植田佳奈:声だけでお芝居ができる声優の可能性に惹かれて【エンジェル・ボイス アゲイン】
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ファミ通Xbox(毎月30日発売)の人気連載コーナー“エンジェル・ボイス アゲイン”がファミ通.comに出張。誌面の都合で、本誌では泣く泣くカットせざるを得なかった声優さんの貴重なお話の数々を完全網羅。旬の声優さんが語る“声のお仕事”に対する思いとは? 本日のゲストは、植田佳奈さんです(不定期連載第30回)。
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本日のゲスト:植田佳奈(うえだかな)さん
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●仕事を休んだことで逆にうまくまわり始め……
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――まずは、声優を目指すようになったきっかけから教えてください。
植田 子どものころからずっと宝塚に行きたかったのですが、身長制限があって行けなかったんですよ。高校3年間は、身長が伸びるのをただひたすら待っていたのですが、けっきょくダメで。それで、自分のやりたいことができる道はないか……ということで頭に浮かんだのが声優でした。もともとアニメやゲームが好きだったということもあるのですが、学生のときにテーブルトークRPGのラジオドラマをやらせていただいた経験が大きいですね。「こんなに声だけでお芝居ができる仕事があるんだ」って強く印象に残っていたんです。それで、たまたま大学1年生の冬に声優雑誌でオーディションを実施しているのを見つけて、応募したところグランプリをいただいたんです。実際のところ、受かるとは思っていなかったんです。そのころすでに「声優を一生の仕事にしたい」とは思っていましたが、とりあえず感触でも探るつもりで応募したら決まってしまって。
――ああ、そこから声優への道が開けたのですね?
植田 そのころは神戸の大学に通っていたのですが、大学2年生のときは、仕事のときだけ大阪に通っていました。3年になってからは逆に東京を拠点に神戸の学校に通う日々で……。
――それは、たいへんな日々ですね。
植田 たいへんでしたね。どれだけ働いても新幹線代に消えてしまう感じでした。声優のお仕事だけだと新幹線代を賄えないので、夜中にアルバイトをしたりしたくらいです。
――ものすごいがんばり屋さんですね。
植田 いま振り返ると、自分でもあのころはよくかんがったなあーと思います。学生と声優、そして夜アルバイトという3つの掛け持ちで。当時のことは、あまりに忙しくて、じつはよく覚えていないんですよ。ただ、意地だけに突き動かされていました。私、ものごとを途中でやめるのがすごくイヤで、大学中退とかは考えられなかったんです。でも、声優の道も諦めたくないし。「この仕事をやりませんか?」と言われて断ったらチャンスは2度とこないかもしれないので、どれも逃したくなかったんです。
――いずれにせよ、怒涛のような日々が始まったわけですね。
植田 というわけでもないんです。デビューして1年くらいはものすごく忙しかったのですが、2年くらい過ぎたら一気に仕事量が減って、もう1度、いちから養成所に通い直したんです。デビューが決まったときから事務所に所属しながら養成所に通っていたのですが、最初の1〜2年はやっぱり忙しくて通えない時期もあったんですね。仕事が落ち着いたこともあり、「もっとしっかり勉強したいな」と思って、いちから養成所に通い出しました。
――それは、勉強熱心ですね。
植田 みんなデビューすると養成所はやめるのですが、やっぱり自信が持てなくて。ぜんせんスキルのないところからこの道に入ったので、どれだけ仕事をしても“自分がやっている”という確信が持てなかったんです。それで、いつまで経っても養成所をやめられず、けっきょく4年間通いました。5年目に「そろそろ辞めろ」と言われて、それで辞めたのですが(笑)。
――なるほど。いつくらいから手応えが?
植田 そうですねえ。デビューして5〜6年経ったころくらいでしょうか。きっかけは――がんばり過ぎて倒れたことがあったんですよ。体調を崩して。ちょうど自分がメインの回にアフレコを休んでしまって、そのときに「あ、もう終わりかもしれない」って思ったんですね。こんな新人が仕事を飛ばして、つぎの仕事なんかこないだろうなって思ったときに、ふと諦めがついたんです。だったら、残された仕事をしっかりとやって、それで仕事がこなければやめてもいいかなって思って、ふと力が抜けたときに、全部がうまく回りだしたんですね。
――それからは、どんなふうに?
