第5回:ODYSSEY(その2)「世界初のTVゲームを遊ぶ・前編」
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こんにちは。世の中密着することで何とかなるんじゃないかと思うオメガファイター・武宗しんきろうでございます。
皆さんは遊ばなくなったゲームをどうされていますか? 即行中古ショップに売っちゃいます? 昔、まだ日本に中古ゲームショップがなかった時代、高級品だったTVゲーム機は「まだ使える」「もったいない」という想いとともに、親戚や近所の子どもたちにゆずられ、いつのまにか消えていったものです。しかし、クラウド環境で本体の姿すら薄れつつある現代、レゲ娘の彷徨はますます混迷を極めるわけでして……。
※本連載では、TVゲーム=家庭用据え置き型ビデオゲーム機と定義します。
※価格は新発売時のものです。
※メーカー名は当時のものです。
※文中のデータなどは当時の資料をもとに武宗しんきろうがまとめたものです。
実はほとんど知られていないゲーム?
世界初のTVゲーム機・ODYSSEY(オデッセイ)の歩みをたどっている本章ですが、今回から2回に分けて、ODYSSEYのゲームをプレイする「実践編」に突入します。
ODYSSEYを紹介しているコンテンツは世界中に多数ありますが、そのゲームソフトまで詳しく紹介しているものは意外と見かけません。画面が似ていることから混同されがちですが、ODYSSEYのボールゲームは、後年のPONGなどで遊べるボールゲームとまったくといっていいほど性質の異なるものですし、オーバーレイをキャラクター表示として用いたゲームシステムは、全ビデオゲームの歴史から見ても異色の存在です。
他ではわかりにくかった部分をおさえつつ、当ブログならではのやりすぎレビューを通して、世界初のTVゲームの魅力をみなさんと共有していきたいと思います。ではゲームスタート!
準備編
'80年代、ファミコンが大ヒットした理由のひとつに、学校と塾とのすきま時間に即応できる手軽さがあります。しかし、ODYSSEYは準備だけで5分はかかるでしょうか。 扱いにくいケーブル、乾電池のセット、オーバーレイの貼り付け、画面の調整、細かなパーツの整理とセッティング・・・・・・、とにかく遊ぶまでに一苦労。1972年の子どもには心の余裕が必要だったのだろうなあ、と、ふと、虚空を見上げる筆者でありました。
スマホのように、ユーザーとソフトの距離が(過剰なまでに)近い現代との差をもっとも感じる部分といえるでしょう。
左 まずは電源。別売りのACアダプターがない場合は、背面の電池ボックスに単2型電池を6本セットしよう。1972年当時はマンガン電池が一般的だったはずだが、アルカリ乾電池でも大丈夫だろうか?
右 TVとODYSSEYを結びゲームケーブルはとにかく長い(4m強)。ゲームコントローラーの接続コードもやたら太く扱いにくい。ギュッギュッと強く押し込んでおこう。
左 アメリカと日本ではチャンネル方式が異なるため、そのままでは映ってくれない。今回は、テレビとODYSSEYのあいだに、アメリカ製のRF→ビデオ出力コンバーターをかませる。もちろん別電源が必要。
右 GAMECARDは、現代で言うところのゲームカセット。銅で配線された基板を硬質プラスチックではさみこんでいる。標準で6枚ついてくる。
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左 GAMECARDは電源スイッチも兼用しており、中央のスロットに挿すことで電源がONになる。パイロットランプはないので、正常に動作しているかは画面で判断するしかない。
右 スイッチが入り半導体に電流が流れると、スクリーン外の右下(位置決め電圧が0ボルトの地点)から、各オブジェクトが流れるように飛び出してくる。デジタル回路のように一瞬で画面生成されない点に注目しよう。
コントローラーはダイヤルが3つ、リセットスイッチ1つで構成されている。
ENGLISHとは”ひねる”という動名詞で、相手プレイヤーにボールがあたるまで、ボールを上下無制限にコントロールすることができる。
リセットはその名の通りのスイッチで、ボールを手元に戻したり、消えているプレイヤーを再表示させるために使う。
なお、各ダイヤルの可動角はおよそ270°。
まず、6種類の基本動作を知ろう
ここで、各GAMECARDの動作をチェックしてみましょう。極めて単純な動きしかしないため、早くも嫌な予感をされる方がいるかもしれませんが、それで正解。これがODYSSEYでできるすべてなのです。以上の動作に、オーバーレイやルールブックで肉付けして遊ぼうというのが、ゲームデザイナーの思想です。
※注:本来、各プレイヤーは正方形で表示されますが、今回使用したマシンのコンディションの都合で、長方形で表現/表示しています。
1 左右に行き交うボールを、ふたりのプレイヤーが互いの光点(ラケット)ではねかえし合うもの。ボールのY軸の動きは「ENGLISHパドル」で自由に操作することができる。またリセットボタンを押すと強制的にボールが手元に戻る。
2 コントローラー1で自由に動かせる光点がひとつだけ画面に表示される。
3 GAME CARD 1の、センターラインが表示されない版。
4 プレイヤー1がプレイヤー2に触るとプレイヤー2が消える。リセットボタンを押すと再び表示される。追いかけゲームに使えそうだ。
5 プレイヤー2がボールに触れるとプレイヤー2の表示が消えてしまう。それ以外はCARD 3と同じ。シューティングゲームに使える?
