HOME> インタビュー> 『ファイナルファンタジーXIV』プランナー佐藤弥詠子氏が冒険者の目的を語る
●『XIV』鼓動
2010年のサービス開始へ向けて、その動向に全世界が注目する新世代MMO(多人数同時参加型オンライン)RPGの『ファイナルファンタジーXIV(以下、『FFXIV』)』。今回は、本作の中核を成す世界設定やそこに住まう者たちのさまざまな思惑、そしてプレイヤーの分身となる“冒険者”の目的について、メインストーリーを手掛けた佐藤弥詠子さんみずからに語っていただいた。
プランナー |
プランナー。『FFXIV』では、メインストーリー等を担当。『FFXI』のシナリオやイベントも手掛けており、その緻密なストーリーテーリングには定評がある。 |
――今回、ストーリーのプロローグが公開になったということで、シナリオを手掛けられた佐藤さんにお話を伺おうと思います。まずは、担当されたパートをお教えください。
佐藤弥詠子(以下、佐藤) まず、メインストーリーですね。冒険者が舞台に降り立って、最初に直面するお話です。全体の構成としては、メインにひとつ大きな話があって、そこにサブストーリーのようなものがいくつかある形になっていますね。
――そのメインストーリーがもとになって、“エオルゼア”という世界が作られていったのでしょうか?
佐藤 『FFXIV』の場合は、まず世界ありきです。舞台や遊びの部分をまず決めてもらって、そこからストーリーを考えていきます。ただ、開発のかなり序盤から関わらせてもらっていることもあって、「この街はこう使わせてください」といった提案をすることはあります。そのとき、その提案が遊びのジャマをしないかどうかは、しっかり確認しています。結果、うまくいったんじゃないかなと(笑)
――舞台の設定がさきにある場合、それらへの理解が深まっていくうちに、ストーリーが変わっていったりするのでしょうか?
佐藤 確かに、途中で別の展開を思いつくこともありますが、メインストーリーは“伝えたいこと”が明確にあるので、最初の構想から変わることはないですね。逆にクエストなどの場合は、いいネタが出たらストーリーの新たな結末として加えることを自分の中で許していたりします。
――少し話は変わりますが、『FF』シリーズ定番の“クリスタル”は、『FFXIV』には登場するのでしょうか?
佐藤 世界を満たしているもの、“万物の輝き”といった概念で登場します。もちろん、それは“生命活動”にとって不可欠な存在で、プレイヤーに“クリスタルのもたらす力”として具現化することもあるのです。
――「異形な者たち」と表現されている"蛮族"についてお聞きします。彼らはどういった存在なのでしょうか?
佐藤 まず外観ですが、すでに紹介されている5つの民族以上に、私たち人間とは異なる姿をしています。簡単に言ってしまえば、冒険者の敵対勢力ということになりますね。もちろん、エオルゼアの都市側から見た“蛮族”であって、彼ら自身は自分たちを蛮族などとは思っていません。
――それはそうですよね(笑)。ところで、彼らが冒険者を敵対視する理由とは何なのでしょうか?
佐藤 じつは、彼ら蛮族にもいくつかの種族が存在していて、それぞれが大事にしている概念や考えていることが違うんですよ。たとえば、ある蛮族は束縛のない自由を重んじ、またある蛮族は“力こそ正義”といったように。生きかたも戦う理由も違うんです。
――なるほど。それぞれ背景は違えど、冒険者を敵対視する異形な者たちの総称が蛮族というわけですね。
佐藤 そうですね。『FFXI』の世界設定では、冒険者の敵対勢力としてオーク族、クゥダフ族、ヤグード族という3つの種族が存在していて、それを束ねたものとして"獣人軍"という呼称があったのですが、それに近いかもしれません。
――ということは、複数の種族がまとめて襲ってくる、なんてこともありえるのでしょうか?
佐藤 それも種族によりますね。お互いの利害が一致していて共同戦線を張っている蛮族もいれば、中には蛮族同士でトラブルになっていたり、いろいろなんです。
――蛮族ひとつひとつの規模はどのぐらいなのでしょうか? 集団で襲われたらひとたまりもなさそうですが……。
佐藤 これも種族によってまちまちです。いわゆる少数精鋭の蛮族もいますし、かなりの勢力で脅威とされている蛮族もいます。
――では、蛮族が10年ほどまえに喚び降ろしたという“蛮神”に話を移します。この10年まえに何かあったのでしょうか?
佐藤 10年まえというのは、あくまで冒険者側の推測でしかないでしょうね。ただ、10年ぐらいまえに、明らかに異質で強力な存在がそこに現れた、というのは事実でしょう。
――あまり想像したくないのですが、すべての蛮族に蛮神が守護者としてついているのでしょうか?
佐藤 ほとんどの蛮族では、そういえるでしょう。ただ、その蛮神がどのようにして現れ、どういう存在なのかというところは、ストーリーの大きな謎のひとつになります。
――「北東からアルデナード大陸の覇を目論む」と書かれている軍事帝国ガレマールについてお聞きします。この国は、プレイヤーたち人間、そして前述の蛮族に加わる第三勢力と考えていいですか?
