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『かまいたちの夜×3』について我孫子武丸が語る!

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●シナリオを担当する我孫子武丸氏が語る!
 

 プレイステーション2で2006年7月に発売が予定されている、サウンドノベル『かまいたちの夜×3 三日月島事件の真相』。『かまいたちの夜』、『かまいたちの夜2 〜監獄島のわらべ唄〜』と続いてきたシリーズの最新作であり、そして最終作ともなる作品だ。本作は、前2作で描かれた物語の真相が明らかになるという内容。そのため、『かまいたちの夜』、『かまいたちの夜2 〜監獄島のわらべ唄〜』の本編シナリオが収録されているぞ。
 このシリーズのシナリオを担当するのは、小説家の我孫子武丸氏。『かまいたちの夜』では、シナリオを、『かまいたちの夜2 〜監獄島のわらべ唄〜』ではサブシナリオの執筆と、全体のシナリオ監修を担当している。そんな我孫子氏に、週刊ファミ通6月9日・16日合併号(5月26日発売)では本作の内容についてインタビューを行ったぞ。しかし、誌面の都合上掲載しきれなかった話題も多数ある。「それを埋もれさせるのは惜しい!」ということで、ファミ通.comでは、インタビューで伺ったさまざまな話題を大公開する!!
 

かまいたちの夜×3

我孫子武丸
'89年に『8の殺人』でデビュー。コミカルタッチの作品や、重厚でシリアスな作品まで、幅広く手掛ける。『かまいたちの夜』ではシナリオ担当、『かまいたちの夜2』ではサブシナリオと全体のシナリオ監修を務める。


――『かまいたちの夜』では脚本を担当されていて、『かまいたちの夜2 〜監獄島のわらべ唄〜』ではサブシナリオの執筆と、全体のシナリオの監修をされていらっしゃいました。今回の『かまいたちの夜×3 三日月島事件の真相』ではどんなことをされているのでしょうか?
我孫子武丸(以下、我孫子) シナリオを担当しています。ただ今回はまた、どちらの作品とも違います。チュンソフトの落合さん(※1)から、こういう感じでやりたいという大枠のプロットをいただきまして、それを全部自分の文章で書くという、これまでとは違った形ですね。ゲーム自体も構成そのものが変わっていますし、ある種ゲーム的な要素が強くなっているから、ぜんぜん違う。
――たとえば、トリックなどといったものが最初からあったということですか?
我孫子 企画段階で打ち合わせをして、「もっとこうしたほうが」みたいな話をして決めています。だから最初から落合さんと二人三脚でやっている感じですね。
――落合さんだけが考えたものを書き直しているというのではなくて、ずっといっしょにやっていると。
我孫子 そうですね。ホントに合作みたいなところがあるかと思います。
――システムが今回、複数の主人公の視点から物語を見ていくというものになっています。そうなったことで、整合性をあわせるのがたいへんだったのでは?
我孫子 そこまでいくまえの段階のところで、たいへんなことになっているんです。そもそも最初の段階では、わりと、こぢんまりとしたシナリオになる予定だったんですよ。だから『2』からそんなに間を空けずにサクッと出して、追加シナリオとして楽しんでもらえればっていう話だったんですけども、書いているうちにどんどんどんどんボリュームが増えて、オマケって言えるレベルの分量じゃないなぁっていうことになってきて(笑)。


かまいたちの夜×3

かまいたちの夜×3

 

※1:落合信也氏。チュンソフト所属。本作ではディレクターを務める


――『1』と『2』をやった方は、すでに話が完結していると感じていると思うんですが、『×3』で、その物語を膨らませる意味で苦労した部分というのは?
我孫子 膨らませるというよりは……。
――もともとあったものなんですか?
我孫子 そんなことはないです。そもそも『2』自体が『1』とはかけ離れた話ですから。『2』のベースになる部分を書かれたのは田中啓文さんですし、それも別にこちらからこうしよう、ああしようということを言うまえに、まず田中さんのベースを見て、みんなでいじっていったっていう感じなんです。だからホントに玉突きみたいな感じですよね。僕が最初『1』で書いたものに対して、田中さんが新たな物語を出す。さらに今度は、それを落合さんが"もっとこうしたい"とつないでいく。だからひとつひとつ、そこで完結というつもりではやっていたんですけどね。

 