6 大きめの光点が画面にひとつ。リセットボタンを押すと同時に消え、画面右側から勢いよく飛び出し、最初に光っていた位置に向かって平行移動し進んでいく。
ゲーム紹介編
さあ、準備が整ったら、いよいよゲームを始めましょう(あ~、すでにつかれた……)。
おっとっと、忘れてはいけないのがルールブックです。プレイヤーがゲームマスターも兼務するODYSSEYにおいて判断の要となるバイブル。プレイ中は該当ページを開いておきましょう。
取扱説明とゲームルールが書かれた「INSTALLATION AND GAME MANUAL」が1冊付属。2色刷りで全35ページ
左 イラストが描かれた半透明フィルム「オーバーレイ」を、マニュアルに書かれた通りにセットする。18~21インチテレビ対応のミディアムと、23~25インチ用のラージサイズが各12枚、計24枚が入っている
右 オーバーレイ上下には穴が開いており、画面外側からフックを使って固定することもできるが、昔ながらのブラウン管テレビの場合、電源を入れると静電気の作用でピタリと張り付いてしまうので超便利。
TABLE TENNIS(CARD1使用)
TVゲームの原点のそのまた原点。ふたりのプレイヤーが画面を左右に行き交うボールをラケットで打ち合いラリーを行う内容です。得点表示もサウンドも一切ないため、画面外にボールを逸らすと1ミスとみなし、先に21ミスしたプレイヤーの負けとなります。
一般的に知られているボールゲームとの最大の違いは、攻撃中のプレイヤーが、ボールのY軸をダイヤルで自由に操作できるという点。つまり、魔球が投げ放題なのです。そのままではとてもゲームとして成立しないので、あるていど相手のラケットめがけて紳士的にボールを誘導する必要があります。よって、テニスというよりキャッチボール、競技と言うより遊技に近いものといえるでしょう。
▲オーバーレイは必要ない。リセットボタンでゲームスタート。 |
▲右のプレイヤーが打ち返したところ。 |
▲ENGLISHダイヤルでボールをコントロール。天地に出してしまうとミスだ。 |
▲相手サイドに押し込めばポイントだ。21点先取をめざせ。 |
TENNIS(CARD3使用)
上のTABLE TENNISにテニスコートのオーバーレイを貼り付け、ルールを厳格にしたもの。サービスは相手内のサービスボックスに入れないとミスになるといった、本物のテニスルールに準じながら紳士的プレイをおこないましょう。もちろん、画面にオーバーレイを貼り付けただけなので、キャラクターの挙動に変化が起こるわけもなく、判定はすべてセルフサービス。くれぐれもリアルなあらそいに発展させないように!
