像部の学生たちということで、映像がご専門の二塚さんにとっては、まさに後に続く人たちですね。

二塚氏 すごく真摯に、まじめに聞いてくれていましたね。僕らも正直、期待しているんですよ。いまゲーム業界はきびしいところがあって、これから先、若い力が肝なんです。若い人材を育てていくのは、僕たちの役目だと思っていますから。やりたい、と熱い情熱を持っている人に、どんどん入ってきてほしいです。それに尽きますね。

――今日の講演は、ゲーム制作の苦しさと楽しさを伝える内容が多かったですね。

二塚氏 けっきょくチーム制作になるので、ケンカじゃないですけど、言い合いとか、うまくいかないこともあります。でも、それを乗り越えたときの達成感はすごく大きいので、そこでやってよかった、と思えるものなんです。学生さんたちの場合、そういう達成感を得る機会は日常にはあまりないと思いますが、たとえば仲間達と集まって好きな物を作ってみたりして、一度その達成感を経験してみてほしいですね。その経験を通して、「こんな達成感をもっと経験したい」と思ってもらって、熱い情熱を持ってもらえるとありがたいです。

――講演の内容については、もう少し高度なものも用意されていたとか?

二塚氏 そうですね、本当はもうちょっと技術的な……『.hack』のときのプログラムや、シェーダーの扱いかた、エフェクトの使いかたなどを解説する準備もありました。あとはアニメーションの確認のしかた……簡単にいうと、デザイナーが、直感的に、プログラマーの手をわずらわせないように、PS2の実機に表示させるようなシステムとか、そういうのを紹介しようかな、と思っていたんですが。そのあたりは改めて。今日松山にダメ出しをされなければ、また講演する機会もあると思いますので(笑)、そのときにお見せしようと思います。


――講演を終えていかがですか?

松山氏 冒頭では、CGについて学んでいる人が少ないようで拍子抜けしましたが、質問の内容などはさすがやな、と。やはり映像学科で、映像系に道を決めている人たちということで、考えかたとかもはっきりしているのかな、と頼もしい感じはしましたね。

――サイバーコネクトツーの社風や体制についても説明されていましたが、やはりいずれ戦力として来てくれれば、というような思いもあったのですか?

松山氏 それはありますよ。2年前にもここで講演をやりましたが、その後、講演を受けて卒業した人からの応募もくるようになりました。2年かかったけど、ようやくちょいちょいね。あ、でも、たまに東京で仕事をしていると、別のメーカーの人から、「2年前に立命館で講演を受けて、それがきっかけで業界を目指したんですよ」なんて言われることもあったりするんですよ。「じゃあうちに来いや!」って思いますよね(笑)。

――最後、かなり難しい課題を出されていましたね。

松山氏 でもあれ、サイバーコネクトツーでは毎年やっていますよ。学生さんたちのも、後でコピーをもらって、合格と不合格に分けます。ちなみに合格は100点、不合格は0点です。よく会社説明会などで、「ぎりぎり不合格の作品を見せてくれ」なんて言われますけど、そんなのないですから。不合格はみんな0点。惜しいとかはないんです。

――きびしいですねぇ……。ちなみに、サイバーコネクトツーの社内で実施されているアイデアコンペでは、合格率はどれくらいなんですか?

松山氏 社内でやった場合ですら、合格は30パーセントくらいです。だからこそやるんですよ。みんな100パーセントが取れるなら、やる必要はない。だから定期的にやってトレーニングするんです、プロですらね。

――となると……学生さんたちから、合格は出そうですか?

松山氏 学生さんから上がってくる企画書にせよ、作品にせよ、たまにドキッとするものがありますよ。“残酷な同級生”っていうのがいるものなんですよ。まわりのクラスメイトがかわいそうなくらい、100点じゃなく、「1000点だ!」っていう。サイバーコネクトツーでも、同期を集めて研修をやると、ひとりだけものすごいヤツがいたりするんです。まわりのヤツもすごいんですよ、うちの試験に合格して入社してきているんだから。でもいるんですよね、そういう人材が。ちなみに過去に、異業種のサラリーマンからの応募で採用したことがあります。このときは、“連載中の某漫画作品の最終回を書け”という課題で、彼ひとりだけが合格しました。私は課題をだすときに、私の答えというものを考えておきますが、それとはまったく違う内容でした。でも、「これはこれでアリ!」って思って(笑)。彼は、最終話だけじゃわからないだろうということで、最終回までの5話分を送ってきたんですが、コイツはおもしろいぞ、と。後で聞いたら、彼はその漫画を読んだことがなくて、全部メモを取りながらいちから読んで、それから課題を考えたらしいんです。企画ができる人間ってそういうもので、目的達成のために必要なことが、教わらなくてもできるんですね。できない人ほど、課題に質問を返してくるんですよ。「その漫画、読んだことがないんですけど、いいですか?」とか。知らんよ!(笑)

――では、これから社会に出る人たちに対して、ひと言お願いします。

松山氏 講演の冒頭でも言いましたけど、私は講演するときには、極力本当のことを言うようにしています。学生が知りたいのは、本当のことだと思うんです。調べることはできますが、本に載っていること、インターネットに載っていること、それらは本当のこととは限らないですよね。でも先輩たちが実際に経験してきたことは、間違いなく本当のことなんです。だから、いちばん身近のお父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃんから、そういう視点で話を聞いてみてください。めっちゃおもしろいですから。たとえば、「お父さんが最初に入社したときってどうだった?」とか。逆に、それを教えてあげるのは、人生の先を歩いている人間の使命だと思うんです。極力わかりやすい言葉で、必要なときにはきびしい言葉でも。就職年度に現実を知っても遅いですから、なるべく早く本当のことを知って、早く目覚めてもらって、まっすぐ、最短距離で、この業界を目指してほしい。我々とともに戦える、仲間であり、ライバルになってほしい。うちも、若い力を求めていますので、こうやって学生さんにお話しできる機会があれば、これからもどんどん行きますよ!

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