佐藤 そうですね。いわゆる三つ巴です。
――大まかに言うと、どういった立ち位置の国家なのでしょう。
佐藤 エオルゼアの文化圏からは、遠く離れた都市を首都とする、高度に技術が発達した国家ですね。陸続きでこそあるものの、間には厳しい地勢の土地が横たわる上、帝国の属国もありましたので、エオルゼアでふつうに生活している人たちにしてみれば、まったく縁のない国でした。
――“北東”という方角に何か意味は込められているのでしょうか。現実世界では鬼門とされる方角ですが……?
佐藤 そうした意味での設定はありません(笑)。最初に作成されたハイデリン全図において、エオルゼアの北東に巨大な大陸があったので、自然とガレマールはそこを領土とした国家という設定になりました。ですが、まだハイデリン全図は公開されていませんよね。私たち開発は、そうした地図を見ながら諸要素を構築していくのですが、地図がないと、いろいろと別の理由を考えてしまうのかもしれませんね。
――なるほど、早く世界地図を見たいですね(笑)。ではつぎに、「卓越した機械技術」という記述について。これを見てまず最初に思い浮かぶのが、E3で公開されたトレーラームービーに出てきた乗り物です。やはりあれはガレマールの乗り物なのでしょうか?
佐藤 そうかもしれません、ということで(笑)。
――ガレマールの技術力は、人間(プレイヤー)側からみても相当に高いものと考えていいでしょうか?
佐藤 かなり進んでいると思います。
――その技術力で得た武力で、ガレマールがエオルゼアの都市国家アラミゴに攻めてきた、とあります。この侵攻の理由も、ストーリーに関係していますか?
佐藤 もちろん関係します。ガレマールは多くの国を征服・吸収しながら成長した国家です。そしてついに、エオルゼアまで到達してしまったというわけです。
――陥落された都市国家アラミゴはどういった国家だったのですか?
佐藤 ヒューランのハイランダーが多く住んでいる都市です。ガレマールの領土に隣接していたため、地理的に一番攻められやすいところにあった国家ですね。それでも、アラミゴはエオルゼアの中でも力のある都市国家として恐れられていた存在だったんです。別にのんびりしていたから襲われたわけではないです。エオルゼアの人たちも「あのアラミゴが!?」といった感じで驚いていると思います。
――陥落後のアラミゴはどんな状態になっているのでしょう?
佐藤 それは、見てのお楽しみに(笑)。
――冒険者が得たという不思議な能力、“過去を追体験する能力”とはどんなものなのでしょうか?
佐藤 ほぼ言葉どおりの能力で、過去に起きた事象を見る、体験できるものですね。みんなが隠している過去の真実を見られたりする能力です。ただし、あくまで追体験するだけなので、過去に関与して未来を変えられる、というわけではないです。ただ、何かのきっかけにはなることがありますが……。
――過去を追体験して知ることで、現在の状況をより深く認識できる、といったイメージでしょうか?
佐藤 そういうことになりますね。
――この力は冒険者だけが持っている力なのですか?
佐藤 冒険者は当然もっていますが、この世界に暮らす人々の中にも、何らかの理由で持っている人がいますね。冒険者も含めて、選ばれた人たちということになります。
――力を持っている人の数は、エオルゼアでも少ないのでしょうか?
佐藤 いえ、ごく限られた人だけが有す能力ではありません。役に立つ力ではありますが、謎が多いために何をもたらすかわからない。危険な力かもしれません。
――この能力は、プレイヤーの意思で能動的に行使できるものですか?
佐藤 う〜ん、使えるといいですね(笑)。
――この力の謎を解き明かすことが、冒険者の旅の大きな目的となると考えてよろしいですか?
佐藤 ストーリー的には、この力の真意というのは最後までひっぱる部分ですね。この力は、蛮族やガレマールとの戦いに役に立ったり立たなかったり。複雑に絡み合ってストーリーが進んでいきますよ。
――今回登場した新たなキーワード、それに関するお話を聞いて、『FFXIV』の発売を心待ちにしている誰もが、大きな期待感を持ったのではないかと思います。最後に、今回のシナリオでとくに見てほしい部分、テーマをお聞かせください。
佐藤 ちょっとした意識の違いから、争いやドラマ、感動的な場面が生まれてくる。いつも、そういった人の根底の部分を意識して描いています。その上で今回は、いつもならハッピーエンドにしているようなところを、あえてダークな結末にした箇所があります。
――人間臭さ、といった部分が色濃く出ている?
佐藤 そうですね。オンラインゲームは大人のプレイヤーさんも多いので、わかってもらえるんじゃないかなと思います。また、ゲーム中にさまざまな人生とドラマを描くことで、舞台は違えども「ああ、自分と同じ環境にある」と共感する機会を生み出せればと思っています。それが、立ち止まってふと考えてもらうきっかけになり、そのうえでさらに、夢や希望に膨らませる方向に進んでもらえるとうれしいですね。ダークなストーリーでは、それが半面教師になることもあると思いますが(笑)。
――ちなみに、佐藤さんの頭の中ではメインストーリーは最後まで完成していますか?
佐藤 してます。もちろん完結していますよ(笑)。詳しくお話できるのははるか未来になるでしょうが、プレイヤーのみなさんに喜んでいただければと願っています。
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