▲内側のライン内にサーブしよう。 |
▲あくまで紳士的プレイ優先で。 |
FOOTBALL(CARD3、4使用)
アメリカでもっとも人気が高いスポーツのひとつであるフットボールを、いち早くソフト化。進行はサイコロとゲームボードフィールドを使用、戦略はカードデッキを用い、スナップからタックルされるまでのスクリメージはテレビ画面上で行います。さらに「パスプレー」「キックプレー」「パント」はGAMECARD 3を、「ランニングプレー」はCARD 4というぐあいに、なんと2種類のカードを抜き差ししながら進める大作で、限られたスペースではとても紹介しきれません。ここではプレイのほんの一部をのぞいてみることにしましょう。
▲使用パーツは最多。スコアボード、ゲームボード、フットボールのトークン(コマ)、サイコロ、アクションカード、4種類のプレイカード。 |
▲オフェンスは手持ちの3種類のカードからプレイを選び、ディフェンスはそれを予測する。同時にカードをめくり手の内をあかしたら、この状態のままひとまずテレビ画面に移ろう。 |
▲「ランニングプレー」。オフェンスはスナップカウントを叫んでプレイ開始! 「32! 64! 76! Hike!」 |
▲みごと突破に成功。「RUN」カードから1枚引き、指定された距離だけボードのトークンを進める。 |
▲こちらは逆にディフェンスがブロックに成功した場面。もし、先ほどの予想が外れていた場合は特別なペナルティはないが・・・ |
▲ディフェンスが予想を当てていた場合はサイコロをふり、指示の数字だけペナルティとして後退する。 |
SKI(CARD2使用)
ODYSSEYでは珍しいひとりプレイ可能ゲーム。スキーヤーは、慎重かつ大胆にコントロールダイヤルを操作しながら、森林や山などにぶつからないよう(照らしてしまわないよう)、コースから外れないよう雪山を滑走し、できるだけ短時間のゴールをめざします。
ミスの数の少なさを競う「POINTMETHOD」、ゲート(赤い点)を照らすと制限時間が増える「TIME METHOD」の2つが公式ルールですが、ふたり同時プレイで競うなど、いろいろなルールを考えてプレイするのもおもしろそうですね。
▲1,2,3,Go!とかけ声をかけてゲームスタート。 |
▲画面左下を順調に滑走中。障害物マークを照らしてしまうとロスタイム。 |
SUBMARINE(CARD5使用)
シューティングゲームだってあるんだぜ! プレーヤー2は、機雷のまかれた海上を、安全ルート(青いライン)にそって慎重に航行している艦隊です。そこに追いうちをかけるのがプレイヤー1。魚雷でプレイヤー2を直接攻撃するか、コースを外させ、機雷のえじきにしてやりましょう。攻守入れかえての3本勝負。先に相手を3度沈めたプレイヤーの勝ちとなります。
▲港を目指す艦隊(右上)とそれを狙う潜水艦(左)。 |
▲航路に沿って艦隊をすすめているところ。 |
▲リセットボタンで魚雷発射。当たりそうな感じ。 |
▲が、うまくよけて入港に成功。コントローラーをとりかえて次はキミが的の番ね。 |
HAUNTED HOUSE(CARD4使用)
これぞ世界初のホラーゲーム。決して一人ではプレイしないでください・・・(※注:できません)。
幽霊屋敷に忍びこんだプレイヤー1は、屋敷に置かれた数々の手がかりを集めながら、最上階に隠されているというお宝を目指します。一方、プレイヤー2はこの屋敷に巣くう「ゴースト」で、手がかりの名を読み上げる路先案内人をつとめるとともに、リセットボタンで突如出現し、プレイヤー1をおどかすことも可能です。
3階の手紙にたどりついたら、13枚(!)のシークレットメッセージカードから1枚を引き、もし宝のありかが書かれていれば、そこにたどり着くことでめでたくゲーム終了。しかしZAPカードを引いてしまった場合は・・・。
ターンごとに、プレイヤーやゴースト役を入れ替え、最終的に手がかりカードをたくさん集めたプレイヤーの勝ちです。
▲使用パーツ。屋敷のオーバーレイは、SKIゲームと同様、手がかりと窓以外は光を通さない。 |
▲1から30までナンバリングされた手がかりカード。裏には照らすべきアイテム名。一方、シークレットメッセージカードには奇妙な詩になぞられたある場所が・・・ |
▲左下の門からスタート。ゴースト(プレイヤー2)は屋敷のどこかにひそんでいる。 |
▲ゴーストがささやく”手がかり”を順番に照らしていこう。間違えるとカードはもらえないよ。 |
▲ばあ?!と叫んでゴースト出現(猫の目が光っている)。ゴーストに触れると集めたカードの半分をとりあげられてしまうぞ。 |
▲おっと、ここで補足。「SUBMARIN」ゲームでは、魚雷を発射するために相手側のリセットスイッチを押す必要があるので、上のようなな形にならべるべし。 |
以上今回はここまで。どうです? やりたくなってきたでしょ?
次回後編では、カジノや教育ゲームなど、ますます広範にわたるゲームソフトとともに、ODYSSEYのハードウエアにもせまっていく予定です。お楽しみに!
◆参考文献:
・OYDSSEYマニュアル
◆筆者カット:
・三輪三(戯誌輪人田 )
次回更新は、2013年1月8日(火)の予定です。
2012年12月25日 16:50