植田 力が抜けたら、そんなにひどく緊張しなくなりました。あと、「これで先輩とかとも、もう会えないな……」と思ったら、いろいろなことを教えてもらおうと思って、まわりの先輩にいろいろと話しかけるようになって……。アフレコでも、いままでやらなかったようなことに挑戦して、「ダメだったら、終わればいいや」と思って。いろんな意味で弾けることができるようになったんですね。
――人生何が幸いするか、わからないですね。
植田 そうなんです。何が吉とでるかわからない、不思議ですね。
●オンラインゲームでゲームの楽しさに目覚めて……
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――植田さんといえば、声優界でも屈指のゲーム好きとして知られていますが、ゲームはいつくらいから?
植田 小学生のころから家にファミコンはあって、そのころからゲームは遊んでいたと思うのですが、すごくハマりだしたのは、それこそ東京に出てきてからじゃないかなと思います。
――ハマるきっかけは?
植田 オンラインゲームを遊んだんですよ。『ラグナロクオンライン』だったのですが。それですごいハマりましたね。とにかく自由度の高さが魅力でした。オンラインゲームはアップデートもされるので、やることも尽きないですし。オンラインゲームだと、対話するのも人なら戦うのも人だったりするので、それが楽しいということもありました。そこからオンラインで遊べるゲームにすごくハマったんですよね。『Halo(ヘイロー)』シリーズにしてもそうですが、誰かといっしょに同じ時間にゲームができるというのがすごくおもしろくて。
――『Halo(ヘイロー)』もオンラインありきだったんですね。
植田 はい。私は『3』から入ったんですよ。『3』を遊んで、『1』からストーリーを追いかけ直したんです(笑)。
――植田さんと『Halo(ヘイロー)』というのも、少しミスマッチな感じもしますね。
植田 よく言われます(笑)。『Halo(ヘイロー)』シリーズの魅力はなんでしょうね。みんなの得意分野を活かせるというか、私、“キャプチャー・ザ・フラッグ”が大好きで。あれって、みんなが強くなくてもよくて、作戦で勝てるじゃないですか。ジープをみんなで乗り回したりとか、ああいうのが大好きです。
――やはりゲームの声などは積極的にやってみたいですか?
植田 そうですね。ゲームの声はやってみたいです。じつは、『Halo(ヘイロー)』シリーズも、『Halo(ヘイロー):ODST』で出させてもらっていて、ODSTの隊員が集めるレコーダーの“セイディー”の役を担当させていただきました。
――あら。それはどのような縁で?
植田 たまたまゲーム友だちの方が、ディレクターを担当されていたんですね。で、『Halo(ヘイロー)』シリーズでは特殊な収録の仕方をするらしいんです。向こうの役者さんの声を聞いて、そのままあてる……という感じ。向こうの役者さんが10秒で演じているから、日本語でも10秒でやらないといけなくて。日本語と英語は長さが違いますが、なんとなくノリで。アフレコの段階では、イラストもないし、全体のストーリーも判然としないという状態なんですね。
――それは、役柄を膨らませるのが難しいかもしれないですね。
植田 そうなんです。かなりゲームの世界観に詳しくないと入り込めないというのがあって、女性で『Halo(ヘイロー)』をやっているのは、私くらいしか思いつかない……ということで、呼んでいただきました。
――『Halo(ヘイロー)』に対する理解がないとできない役だったんですね。まさに趣味が実益になった感じですね。
植田 はい。うれしかったです。『Halo(ヘイロー):ODST』すごいやりましたもん。
――(笑)。ほかに「このゲームの声はやってみたい」というのはありますか?
植田 そうですねえ……。昔は『ファイナルファンタジー』とかもやってみたかったのですが、逆に自分が声を入れると遊べなくなってしまうかもしれませんね。あと、自分がやって「あいつの声は合わない」と言われたら、かなりショックだろうし(笑)。
――そんなことはないですよ(笑)。
植田 あと、『Fable(フェイブル)』のキャラとかはやりたいですね。英雄にもなれるし、悪役にもなれるということで、自分の声だと汎用性があっていいかもしれないです。じつは、最近『Fable III(フェイブル III)』をずっと遊んでいまして、いま2周半くらいなんです。いま実績は半分くらいしかあいていないのですが、3周すればたぶんあくと思うんですよね。
――本当にゲームがお好きなんだなあ。ところで、最近趣味として取り組んでいて、「こんなところが仕事に活かされています」といったようなものはありますか?
植田 最近、殺陣をやっているんですよ。時代劇の殺陣で、剣やなぎなた、槍などもやるのですが、それをやり始めてから、気合の入れかたや声の出しかたが変わった気がします。
――殺陣を始めたきっかけは何だったのですか?
