不思議なオリジナリティー溢れる『El Shaddai(エルシャダイ)』インプレッション

プレイステーション3 Xbox 360 ゲーム インプレッション
旧約聖書(エノク書)の一節を参考に、天界と地上に降りた堕天使たちの闘争を描くアクションゲーム。シンプルかつツボを押さえたアクションと、幻想的な彩で描かれた世界観が融合。ほかにはないセンス・オブ・ワンダーを感じさせる『El Shaddai ASCENSION OF THE METATRON(エルシャダイ アセンション オブ ザ メタトロン)』インプレッションをお届けする。

●ヒトでありながら天界の書記官を任されるイーノックは、堕天使たちを捕縛するために戦いに赴く

 イグニッション・エンターテイメント・リミテッドによる『El Shaddai ASCENSION OF THE METATRON(エルシャダイ アセンション オブ ザ メタトロン)』は、天使と堕天使の闘争をテーマに描いたアクションゲームである。その独自の演出は、映像を見ているだけでも興味深い。いっぽうゲーム性はオーソドックスなアクションで、プレイのリズム、爽快さなどが考慮された仕上がりになっている。世界観とアクション、このふたつが重なり合って、本作は独特な印象をプレイヤーに与える。そのオリジナル性の高い魅力を、ファミ通Xbox 360を中心にレビューや攻略記事を担当してきた古株ライター、石井ぜんじがインプレッションする。

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▲伝説の時代を描きながらも、携帯電話とおぼしきもので連絡を取り合うルシフェル。この一風変わったセンスが、プレイヤーの興味をかきたてる。

●特異な設定と演出が生む、オリジナリティーの高い『エルシャダイ』の世界

 本作の魅力は、旧約聖書の一節からヒントを得た独自の世界設定と、プレイフィールドの描きかた、強いキャラクター性にあるといえる。ルシフェルやミカエル、アザゼルといった天使や堕天使の名前が登場するが、グラフィックからはそれほど宗教色を感じさせない。世界設定をイメージとして捉え、そのイメージを演出家のセンスによって表現しているのが特徴だ。
 この演出スタイルは、近年の据え置き型の家庭用ゲームでは異色といえる。高性能の処理能力を持つ近年の最新家庭用ゲーム機では、現実世界を舞台に、いかにリアルに細部を描き出すか、というところに力点が置かれることが多い。設定が未来の惑星や中世の都市であっても、細部まで描いてリアルさを感じさせよう、という方向性は似通っている。制作費はかかるものの、そうしたほうがゲームとしての高級感を打ち出しやすいからだ。
 いっぽう、本作は現実には存在しない世界を、イメージを中心にまとめ上げている。その結果、単純な言葉では伝えられない情感が、ゲーム全体の演出を通して伝わってくる。リアル志向に反したこのようなゲーム作りは、むしろハードがそれほど進化していなかった1980〜90年代に多く見られた方法である。
 しかし本作は、決して古臭いセンスのゲームではない。最先端のゲームハードでこのような演出方法を採用したことに意味がある。20世紀にはできなかった、高解像度モニターで高速の処理を行い、斬新な演出を楽しむことができるのだ。
 その現代的なセンスを存分に発揮しているのが、主人公のイーノック、進行役のルシフェルらだ。彼らの服装や、ルシフェルの使う携帯電話とおぼしき道具などは、最先端のファッションスタイルと言える。彼らの個性が神話的な世界観と結びついた結果、海外のSF小説を思わせる、壮大な世界を形成することになる。

 リアル志向のゲームと比べて、本作のようなゲームの世界観はメッセージが象徴的であり、抽象的だ。プレイした誰もが、その人なりに、それぞれ異なった感情を抱くことだろう。この世界観に入り込むことができず、つまらないと思う人がいてもおかしくない。しかし入り込むことができれば、この作品でしか得られない、特殊な情感を受け取ることができるのではないだろうか。

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▲神話的なイメージによって、不可思議なゲームワールドが産み出される。これらのイメージは、プレイヤーの情感に直接働きかける。

