HOME> インタビュー> プラチナゲームズ最新作インタビュー全文掲載 『無限航路(仮題)』
●河野一二三氏が広大な宇宙のロマンを描く
無限の宇宙を航海するSF大河RPG『無限航路(仮題)』。同作品は、プロデューサーにプラチナゲームズの稲葉敦志氏、ディレクターにヌードメーカーの河野一二三氏という、『鉄騎』シリーズのコンビがタッグを組み、ニンテンドーDSで開発中の作品である。
物語の舞台は、銀河ふたつ分に相当するという広大な宇宙。プレイヤーは宇宙港で働く主人公となり、宇宙戦艦を建造して艦隊を組み、広大な宇宙を旅することになる。この旅の中で、宇宙戦艦のパーツや艦に乗り込むクルーを集めていくのだ。週刊ファミ通2008年5月30日号(2008年5月16日発売)では、ディレクターを務める河野氏にインタビューを敢行。そのインタビュー全文を、今回、ファミ通.comで掲載していく。
ディレクター |
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独創的な作品作りで知られるクリエーター。株式会社ヒューマン退社後、ゲーム制作会社ヌードメーカーを立ち上げ、その代表取締役に就任。おもな代表作は、『クロックタワー』シリーズ、『鉄騎』シリーズなど。なお、『無限航路(仮題)』のプロデューサーを務める稲葉敦志氏とは『鉄騎』でもコンビを組んでいる。 |
――まず、河野さん率いるヌードメーカーについて教えてください。
河野一二三(以下、河野) ヌードメーカーは、作りたいと思った欲求に素直に従うというコンセプトで動いている会社です。純粋に”作りたい”と思う気持ちのフィルターを通ったものしか作らないというのが、基本のスタンスになっています。
――そのヌードメーカーが、今回プラチナゲームズとタッグを組むと。
河野 プラチナゲームズさんと組めてよかったのは、問題が生じたときに、いいものを作るためにどうしたらいいかをいっしょに考えてくれること。感情や人間関係は一切抜きに、「でも、いいものを作るんだったらこうだよね?」という結論をいっしょに目指してくれる。そういった物づくりに対する姿勢が、ヌードメーカーに合っているなと感じています。
――最良のタッグパートナーだということですか?
河野 いっしょにもの作りをしているという実感を得られる会社ですね。
――簡単に『無限航路(仮題)』のコンセプトをお聞かせいただければと思うんですけれども。
河野 理科系教育ソフト……。
――えええええええ?
河野 嘘ですけど、半分本気です(笑)。実在のおもしろい天体や事象を紹介して、宇宙に興味を持ってもらいたいんです。それと、夢の広がるものを作りたかった。たとえばアニメだと、『機動戦士ガンダム』は非常にすばらしい作品だったのですが、この作品の登場以来、リアル志向が強くなってしまいましたよね。宇宙が舞台と言っても太陽系の範囲で収まっている話が多い。でも、もっと広大な宇宙空間を自由に航海できるような、ロマンのあるものを我々は作りたかったんです。
――そういった意味も込めてタイトルが『無限航路(仮題)』になっていると。
河野 そうですね。ゲームだとどうしてもマップというものがありますが、イメージとしては無限に……、まだまだ探索を続ければ、宇宙の果てまであるんだよ、という感じを出したかったんです。
――ニンテンドーDSだけれども、すごく壮大な作品になっているわけですね。
河野 今回、ニンテンドーDSの中でムービーなどもリアルタイムでたくさん入れているんですね。変わった天体の様子とか、大艦隊での戦闘などのムービーですね。そういった、大きな世界が小さなフレームの中でくり広げられている光景というのが、すごくおもしろいな、と感じていますね。
――なるほど。今回『無限航路(仮題)』の開発に至った経緯というのは?
河野 稲葉さんが弊社に遊びに来られた際に、「アルカディア号(※)を作るゲームをやりたいんです」って相談してみたんです。宇宙を旅して強い艦体素材や優秀なクルーを集めて最強の艦を作るゲーム。そしたら、即答でが「あ、それやりましょう」って(笑)。そういう直感的な決定というのが、僕はすごく好きだし、三上さんや稲葉さんの特徴なのかなぁ、という気がします。変に最初のコンセプトからこねくり回して、じゃあ会議で通すにはどうしましょうってこねくり回しているうちに、おかしな方向になってしまうような、そういうことがない作りかただなと思います。
※『宇宙海賊キャプテンハーロック』で主人公・ハーロックが駆る宇宙戦艦 |
――イメージどおりの作品になりつつあるということですか。
河野 非常に自由に、私どものほうで作らせていただいているので、私の思ったとおりには作れていますね。
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――ジャンルをRPGにした理由というのは?
河野 世界設定を考えているうちに、非常にディープな設定ができあがってきたんですよ。これを使わないのはもったいないな、と。それと中心となるキャラクターが、非常に魅力的なキャラクターになったので、ストーリー性を強くして、彼らといっしょになって物語を追っているあいだにシステムや世界設定を理解していくタイプのゲームにしたほうが、遊びやすいし、おもしろいだろうと。それが理由といえば、理由ですね。
――戦闘は戦艦どうしで行うものになるのでしょうか?
河野 そうですね。戦艦vs戦艦です。戦闘のシステム自体は比較的理解しやすいシステムになっていると思います。ただ、本作のコンセプトは”アルカディア号を作る”というところから始まっていますから、戦闘に入るまでにいかに強い艦を作っているか、ということが勝敗を左右する部分が多々ありますね。よりよいパーツを手に入れるために冒険をしていくことになります。
――戦艦の建造や改造はどういう手順で進めていくのですか?
