『El Shaddai(エルシャダイ)』、蔵出しクリエイターインタビュー(前編)

ゲーム プレイステーション3 Xbox 360 インタビュー
話題の『El Shaddai ASCENSION OF METATRON(エルシャダイ アセンション オブ ザ メタトロン)』がいよいよ発売。ここでは、ファミ通Xbox 360 5月号にて掲載した、ディレクター/キャラクターデザイナーの竹安佐和記氏と、プロデューサーの木村雅人氏へのインタビュー記事の完全版をお届けする。今回はその前編。

●ゼロからスタートした『El Shaddai(エルシャダイ)

 独特すぎるビジュアルと強烈なキャラクターの個性が話題沸騰中の、イグニッション・エンターテイメント・リミテッドのプレイステーション3、Xbox 360用ソフト『El Shaddai ASCENSION OF METATRON(エルシャダイ アセンション オブ ザ メタトロン)』。ファミ通Xbox 360 5月号(2011年4月30日発売)では、ディレクター/キャラクターデザイナーを務める竹安佐和記氏と、プロデューサーの木村雅人氏へのインタビュー記事を掲載しているが、ここでは、誌面スペースの都合上、泣く泣くカットせざるを得なかった部分を網羅した“完全版”をお届けする。今回はその前編。開発に至る経緯などを紹介(※インタビューは3月上旬に収録しました)。

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左:竹安佐和記氏(クリム)。ディレクター/キャラクターデザイナー。
右:木村雅人氏(イグニッション・エンターテイメント・リミテッド)。プロデューサー。

――長期にわたった開発期間を振り返っていただけますか?

竹安 ちょうど昨日、スタッフとその話をしていました。最初は「振り返ってみれば、よかったよなあ」と始まったのですが、リアルにきびしかった思い出がいろいろとよみがえってきて、最終的には「もう二度とやりたくない!」とブルーな気分に(笑)。あと1年くらいすれば、いい思い出だけを語れるかなあ。

木村 私はまだ、よかったとも悪かったとも言えないですね。ただ、いろいろなことがあったので、経験値が貯まって自身のレベルが上がった気はします(笑)。

――開発中に苦労されたことは?

竹安 本当にゼロからのスタートだったので、開発とは直接関係ないことの苦労が多かったです。開発会社はどうやって作るのか、事務所のイスはどこで買うのか、予算はどうやって都合をつけるのかなど、すべてが手探り状態から始まりました。

木村 たとえば事務所を借りるだけでも、多くの問題が発生しました。ゲームの開発機は消費電力がとても多く、ほぼ決まりかけていた物件の電力が足りないことが判明して、また新たな物件を探したり。

竹安 事務所のことで言えば、セキュリティーの問題もありましたね。決められた一定のセキュリティー基準を満たす建物でなければ、ハードメーカーの許可が出ないんですよ。そんな条件があるんだ、と驚きました。

木村 ロックが二重でなければダメとかですね。いまはそこまできびしくないらしいですが。

竹安 人を集めるのも初めてで、契約の話からしないといけない。でも、お互いお金の話には慣れていないのでソワソワするんですよ(笑)。そんな苦労がいっぱいありましたね。

木村 最初は日本語の契約書がなかったので、自分の契約書を自分で作って、それをもとにほかのスタッフの契約書を作ったりもしました。

竹安 そんなことから振り返り始めると、こいつらいったい何をやっていたんだ、と言われちゃうかもしれませんね(笑)。

――ゲームの開発に着手する前から、苦労があったのですね。

竹安 ゼロから全部を経験しました。メディアの方からのインタビュー取材もほぼ初めてでしたし、すべてが新鮮でしたね。ゲームを作るということは、開発だけじゃないと思い知りました。

木村 楽しくもあり、苦労した点でもあります。けっきょくは何をするにも人次第なので、苦労も喜びも人次第、と改めて実感しました。

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――では、実際の開発に関してお聞きします。当初からスムーズに進んだのでしょうか?