かまいたちの夜×3


――今回、我孫子さんのほうから、「もっと書きたい」とおっしゃられてたそうですが?
我孫子 はい(笑)。書きたいというか、『2』はほとんど分量的には書いていませんでしたから。不思議なことに、『1』がすごく好きだという人の反応が、『2』に関してはあまりよくなかった。
――そうですね。
我孫子 『2』のほうがおもしろいという人もたくさんいるんですが、『1』を期待した人にとっては違うものが出てきたという感じだったみたいなんですよね。僕としては、同じことはしたくないから、別の血を入れて新しいものを届けたいと思ったんです。そうして完成したものが『2』でした。それで今回は、自分も書くけども、『1』を書いたようにはぜんぜんならない。だからまた別のおもしろさが出せるのではないかと。
――『1』はわりと本格的なミステリーで、『2』は和風のホラーのテイストを入れた作品でした。今回のテイストは?
我孫子 テイスト的には戻ってはいると思いますね。ゲーム性は『1』よりも高いですし、それはおもに謎解きに関するミステリー的な部分なので。僕は『1』を出したときは、べつにミステリーのゲームだと思っていたわけじゃないんですよ。つまり、最初のシナリオが確かにミステリーのシナリオだけれども、そこから"いろんな話になるよ"ということに重点があったんです。でも、やはり最初のシナリオのインパクトが強かったみたいですね。『2』も最初はミステリーなんですよ。ホラー要素が強い作品ではありますが。ただ、「もっとミステリーしてほしかった」という人がいたのも確かなんですよね。ディレクターの落合さんもそうなんですが、『1』を喜んでくれた人の『2』に対する不満に、もう一度応えたいというところはあります。

――サブシナリオを楽しみにしているファンも多いと思いますが、今回は?
我孫子 サブシナリオという言いかたとは、ちょっと違うとは思うんです。いままでとは、とにかくゲームの形態が相当違いますので。"複数主人公"というシステム自体でだいたいわかっていただけるかとは思いますが。
――これまでとは、別のカタチになっている?
我孫子 基本的にはいままでツリー状に、選択肢を選んでいけば話が変わっていくという形でしたけど、今回はひとつのシチュエーションに対して、複数の主人公の視点からどういう風な物語が見えていくかということなので。…………まぁ、オマケももちろん。
――複数主人公の話題が出たので、聞いてみたいのですが、シナリオを書いていて楽しいキャラクターというのはいるんですか。
我孫子 どれが楽しいというのではないんですけども、気分転換できるというのはありますね。いままでずっとシリーズを通して、透の視点でしたよね。透というのは、言ってみたら、いままではユーザーにすごく近い存在だったわけですよ。それを別の人から見たらどんな風に見えているのかとか。あとは、いままで女性の方もたくさんやっていただいていると思うんですけど、女性のユーザーが、女性のキャラクターでプレイしたらどうなんだろうとかね。そういう意味では、いろんなキャラクターの視点で描けるというのも、気分転換になります。いままであまり内面が描かれなかったほかの人物の内面を描いたりもしていますし。「こんなヤツだと思わなかった」と思う人もいるかもしれないですけど(笑)。

――『1』と『2』の製作中の秘話といったものも、ぜひ聞かせていただければ。
我孫子 そうですねぇ……。『2』のときに"ラブテスター"というものを入れたんですね。ふたりでプレイして、相性を占ってもらおうというものだったんですけども、そういうシステムだからこそ、プレイヤーがふたりいないと遊べないんですよ。だから、それをひとりでできるようにしたいねっていう話をしていたんです。キャラクターを制作側で用意して。みどりさんだとか、夏美だとか。キャラごとにそれぞれ選ぶ選択肢がある程度は決まっていて、それをプレイヤーは予測しつつ、選べばいいじゃんって言っていたんですけど……チュンソフトさんが入れてくれなかったんですよ(笑)。あとは『2』をやっていたときに、インターネットで"かまネット"というサイトを作っていたんです。そこで"ラブテスターオンライン"(※2)というのをやっていたんですよね、あれを大々的に広げて、相性が最高までいったら本物のメールアドレスを交換できるみたいなシステムにできないのか、って言っていたんですけど、それもやってくれませんでしたね(笑)。
――(笑)。ほかに何かありましたか?
我孫子 『2』のシナリオを書いたときに、ピンクのシナリオ扱いで、ラブホテルに行ったりする、エッチなシナリオを書いていたんですよ。それで「どこまで書いていいのかな?」って聞いたら、「とりあえず書くだけ書いてみてください」って言うんで、行くところまで行って相当書いたら、ほとんど削られて(笑)。ぜんぜん使ってもらえなかったんですよ。聞いてると、どんどん規制がきびしくなっているということなんですね。だから、ああいうのはコンシューマーでは無理だから、ぜひオンライン上でなんとかできないもんかな、とは思っていたんですけどね。