植田 テレビで『暴れん坊将軍』を見ていて、あまりに松平健さんがかっこよかったんですね。それで、調べてみたところ、意外と近くで時代劇の講座をやっているところを見つけまして。それで習いに行っているんです。
――けっこうアグレッシブですね。
植田 そうなんです。なんとなく、試してみよう!って思っちゃうんですよ。
――それがアフレコにも活かされる?
植田 そうですね。やるのとやらないのとではけっこう違うと思いますよ。殺陣を習うまでは、日本刀ってあんなに長いとは思わなかったし、どれだけ体力を必要とする作業かということもわかりましたし。
●今後はいろいろなことに挑戦していきたい
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――最新作は、オリジナルアニメDVD『スペランカー先生』とのことですが、せっかくの機会なので、『スペランカー先生』のことも聞かせてください。同作では女性教員役を担当されているとのことですが、演じるうえで心がけたのはどのような点ですか?
植田 できるだけニュートラルに演じるようにしました。視聴者目線というか、皆さんが思い描くイメージ通りの“女性教員”という感じです。明るすぎず、暗すぎず、あまり色をつけ過ぎないで、穏やかな女性教員を心がけました。あまりキャラが強く出すぎないようにするというか。
――逆に難しそうですね。
植田 そうですね。でも、私は昔からふつうの女の子役がけっこう多いんですよ。アニメって奇抜なキャラが多いので、ふつうの役を演じる機会は少ないように思うのですが、むしろ私の場合はふつうのキャラが意外と多いんです。
――あら、なぜでしょうね?
植田 なぜでしょうね。ある意味個性が乏しいのかしら(笑)。「平凡な声が出せる役者さんだね」というのは、よく言われます。
――それは、逆に得難い資質なのかもしれないですね。
植田 私、いまの事務所に入るときに「主役をやるには毒があり過ぎて、サブキャラで目立つには華のない地味な声」って言われたんですよ(笑)。最初にそんなことを言われて「どうしよう」って思いました(笑)。
――それでどうされたのですか?
植田 地味な部分は極端に地味にして、誰にでも入っていけるような主人公キャラを演じるときは、自分のカラーを出しすぎないようにしようと心がけました。逆に“毒”のあるキャラを演じるときは、その“毒”の部分を伸ばそうと思って、方言などでアクセントをつけようと思ったんです。『スペランカー先生』の女性教員役も、周囲を活かす感じで、ニュートラルに演じた感じです。
――オリジナルゲームの体験は?
植田 残念ながら遊んでいないんですよ。でも、ゲーム好きのあいだでは、レトロゲームの話題になると必ず出てくるのが『スペランカー』。その『スペランカー』を、どうアニメにするんだろう……って最初は思っていたんです。でも、実際に台本を見せていただいたら、ギャグ満載で、おもしろおかしくストーリーが展開されるのが、愛らしいなと思いました。で、収録時にプレイステーション3版『みんなでスペランカー』をみんなで遊んだのですが、難しかったです。私はけっきょく2ステージ目までしか行けなくて、もうちょっとやり込みたいと思っています。
――『スペランカー先生』ではエンディングテーマも担当されているとのことですが、聴きどころは?
植田 昔のゲームっぽい空気を醸し出しつつ、キメキメのところにアクセントを置いたり……と、なつかしい感じに仕上がっています。一方で、いま風のテイストを取り入れたりもしていて、聴き応え満点ですよ。私の中では、アニメをご覧になった方が最後にほっとできるような楽曲に仕上がっているのではないかと。なんとなく口づさんでしまうような楽曲になっています。
――『スペランカー先生』の見どころなどを教えてください。
植田 スペランカー先生はもちろんなのですが、周りにもおもしろいキャラがたくさんいて、そのキャラたちが先生をおもしろおかしく茶化すんですね。そのやりとりに注目していただけると、さらにすごく楽しめるのではないかと思います。
『スペランカー先生』
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――最後に今後の豊富などを。
植田 今年はいろいろと新しいことに挑戦したい年だと思っているんです。お仕事もそうだし、ゲームというか、プライベートもそう。いままでに取り組んでいなかったジャンルに挑戦したいなと思っています。せっかく殺陣をやっているので、それを活かせる仕事もしてみたいですし。
――なるほど。ゲームでも新しい取り組みを?
植田 はい。『Halo(ヘイロー)』シリーズをずっと遊んでいるのですが、FPS(一人称視点シューティング)をもっと深めていきたいなあというのがあります。
――それは、ゲームファンがしびれるようなコメントだなあ(笑)。具体的には何を?
植田 片っ端からです(笑)。せっかく買ったのに途中で止まっているゲームも多いので、とにかく遊べるだけ遊んでみたいなと思っています。
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