竹安 いえ、組織作りが大きな壁でした。誰をどこに配置して、どのようなパートを担当させるか。効率が悪ければ、どのように配置を変えるか。そういった作業が中心で、苦労も多かったです。逆に、作品のコンセプトに関しては僕のほうでガッチリ決めていたので、最後までブレずに進めました。

木村 竹安がやろうとしていたことはスタンダードではなかったので、当初スタッフの多くは「!」や「?」が頭の上にいっぱい浮かんでいたと思います。でも、ときにはなだめて、ときには怒ったりして、スタッフ全員を同じベクトルに向けていかなければならない。ディレクターなので、やさしいことを言えない立場なんですよ。そんな竹安を見て、「ディレクターはたいへんだなあ」と思っていました(笑)。僕は竹安と役割分担をし、スタッフのあいだに立って、クッション役やバックアップを行う立場だったので、「ディレクターが言っているのはね……」と裏方に徹することで、指揮系統を一本化しました。

竹安 ここまで、あまり『El Shaddai(エルシャダイ)』の内容に触れていない話ばかりですけど、いいんですかね?

――(笑)それでは、クリエイターの立場としてはいかがでしたか?

竹安 イグニッション本社の社長が僕のことを全面的に信頼してくれていたので、あまり苦労はなかったですね。新しい提案を行っても、すぐに受け入れてくれました。ただ、資料を渡しても即答せず、必ず1日は持ち帰ってから返事をくれるのが印象的でした。

木村 一生懸命に理解しようとしてくれたんですよ。最初に見せたときは「?」だと思うんですが、それでもちゃんと考えてから返事をくれる。

竹安 “ネフィリム”のときは、資料を渡したつぎの日の打ち合わせで社長がネフィリムの絵を描いているんですよ。「これ、いいねえ!」とか言って(笑)。

――なるほど。続いてゲームの内容についてお聞きします。“誰でも楽しめる”という本作の大きなコンセプトは達成できたと思いますか?

竹安 はい、コンセプトは最初から最後までブレなかったので。
 ゲームのプレゼンをするときも、操作説明はほとんどしなかったですし。過去を振り返っても、ここまで説明しなくて済んだゲームは初めてですね。

木村 バグチェックのときも、操作方法に関する質問はひとつもありませんでしたからね。マニュアルを読まなくても誰にでも楽しめる、間口の広い作品になったと思います。

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●竹安氏のキャラクターデザインの秘密

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――竹安さんはキャラクターデザインも担当されていますが、『El Shaddai(エルシャダイ)』の開発中に描かれたイラストの枚数は?

竹安 僕はまずコピー用紙に描いてから、本番では画用紙などに描くスタイルなのですが、400枚詰めのコピー用紙の束をいくつか買っているので、それだけ描いたことになりますね。画用紙のイラストは100枚前後だと思います。それとは別に、『El Shaddai(エルシャダイ)』の画風を確立するために描いたクロッキーの絵が、たぶんいちばん多かった。僕は新しい画風を確立するとき、目指す画風に近しい人の作品を、2ヵ月くらいかけてずっと模写し続けるんです。そのタッチを覚えるまでですね。それがいちばんしんどかったですね。ちなみに『大神(OKAMI)』のときは、ずっと妖怪絵巻を模写していました。

――『El Shaddai(エルシャダイ)』の世界観は、これまでの作風とは異なる新しい方向性を目指したということですか?

竹安 初めて何から何まで全部を好きなようにできた画風なので、そう考えると僕の素のタッチにいちばん近いかもしれません。個人的に衝撃だったことは、僕はA3サイズの大きさでないと描けないと気づいたことですね。それまではA4サイズで描いていたのですが、腕の長さに最適なストロークがあって、僕の場合はそれがA4ではなかった。シャーペンで描いていても、A4で描くとペン先がすぐに太くなって、紙の広さが足らなくなるんですよ。でもA3だと、それほど太くは見えない。そんなところでも苦労しました。

――それでは、もっとも苦労したキャラクターは?

竹安 公開されている中ではダントツでナンナですね! リアルな子どもの参考資料が、ほとんどなくて描くのが難しかった。ルシフェルやイーノックは、資料が山ほどあるので描くのは簡単です。グラビアアイドルとか映画俳優の写真なんかはすぐ手に入りますし、種類も豊富。でも、子どものリアルな写真はぜんぜん存在しない。一時はヤバイ人みたいな感じで、子どもの写真をひたすら探していましたよ(笑)。また、中東やアジア系の子どもの写真は、広告などでよく見つかるんですが、ヨーロッパ圏の子どもの写真は本当になかった。あのときばかりは、本気で子どもが欲しいなあと思いました(笑)。だから、木村家に遊びに行ったときは、ここぞとばかりに彼の子どもをガン見したり。
 ボディーバランスの考えかたもよくわからなかったですね。子どもの頭は全体のバランス的には大きいんですけど、サイズとしては大人よりは小さいはずですよね。そのあたりを子持ちの人に聞いたりもしました。