※2:オンライン上で、会員登録した人が用意された部屋に入り、そこで部屋にいる人の合意を得て相性診断をするというもの。結果がいいと相手とメッセージの交換をすることができた

 

――『かまいたち』の仕事をされていて、小説を書くときとゲームのシナリオを書くときで、違ったりはするんですか?
我孫子 『1』のときは違ったんですよ。スーパーファミコンだったので、文字数も少ないし、漢字もあんまり難しい字を書くと、ルビ(※3)がふれる仕様じゃなかったので、だいぶ平易に書いて。なおかつ、一画面いっぱいに文章がくると見にくいじゃないですか。しかも文章が終わってなくて、ページをまたぐような文章だと読みづらいから、書けないので、短めの文章にしたりしていました。最近では、だいぶ文字もきれいになって、画面の中に表示できる文字も多くなったので、ほとんど気にしていないですね。
――いつもどおりやっている感じであると。
我孫子 スーパーファミコンのときは17文字ぐらいだったんですね、横の文字数が。17文字×9行だったかな。
――少ないですねぇ(笑)。
我孫子 だから、17文字×9行の状態に自分でして書いていたんですよ。その状態にしないと、どこでページをまたぐのかがわからなかったですから。いまはまったくそういうことは考えずにやっています。
 

※3:読みがな

 

――『かまいたち』のお仕事をされたとき、まわりはどんな反応でした?
我孫子 まわりには基本的に、小説を読んでいる人が多いので、そんなに印象はないんですけど。小説などを読まないという人でも、『かまいたち』は知っている、という人は多いですよね。
――『かまいたち』で我孫子さんの名前を覚えたと。
我孫子 名前までは覚えていないんだけど(笑)、『かまいたち』は知っている、やったことがあるとかね。
――まわりの小説を書かれるお仲間の方で、ゲームをプレイされた方っていうのはいらっしゃるんですか?
我孫子 もちろん、たくさんいます。
――そういった方の反応というのは? うらやましいとか。
我孫子 うらやましい……。どうなんでしょう? たいへんそうだねぇ、ぐらいかな(笑)。あまりやりたいっていうことを聞かないですから。小説書く人は"小説を書ければいい"と思っているようで。
――最近、本業のほうはどうですか?
我孫子 最近、忙しくて。小説だけじゃないんですけども、小説の連載と、マンガの原作の連載とがありまして、わりと仕事しているほうなんですけどね、自分としては(笑)。

かまいたちの夜×3

かまいたちの夜×3

 

