ということで、ここからはいつもの感じで。
2010年11月に音楽プロデューサーの牧村憲一さんと共著で『未来型サバイバル音楽論』(中公新書ラクレ)という新書を発売して、おかげさまで好評をいただいている。これは、牧村さんと1年間にわたって一緒にやってきた「未来型音楽レーベルを作ろう!」という授業を再構成して書籍にしたものだ。
2000年代に入ってCDが売れなくなったことで「音楽で食う」ことの難しさが上がったと言われている。でも、元々「音楽で食う」なんてのは難しかったのだ。だって、今まで音楽業界を支えてきたメインのビジネスモデルは、利益率の高いアルバムCDをレコード会社が大量に販売することで成立っていたわけだからね。
実際問題として、メジャーレコード会社が調子良かった90年代後半でも、制作費と宣伝費のコストをCDの売上で回収できるアーティストなんて数えるほどしかいなかった。どのレコード会社にも「ドル箱」と呼ばれるアーティストがいて、そのドル箱アーティストが信じられない売上を記録することで余った資金を新人アーティストや多くの赤字アーティストの制作宣伝費に回すことで、レコード会社というビジネスモデルは成り立っていたってこと。
ところが、DVDという新しい娯楽パッケージの登場や、iモードの登場に端を発するケータイコンテンツの隆盛、着うた、iPod、iTunes Store、そして音楽を手軽に無料で楽しめるYouTubeが登場するなど、音楽という「娯楽」を巡る環境はこの10年で大きく変わった。
かつてはドル箱アーティストがCDをリリースすれば、何百万枚も自然に売れてくれたわけだけど、音楽が娯楽の"One of them"になって、CDという単価の高いパッケージ商品へのニーズが急速に減退したことで、リリースすれば数百万枚売れてウハウハなんて状況はなくなってしまった。そうなれば当然そこをあてこんでいた多くの「赤字アーティスト」に回せる資金は枯渇するし、ビッグアーティストのおかげで「食えて」いたアーティストは契約を切られるということになる。
今の「音楽不況」というのはざっくり言えば、そういう状況が顕在化しただけの話であって、メジャーレコード会社中心に作られてきた音楽業界の構造が曲がり角に来ているという単純な話だ。
『未来型サバイバル音楽論』はそういう状況において、アーティストはメジャーレコード会社を頼らず、どう生き残っていけばいいのかな、ということを歴史を振り返りながら、未来を予測するという形の本になっているわけです。音楽業界だけでなく、出版業界や広告業界など、いろいろな業界の人に参考になる話が入っていると思うので、興味がある人は書店で手にとって頂ければ幸いです。
2010年時点の音楽業界のまとめは『未来型サバイバル音楽論』でできたと思うけど、2011年以降の音楽業界、音楽をめぐるインフラはどうなっていくのか。それを考える目的で今音楽評論家の高橋健太郎さんと対談本を作ってます。年末に行った対談では「いや、もう音楽は本当の意味で一度全部無料化しちゃった方がいいかもね」的な話の流れになったりして、サバイバル音楽論の次の議論ができそうな感じ。そのあたりのヒントは、次回以降の更新でちょこちょこ語っていきたいなと思ってます。
ではまた!
(2)ITメディアベンチャー
2006年に創業した小さなメディアベンチャー・株式会社ナターシャの創業メンバーです。ナターシャは音楽・マンガ・お笑いという3ジャンルのエンタテインメントニュースを日々ネットで発信している『ナタリー』というニュース媒体を展開しており、僕は非常勤の取締役として、ナタリーを軌道に乗せるまでのもろもろの業務を担当しました。
(3)各種委員・理事など
2006年に文化庁の文化審議会の専門委員として呼ばれたことをきっかけとして、情報通信や著作権の分野をベースに社会運動や政策提言などの公益的な活動もするようになりました。いろいろやってますが、中心の活動は一般社団法人インターネットユーザー協会の代表理事、著作権保護期間延長問題を考えるフォーラムの世話人、NPO法人情報通信政策フォーラムの副理事長などです。
今年4月からは早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコースで非常勤講師をやっており、「ツイッタージャーナリズム」というテーマで教えています。あ、MIAUは12月20日に3周年記念パーティーをやるので、これ読まれている方で興味がある人は、ぜひお越し下さい。田原総一朗さんと対談します。
(4)テレビ・ラジオ・ネット番組出演
最近はテレビやラジオ、ネットなどいろいろな番組に呼ばれて話す機会が増えました。今のところレギュラーという形で定期的に出演しているのは下記の番組です。しゃべる話題は
・TBSラジオ「文化系トークラジオLife」サブパーソナリティー(07?)
・日本テレビ「iCon」レギュラー(10?)
・フジテレビ「新・週刊フジテレビ批評」コメンテーター(10?)
・ニコニコ生放送「ネットの羅針盤」司会(10?)
・Ustream「My Workstyle on Realtime Web」司会(10?)
とまあ、そんな感じです。
このブログでは、自分のフィールドに関連する中で、今まさに時代の変わり目にいるコンテンツ産業やメディア産業のトピックを取り上げて、自分なりの考えを表明したり、今後来そうな注目のトピックを紹介したりしていこうかなと思っています。そんなに更新頻度は高くないかもですが、やるからには面白いブログにしようと思ってるので皆さんよろしくお願いします。