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木村 「子どもは頭と体のバランスが悪いよね?」と聞かれたのを覚えています。それで「子どもはよく転ぶよ」と答えると、「やっぱりそうなんやなあ」とひとりで納得しているんですけど、僕には何のことだか全然わからない(笑)。

竹安 いまでも子どもはあまり描きたくないですよ。よかったら、誰か資料を送ってください(笑)。

――イーノックやルシフェルなどの主要キャラクターは、当初のデザインから描き直しているのでしょうか?

竹安 1年間に1〜2回くらい、トータルで4〜5回でしょうか。ただ、トライ&エラーは脳内でずっとやってきましたし、ジャッジするディレクターが自分自身なので、リテイクはほとんどありませんでした。そこはすごく楽でしたし、実際に描いた枚数もほかのゲームよりは少なかったと思います。

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――サウンド面についてお聞きますが、作曲担当の甲田雅人氏には、どのような経緯で依頼されたのでしょうか?

竹安 『El Shaddai(エルシャダイ)』のサウンドは、僕らが昔から仕事をいっしょにしてきたデザインウェーブ株式会社というサウンド制作会社の森敦史さんにお願いしました。そのときに彼から甲田さんを紹介されました。僕は存じ上げていなかったんですが、よくよく話を聞いてみると、じつは僕が関わってきたタイトルでサウンドを担当されている方だった(笑)。

木村 『デビル メイ クライ』とかですね。

竹安 その流れでお願いすることに決まりました。甲田さんに先日お会いしたときは、「夢を全部実現できた」と話してくれたので、よかったんじゃないでしょうか。
 たとえば映画などで、最初はメロディーだけが鳴って、盛り上がった場面ではすべての音が入っているといった演出がありますよね。それを実現するために、今回はオーケストラを多重録音しました。甲田さんは喜んでいましたね。

木村 生オケに生コーラスですからね。ちなみにコーラスは海外で録っています。曲数はかなり多くて、その点も大満足だったようです。

竹安 かなり豪華な作曲をしているので、『El Shaddai(エルシャダイ)』の曲をいいなと思ったメーカーさんは、いろんな意味で覚悟したほうがいいですよ(笑)。

――サウンドに関しては甲田氏に自由に作ってもらったのでしょうか?

竹安 ええ、でも最初の一曲だけはきびしくチェックしました。いちばん最初にテーマ曲をお願いしたんですが、オーケーを出すまでに約8ヵ月もリテイクを出し続けましたから。この1曲のためだけに、ずっと注力してもらった感じですね。1曲目が終わったあたりで、たぶん甲田さんは「こんなにきびしいチェックで進めていくのか?」とゾッとしたんじゃないでしょうか。あと僕が見せたビジュアルはリアルタッチではない、不思議な世界だったので、音を作るのはたいへんだったと思います。一時期はテクノ風の曲が上がってきた時期もありました。
 でも、方向性が固まってクオリティーが達成できれば、僕はその後のチェックはザルなんですよ(笑)。せっかく誰かといっしょに作るのであれば、自分ができないことを実現したいし、その人の個性や世界を見たい。なので、あとは自由に勝手にやってもらいます。だから、後半は楽しく作曲されていたんじゃないかな。
 
木村 当初は森さんが「このままだと終わらないよ」と、とても心配していましたね。僕は「大丈夫ですから」と言い続けたんですけど、結果的にはやはり大丈夫でした(笑)。

竹安 今後、僕と仕事をしてくださる方には、お知らせしておいたほうがいいかもしれませんね(笑)。最初はキツいけど、後半は楽になりますから。

――最終的に作曲された曲数は?

木村 5秒程度の短い曲やアレンジ曲を含めると、150曲くらいですかね。ボツになったものを含めると、もっと曲数は多くなります。このうち、オーケストラで録音したのは約20曲です。

――使いたかったけど場面と合わずにボツになった曲もありそうですね。

木村 じつは、そういったゲーム中で使われていないアレンジ曲などは、公式サイトで公開する動画で使用するかもしれません。ユーザーの皆さんには注目してもらいたいですね。

 ※後編はこちら

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