――本作のタイトルを聞いたときは、どう思われました?
我孫子 僕が聞いた話によると、あまりダークなイメージはよろしくないと。もともと『2』が『監獄島のわらべ唄』というサブタイトルがついていて、言ってみれば横溝正史みたいなイメージだった。だからそういう路線で行く予定だったと思うんですね、タイトルは。もともと『外伝』って呼んでいたんですよ、内輪では。オマケみたいな、追加シナリオみたいな感じの、ボリュームの小さいものをサクッと出す予定だったので。それがどんどん大きくなっちゃって、外伝とか追加シナリオというレベルじゃないなと。だから『3』と言ってもいいんだろうけど、単なる『3』じゃなくて、これまでの『1』のミステリー篇と『2』のミステリー篇とをパッケージして、いままでまったくやったことのない人でも『1』から続けてやれば、全部わかるようになっている。3つのシナリオが入っているという意味も含めて、単なる『3』じゃなくて『×3』、3倍っていう風に言いたかったんだと思います。
――今回の作品が完結篇と言われているんですけども、「完結したな」と、思われていますか?
我孫子 毎回思うんで(笑)。毎回、「もうない」と思っているんですけどね。
――ユーザーさんは完結篇って言われると、寂しい思いもあると思うですが。
我孫子 できればね、何か新しいことをしたいと思いますので。以前から別の企画をやりたいという話は、ずーっとしていたりもするので。どうしても『2』、『3』、『4』……『12』とか(笑)、続いていきがちですけど、できれば新しいものをやりたいと思っています。
――それはサウンドノベルというカタチで。
我孫子 基本的にはサウンドノベルの枠内でと思っています。というのは、僕が文字しか書けないので。絵も描けないですし。だから文字を使った中で、どんなことができるのかなぁと。できればゲームをプレイされた方が小説を読むようにもなってもらいたいという思いもありますし。ぜんぜん関係のないことだったら、僕よりもっと適任の人がいると思いますからね。
――我孫子さんはゲーム好きで知られていますが、「こういうゲームにチャレンジしてみたい」というものはありますか?
我孫子 これ、というのは思いつかないですけど、できれば企画段階から参加したいですよね。コンセプトの時点で何か言えるような。
――ちなみに我孫子さんは、ゲームのジャンルはどんなものがお好きなんですか?
我孫子 もともとはね、なんでもやっていたんですけど、最近とにかくまとまった時間を余裕を持って作れないので、RPGとかからはどんどん離れちゃいまして。RPGでも『シレン』(※4)的なものであればチョコチョコってやれるんですけども、なかなか時間をかけてというわけにはいかないんですよね。最後にやったのは『金八先生』(※5)かな。買うのはいろいろと調べて買っているんですけどね。
――では情報はけっこう仕入れていらっしゃる。
我孫子 ある程度、これはちょっとやってみようというのだけ絞ってはいます。最近はずっと『えいご漬け』(※6)やっていたりとか(笑)。
――あ、ニンテンドーDSをお持ちなんですね(笑)。
我孫子 持っています。『えいご漬け』のまえはずっと『バンドブラザーズ』(※7)をやっていて(笑)。オプションカートリッジ(※8)というのまで買って。
――ホントですか! すごいやり込まれていますね。
我孫子 ほかにやりたいものがなかったんで。
――実際にニンテンドーDSはどうですか?
我孫子 意外にって言うとアレですけど、いいですよね。ニンテンドーDSの以前から、ついゲームボーイアドバンスをやっていたんです。なかなかプレイステーション2とか、立ち上げるのが面倒で。ゲームボーイアドバンス、とくにチュンさんからいただいた『ネットサル』(※9)とか、ほんとにスイッチつけて、しばらくほったらかしで観てて、テレビ見ながらでもできるっていうね、あんなゲームいままでなかったなっていう。そういうちょっとだけやって、また仕事に戻るみたいなスタイルというのは、自分だけではなくて、世間もそうなりつつあるのかなと思いますね。だからニンテンドーDSのひとり勝ちみたいな状態っていうのはある程度当然なのかなと。
――ニンテンドーDSでは、ほかにどんな作品をやられているんですか?
我孫子 『ワリオ』(※10)とか『きみのためなら死ねる』(※11)とかその辺の系統がいいですよね、いまは(笑)。

※4:『風来のシレン』シリーズ。チュンソフトを代表する作品のひとつで、自動生成のダンジョンに挑むRPG ※5:『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!』。テレビドラマ『3年B組金八先生』を題材に、金八先生の代わりに3年B組を受け持ち、生徒たちを導いていくドラマが描かれるアドベンチャーゲーム ※6:ニンテンドーDS用ソフト『英語が苦手な人のDSトレーニング えいご漬け』。ニンテンドーDSから聞こえてくる英語を聞き取り、タッチペンで書き取ることで英語の単語や文法を覚えていくゲーム ※7:ニンテンドーDS用ソフト『大合奏! バンドブラザーズ』。画面に表示される楽譜に従ってボタンを押すことで、有名曲を演奏できる音楽アクションゲーム ※8:リクエストの多かった楽曲20曲+2曲と、任天堂の名曲9曲が収録されたカートリッジ ※9:ゲームボーイアドバンス用ソフト『シレン・モンスターズ NETSAL』。『シレン』シリーズでおなじみのモンスターを育成し、フットサルで対決する育成シミュレーションゲーム ※10:ニンテンドーDS用ソフト『さわるメイドインワリオ』。一瞬で終わるミニゲームをつぎつぎに遊んでいくバラエティーアクションゲーム ※11:ニンテンドーDS用ソフト。女性の気を引くために行うパフォーマンスや、危機的状況をミニゲーム形式で楽しんでいくバラエティーアクションゲーム

 

――それでは話を『×3』に戻しますが、ファンの方にどんな風に楽しんでほしいですか。
我孫子 基本的には、『2』は『2』で自信作なんですけども、それは自分で書かずに、言ってみれば人が書いたものを見て「おもしろいおもしろい」って言っていたような感じなんです。だから『1』がいいって言う人は、もしかすると僕の文章のほうが肌に合っていたのかもしれないですし、もっとミステリーっぽいものがやりたかったというのかもしれないですし。そういう人には、ぜひ期待してもらいたいですね。また、ちゃんと話は『2』からつながっているので、『2』が好きだった人も、「あれがこうなるのか」みたいな楽しみはあると思います。
――衝撃のラストが待っていたりするんですか?
我孫子 衝撃というよりね、いい話なんじゃないかと(笑)。
 

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