●オーソドックスなアクションがゲーム性のベース

 その独特な世界観に比べて、本作のゲーム性はかなりシンプルにできている。古典的なアクションゲームから、その中核を抜き出してまとめているといった印象だ。必要以上に複雑な成長、攻撃システムを備えているわけではない。これで十分だと筆者は思っている。
 敵との戦闘は、おもに道中の円形のフィールドで行われる。神の武器を持った敵から武器を奪って“浄化”し、みずからの武器として対抗。敵を空中に持ち上げる特殊攻撃、ガード崩し攻撃などを駆使し、敵を倒していく。格闘ゲームに比べれば技数は少ないものの、どの攻撃にも意味があるので使い分けが重要だ。また敵のAIが優れており、緊張感をもって戦うことができるのがいい。このプレイ感覚は、2Dのベルトアクション時代から進化し続けているゲーム性の延長上にあるものだ。アクション好きのプレイヤーなら、楽しく戦うことができるだろう。
 欲を言えば、もう少し敵の種類が多かったらもっと楽しめたようにも思える。少し見せかたと動きを変えるだけで新鮮に思えたのではないだろうか。ステージの演出はそれぞれ違ったものがあるので、それに合わせて種類が増えればもっとインパクトが強くなったように思える。
 とはいえ、敵の種類が少なくても飽きが来ないのが本作の優れたところだ。間合いをはかりながら、思考を持って動く敵が複数出現するため、戦いの局面が同じような状況になることが少ない。このあたりは格闘アクションにおけるゲーム性のツボをしっかり抑えてあり、楽しく敵と戦うことができる。

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▲神の武器を持った敵が複数登場し、イーノックの前に立ちはだかる。武器の種類によって性質が異なり、敵から武器を奪うことで武器変更ができる。

●ストレスを考慮し、ライトに遊べるシステムを採用

 敵との戦闘の合間には、ジャンプで移動するシーンがある。ここは真横から見たサイドビューと、やや後方から見下ろす視点の2種類が存在する。サイドビューのシーンは、古典的なジャンプアクションのゲーム性だ。場所によっては落下するとやられてしまい、ジャンプアクションならではの緊張感が味わえる。後方からの視点でのジャンプアクションは、着地点が把握しにくいため難度は高め。場所によっては、何度も落ちてやり直すことになるだろう。
 後方からの視点でジャンプアクションを行うというのはゲーム的に難しく、納得のいかないプレイヤーが出てくるかもしれない。しかし落下しても、すぐにやり直しができるのでストレスは軽減されている。同じところでやられ続けると、さすがに一時中断となってしまうが、それまではスムーズに復活してトライすることができる。
 これは敵との戦いでも同じことが言える。鎧を壊され、敵にダウンさせられたとき、そのまま放置すればミスとなる。だがそこでボタンを連打すれば「大丈夫だ、問題ない」というセリフとともに復帰が可能だ。とはいえダウンばかりしていると、そのうちボタンを連打しても間に合わなくなってしまう。これは落下のミスと同様のバランスとなっている。
 本作のゲーム性は、伝統的なアクションゲームのシステムにのっとって作られている。昔のアクションゲームは、ミスをはっきりと示すのがふつうで、熱中もできるがそのぶんストレスも溜まったものだ。しかしそれに比べると本作は、プレイヤーに余分なストレスを感じさせないような配慮がなされている。そのため、本格的なアクションゲームでありながら、ライト感覚で遊ぶことができる。これは本作の特徴ということができるだろう。

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▲ときおり画面が横視点に変化し、古典的なジャンプアクションとなる。地形や敵のデザインが一変し、その雰囲気の違いがメリハリを生んでいる。

●本作の魅力は、すべてを含めた総合力にある

 これまで述べてきたように、本作は独特の世界観と演出、オーソドックスでライトに遊べるアクションが融合した作品である。それぞれの要素を抜き出してみれば、それほど驚くべきものではないかもしれない。だがこれらすべてが一体となることで、不思議なオリジナリティーを感じさせてくれる。
 ゲームのおもしろさとは、きわめて総合的なものである。それはグラフィックだけでもなく、深い攻略要素だけでもない。本作の優れたところは、アクションのリズムや、障害となる難度が適当で、ちょうどよいテンポでプレイヤーを遊ばせてくれるところにある。アクションを楽しんでいるうちに、気づくと本作ならではの世界観、演出にのめりこんでいる。あまり頭で考えずに、気軽な気持ちでプレイすると、本作の魅力を身体で感じられるのではないだろうか。(Text by 石井ぜんじ)

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 筆者紹介 石井ぜんじ
ファミ通Xbox 360誌でクロスレビュー、攻略を担当する古株ライター。ゲームの文章を書き始めてから20数年、飽きずに続けております。過去に『NINJA GAIDEN(ニンジャガイデン)』シリーズ攻略本、『シュタインズ・ゲート公式資料集』『科学アドベンチャーシリーズマニアックス』などに参加。これらからも、ファンが本当に喜んでくれる本作りを目指していきたいですね。

El Shaddai ASCENSION OF THE METATRON(エルシャダイ アセンション オブ ザ メタトロン)
メーカー イグニッション・エンターテイメント・リミテッド
対応機種 プレイステーション3 / Xbox 360
発売日 2011年04月28日
価格 7,980円[税込]
ジャンル アクション
備考
(C)2011 Ignition Entertainment Ltd. All Rights Reserved.

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