河野 まずは戦艦の設計図を手に入れる必要があります。設計図を手に入れたあとは、どこの宇宙港の、どの造船所に行っても建造できるようになります。そのあとは、乗員の船室や食堂、あるいは機関室や火器管制室といったモジュールを艦内に設置する。モジュールはブロックのような形をしていて、形もさまざまです。それをパズルのように戦艦の断面図上に配置して組み合わせていくと、最終的な戦艦の性能が数字で表示される仕組みです。
――設計図やモジュールは相当な数があると考えてよろしいですか?
河野 そうですね。設計図は150以上。モジュールも膨大で、中には一度のプレイでは手に入らないものもあります。物語の分岐をたくさん用意していますので、それぞれのルートで手に入るものが違ったりとか。
――ということは、何度もくり返し遊べる作品ということですね。物語もボリュームがありますか?
河野 尋常じゃないボリュームになっていますね。プロットも非常に緻密に組み立てています。物語性を重視していますので、プレイ感覚はアドベンチャーゲームに近いRPGと言っていいかと思います。
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――宇宙戦艦のデザインはどなたがやられているのでしょうか?
河野 『鉄騎』のスタッフ再集結ということが、製作の根底にあって。そう聞くとピンと来る方も多いと思いますが、『鉄騎』のメカデザイナーの大久保淳二さんにお願いしています。あの方は『スターウォーズ』が大好きで、宇宙戦艦も大好きなんですよ。でも、宇宙戦艦をいっぱい描くような仕事が実際問題としてほとんどないわけです(笑)。だから、今回すごく喜んでいただいて、正直ギャラ以上の仕事をしていただいちゃったかも……。
――なるほど(笑)。おひとりで描かれているんですか?
河野 じつは、本作のマップは銀河ふたつ分あるんですよ。非常に広い。その広い銀河にいるいくつかの勢力をひとりで描いてしまうと似通ってしまうので、1勢力につきひとりのデザイナーさんという感じで、9人ほどのデザイナーさんにお願いしています。大久保さんを中心として、アニメ作品のメカニックデザインで著名な方々にお願いしています。大物の方も隠れていますよ。ちなみに大物の方のデザインしたものは、ゲーム的にも隠れちゃっているので、なかなか見られないと思うんですけど(笑)。
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――デザイナーさんが9人いらっしゃるということは、9勢力あるということですか。
河野 実質的には10勢力……もうちょっとあるんですけど。小さな勢力のデザインに関しては兼任していただいています。文化が違っているから戦艦のデザインも違うんだ、ということが勢力ごとに非常に明確に出せたと思いますね。
――舞台として銀河ふたつ分ぐらいのスペースを用意されているとのことですが、やはりそれぞれの銀河にいろいろな星がある?
河野 もちろんです。複数の星を束ねる首都星、軍基地や造船企業が存在する星もあります。酪農をしている星や資源採掘星などもありますね。ただ、舞台となる宇宙にはとんでもない数の星があるので、ひとつひとつの星が物語の中でクローズアップされるような形ではなく、それらの星々をどんどん通り過ぎていくような……、ロードムービーみたいな感覚のプレイになるはずです。
――今回はニンテンドーDSでの制作になるわけですけれども、苦労している点や、DSだからこそここがよかったといった点はありますか?
河野 宇宙の変わった星や変わった星系、超新星爆発が起こっている場所などを通過したときに、ムービーでその映像が観れたりするんです。そういうところから、ユーザーの皆さんに宇宙への興味を持っていただきたいな、と思っているので。でも、その映像が我々が「最高に表現したら、こうだ!」というところにハード的には追いつかないんですよね。ありとあらゆる面で制約は多いですし、ニンテンドーDSのスペックもMAX使っていますから、メモリーもギッチギチですしね。プログラマーが悲鳴を上げていますよ。ただ、そういう制約の中でやったグラフィックというのが、かえって想像を広げさせるということは絶対あると思うんです。僕は、制約があったほうがゲームはおもしろいと思っているので、ボリューム、期間、人数、資金力、そういったものの戦争っていうのは関係ないところでお好きにやってください、と。こちらはゲリラ戦でがんばらせていただきますんで、という思いはあります。
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――お話を聞いていると、かなりSF的な考証が濃いものになっていそうですよね。
河野 あえてウソをついているところもありますが、可能なかぎりSF的に矛盾はないように、という思いで作ってはいます。そのために、スタジオぬえさんに考証を見ていただいたりもしています。今回は、スタジオぬえさんにそこかしこで協力していただいていますね。
――本作は、DSワイヤレス通信での対戦も楽しめるんですよね。
河野 はい。複数の戦艦で艦隊を組めるので、いろんな艦隊構成を試して、対戦をしていただければ。
――では、最後に読者の皆さんにひと言メッセージをお願いします。
河野 ユーザーさんにはこのタイトルを遊んで広大な宇宙へと想いを馳せていただきたいな、と想っています。一時流行ったセカイ系とか、身近な人間関係で完結するような狭い思考じゃなくてね。この宇宙の中における人類の立ち位置とか、宇宙を支配する原理法則とか、そういったレベルにまで最終的に物語は向かいますので、たまにはそういうブッ飛んだ世界に思考を飛ばしてみるのはいかがでしょう。
無限航路(仮題) | |
ハード |
ニンテンドーDS |
発売日 |
2009年発売予定 |
価格 |
価格未定 |
テイスト/ジャンル |
宇宙・戦艦/RPG |
備考 |
開発:プラチナゲームズ、ヌードメーカー |
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