【特集コラム】〜中国本土にチャレンジするジャパンコンテンツ企業〜

「ONE PIECE」の新聞(銭江晩報)での連載が始まった。 そこまで、の経緯と流れとは。

株式会社メディア開発綜研
主席研究員 戸口功一
先日、中国にて「ONE PIECE」の新聞(銭江晩報)での連載が始まったとの情報が話題となった。日本のメジャー作品でありメジャー出版社が本格的に中国市場へ舵を切り始めた大きなニュースといえるだろう。
中国市場は大変魅力的だが、一筋縄ではいかないマーケットであることは誰もが承知しているところである。特にコンテンツ分野は政治、文化、自国の産業育成に抵触するとみなされ、非常にセンシティブな産業である。経済が急成長している中国では自国にない知財を育成することに力を入れている。それゆえに日本が世界を席巻しているマンガ、ゲーム、アニメをそのまま輸入したのでは国内市場を席巻されてしまい自国のコンテンツ産業が崩壊してしまう恐れが規制の背景にあるといわれている。その意味ではメーカーや製造業の参入スキームとは大きく異なるといえる。中国本土にチャレンジするのであれば、まさに「郷に入れば郷に従え」と前回のコラムで記したが、様々な角度から環境を整備しなければならないだろう。

◆新聞掲載というアプローチ方法
今回の集英社の取組みは、旧小学館プロダクション(現 集英社小学館プロダクション)が任天堂と共にポケモンを米国進出させたときの状況を彷彿させる。方法論の角度は全く違うが、目の付け所は非常に興味深いアプローチといえよう。

ポケモンの場合は、当時、日本ではブレイクし始めていたが、米国側(米国任天堂:NOA)ではUS版で売り出すリストにも入っていなかったという。しかし日本での大ブレイクによって無視できないゲームとなる。米国側はゲームジャンルがRPGということ、キャラクターもクールではないとの評価で、このままでは米国ではヒットしないとの判断となった。

そこで既に日本で放映していたポケモンアニメを米国の子どもに視聴させたところ、非常にウケがいいことがわかり、ゲーム以外でのマルチ展開構想を考えたという。
その時、日本でポケモンアニメの光の刺激による発作の事故が起こった。しかしこれは逆にポケモンを海外で有名にするきっかけになったといわれている。なぜなら症状が700人以上に出たというニュースは、その背景でどれだけの人が視聴していたのか、といった見方をされたからである。日本にはモンスターアニメが存在することを世界に知らしめた結果となった。そして「ピーナッツ」休刊で、新しい新聞連載漫画を探していた米国新聞社からのオファーにつながるのである。スヌーピーの後継掲載がポケモンになることは米国民の信用に大きな影響を与える。このことがポケモン海外展開成功の第一歩となったといわれている。

今回の「ONE PIECE」については、すでに全世界でヒットしている作品を中国においてどのようにビジネスにし、拡散させていけばいいのかと模索していたところでポケモンのような必然が生まれ、新聞とのコラボレーションへとつながったと考えると、成功の連鎖が生まれる可能性が期待される。

すでに中国本土で単行本は販売されているが、主体性を持ってビジネスを出来ていない状況にある。それを打破するためにあえて政治的色彩が強い新聞と組み、日本のマンガの地位向上を図るとともに、お墨付きをもらうという手法は、中国でビジネスをする上で戦略的に利にかなった選択肢といえるかもしれない。穿った見方をすれば、中国の新聞社(低迷する紙媒体)もビジネスとしての利を取ったともいえる。

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ITエンターテイメント企業の中国参入スキーム

◆中国マーケットへのチャレンジと今後の示唆
中国では都市毎に重点産業を決めて育成、誘致を進めている。コンテンツ分野においてはアニメ、マンガは上海の西に位置する杭州市が力を入れている。杭州市は電子コミックでも、中国移動のモバイルコミックの拠点として位置づけられている。

先日、日本において電子書籍の大手取次ビットウェイが中国の携帯キャリア最大手「中国移動」を通じて、日本の電子コミックを提供することになった。
株式会社ビットウェイ【http://www.bitway.co.jp/newsrelease/pdf/NR_110124_N.pdf】
まだメジャーな作品は取扱っていないが、日本で普及が拡大している電子書籍の中国展開の先鞭をつけたといえよう。

広告代理店であるADKは、中国でアニメ産業を積極的に推進するため北京に「北京IMMG国際文化伝媒有限公司」を設立した。
株式会社アサツー ディ・ケイ【http://www.adk.jp/html/news/2011/20110516_001254.html】

すでに「クレヨンしんちゃん」「ドラえもん」といった中国でも大人気のライセンスを展開しているため、いまさらという感じはするが、版権ビジネスではなく、子会社を通じて中国国産アニメの制作を事業の柱に掲げている。いずれの企業も今まで中国本土へ展開し、夢破れて撤退してきた日本のコンテンツ企業の経験を踏まえた形でチャレンジを試みている。

集英社は政府に近い新聞社との連携、ビットウェイは携帯キャリア最大手との連携、ADKも文化部直轄の国家級文化企業集団「中国動漫集団」との連携を掲げている。さらに連携する際は、現地企業との合弁会社、もしくはシンガポールや香港で設立した会社を介して展開している点も重要である。そしてコンテンツならではの特徴として、事業内容に中国国産コンテンツの制作が掲げられている。その点でいえば「ONE PIECE」は稀有なケースであるといえよう。

ここに挙げた企業以外にも、角川、エイベックス、東映アニメーション等は、数年前から参入しており、最近ではGREEなどの新興SNS企業も中国本土に向けて展開している。
過去の経験や現地でのマーケットリサーチを経て、中国マーケットにチャレンジしている企業は今後も増加していくであろう。その後、新しい取組みがどのように実を結び評価されるのか、非常に興味深い。

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ただし中国はコンテンツバブルであり、既に日本のコンテンツ企業の資本スケールでは太刀打ちできないほど、現地企業が肥大化している状況にある。そうなるとメジャーコンテンツを保有していたとしても日本のコンテンツ企業クラスが1社単位で進出を考えるレベルではなくなってきているのではないだろうか。

日本のコンテンツ企業は世界レベルでは非常に小さな企業である。そうなると日本企業同士のコングロマリット化という選択肢も考慮しなければならない一方、既に韓国コンテンツ企業等を含めた地域連合体で中国本土にチャレンジしていかなければならないフェーズに入っているのではないだろうか。

日本コンテンツ企業の海外進出は、企業体そのものをどのように再編し構築していくかという問題に行き着くことなのかもしれない。

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