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『ドンキーコング リターンズ』でひと皮むけたレトロスタジオ【GDC 2011】

ゲーム
日本の任天堂とテキサスにあるレトロスタジオが共同で手掛けた『ドンキーコング リターンズ』。開発を通じて、レトロスタジオのスタッフはさまざまなことに気付かされたようだ。

●開発は任天堂によるパワフルなレッスン

 2011年2月28日〜3月4日、アメリカ、サンフランシスコのモスコーニセンターにて、GDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)2011が開催。世界中のゲームクリエイターによる、世界最大規模の技術交流カンファレンスの模様を、ファミ通.comでは総力リポートでお届けする。

 日本では2010年12月に発売され、スマッシュヒットを記録したWii用ソフト『ドンキーコング リターンズ』(海外でのタイトル名は『Donkey Kong Country Returns』)。同作は日本の任天堂と、アメリカ・テキサス州オースティンにある開発会社レトロスタジオが共同で手掛けている。会期4日目のセッション“DONKEY KONG: Swinging Across Oceans”では、任天堂の田邊賢輔氏とレトロスタジオのスタッフより、作品完成までの道のりが語られた。

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 本題へ入る前に、まずレトロスタジオについて簡単に説明しておく。同社は1998年に設立。代表作にゲームキューブ、Wiiの『メトロイドプライム』シリーズがあり、任天堂との関わりは長い。しかし、『メトロイド』シリーズはどちらかと言えばダークな雰囲気の作品で、明るい南国ムードの『ドンキーコング』とは方向性が正反対。そんな彼らが、なぜ『ドンキーコング リターンズ』を手掛けることになったのか? 田邊氏によれば、すべての始まりは2004年だという。

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 当時『メトロイドプライム2』の仕事でレトロスタジオに出張していた田邊氏はそこで、今回のセッションにも登壇しているMichael Kelbaugh氏から「『ドンキーコング』シリーズを自社で開発できないか」と持ち掛けられる。そのときはけっきょく具体的な話にはならなかったのだが、2008年に今度は宮本茂氏から「『ドンキーコング』を作りたいのだが、どこかいいところはないか?」という相談を受けるのだ。そしてこの瞬間、田邊氏は4年前にMichael氏と交わした会話を思い出す。「どこかひとつでもタイミングがどこか違っていたら、存在しなかったタイトルですね」と偶然が重なった『ドンキーコング リターンズ』の始動を振り返った。

 本作はレトロスタジオが望んで開発を行うことになったわけだが、プロジェクトはスタート段階から数多くの問題を抱えることになる。上でも述べたが、同社は『ドンキーコング リターンズ』とは正反対の雰囲気を持つ『メトロイドプライム』シリーズを長年にわたり手掛けてきてきた。また両シリーズはゲームジャンルもまったく別物。FPS(『メトロイドプライム』)から横スクロールアクション(『ドンキーコング リターンズ』)という転換で、レトロスタジオのスタッフたちはノウハウをゼロから学び直すことになる。かなり気の遠くなる話だが、幸運なことに彼らには心強い味方がいた。宮本茂氏だ。

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 ある日レトロスタジオを訪れた宮本氏は、スタッフに対して直々にアドバイスを贈る。一例として挙げられたのは、ゲームのリズムについて。開発中の作品を触った宮本氏はどこかしっくりこないところがあったようで、机を叩いてさまざまな動きのタイミングを伝えたそうだ。そして、それに沿って設定を調整したところ、プレイ感覚が一気によくなったのだという。また宮本氏は、ドンキーをひたすら左右に動かしてその挙動をチェック。10分ほどそれを続けた同氏は、地面を蹴り散らすようなアクションを加えてみては? というアイデアを提案する。スタッフの中にはクビを傾げる者もいたそうだが、いざやってみると作品のトーンがガラリと変わったというから驚き。Michael氏は宮本氏とのミーティングについて「非常におもしろいプロセスでした」と感想を語った。

 レトロスタジオのメンバーからは宮本氏との出会い以外にもうひとつ、開発を続ける動機付けになったできごとが語られた。それは、E3 2010での初お披露目だ。スタッフたちは開発が長期化するにつれ、“誰かを楽しませるために作っている”ということを忘れがちになってしまったという。これは本作に限った話ではなく、ゲーム開発の現場ではつねに起こりうることだと思われる。そんな状態の中で迎えた、E3 2010という大舞台でのお披露目。楽しそうに遊ぶ人たちの姿を見てスタッフは勇気づけられ、落ちかけていた生産性は持ち返し、完成に向けて突き進むことができるようになったのだ。また、プレイアブル出展で外部の人間が作品を触ることによって、新たな課題が見えることもある。遊ぶ人を見ることで学ぶこともあるというわけだ。

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 セッションの中では、『ドンキーコング リターンズ』を開発するうえで、超えるのに苦労したハードルについても触れられた。それは、田邊氏ら任天堂側から出されるリクエストのボリューム、そしてそれに応える形でスタッフから出てくる“アイデアの津波”だ。それらに柔軟に対応する中で、ときには“やり直す”という選択も取ったというちなみに田邊氏から出たリクエストのひとつが、シリーズ初となるマルチプレイの搭載。じつはこのマルチプレイ、宮本氏は搭載に乗り気でなく「ひとり用に集中しろ」と話していたという。しかし、田邊氏は過去作品との差別化や『New スーパーマリオブラザーズ Wii』での4人プレイの成功を意識するにつれ「もうやるしかないと思った」のだ。結果的にはレトロスタジオのメンバーも「非常にユニークなアプローチだった」と自画自賛する仕上がりになったわけだが、宮本氏の考えに逆らったということで最初はかなり驚いたとという。

 この話に関連する点として、田邊氏から語られた任天堂ならではのゲーム開発スタイルも紹介しよう。ゲームに限らず、一般的に企業で何か新しいものを作るときは、まず企画書を出して、それが通って初めて具体的な形を持つことになる。しかし、任天堂は企画書の部分をほぼスルーしてしまう。最初にプレイの核となる部分のプロトタイプを作り、納得がいくまでブラッシュアップし続ける。そして「世界中の人に楽しんでもらえる!」と確信した時点で、プロジェクトは動き出すのだ。レトロスタジオも初めて任天堂と仕事をしたときは、「分厚い企画書をもらった」と田邊氏が振り返るように一般的なやりかたで物作りをしていたが、長い付き合いの中で徐々に任天堂流にシフト。いまではすっかりその手法が浸透しているそうだ。ちなみに田邊氏いわく、Next Level Games、モンスターゲームスといった開発スタジオも任天堂の手法を取り入れているとのこと。

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 レトロスタジオのMichael氏はセッションの最後で、『ドンキーコング リターンズ』を手掛けるまで「横スクロールアクションを作るのは簡単なことだと思っていた」と告白。しかし、いざやってみると、シンプルゆえに完璧さを求めらる点や、宮本氏の職人的なこだわりなどを通じて、その認識を改めさせられたと話す。また、ほかのメンバーからも同作の開発は「パワフルなレッスンになった」という意見も聞かれた。新たなノウハウを得た同スタジオがつぎにどのようなタイトルを手掛けてくれるのか楽しみだ。

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▲いまレトロスタジオでは新たな人材も募集中だ。

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