「情報」と「お金」の相性が生む既存ゲームとソーシャルゲーム違い(上)

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■はっとさせられた斎藤由多加さんの著書
 先日、「シーマン」「大玉」など強烈な個性を持ったゲーム開発で知られる、斎藤由多加さんに、2006年に発売されたエッセイ集『「ハンバーガーを待つ3分間」の値段』(幻冬舎文庫)を頂いた。

 

 

        斎藤由多加・著
        「ハンバーガーを待つ3分間」の値段―企画を見つける着眼術 (幻冬舎文庫)

 

 この本は、斉藤さんが、日々の暮らしの中で、ふとしたきっかけで思いついたことや、これは変じゃないかと思うようなことを、その場の写真と一緒に紹介しながら、そうした現象が起きている理由を、ゲームデザイナーの見方から考えを重ねている本だ。個々のエッセイは、それほど長いものではないのだが、斉藤さんが考えを積み重ねていく着眼点に何度も、はっ、とさせられた。


 例えば、運転している最中に、意味を理解することが瞬間的には難しいような道路標識に直面したために、読み取りを間違えて、結果的に、進入禁止だった道に入り混んでしまい、道路交通法違反で罰金を科せられてしまう。その道は、決められた時間帯は進入禁止になっている道だった。


 しかし、これは運転手の側だけの責任にしてしまって良いものなんだろうかと、斉藤さんは考える。一瞬の判断で、直感的に理解できないような完成度の低い道路標識というインターフェイスを提供している国の方に問題があるのではと。

 

 

■「情報」と「お金」は相性が悪く交換が難しい
 それで、書かれているエッセイで、最も納得してしまったのが、「情報とお金の相性の悪さ」について書かれているところだった。これは、今、ソーシャルゲームがなぜ急激に強くなったのかを理解するためのヒントにもなるように思えるのだ。

「重さも形もない情報を物質的な価値と交換するには、コンテンツの制作と同じぐらい大変な手間とコストがかかるわけですが、これを言いかえると、情報と物質は、音と光のように絶対に干渉し合わない、そんな関係ではないかと、さえ思えてくる。


 極論すれば情報提供の対価は情報でしかあり得ないのではないか、とすら思えます。今、情報コンテンツを売ろうとすると、情報としてではなく『書籍代』とか『CD代』、あるいは『入場料』などといった既存の物質的名称に置き換えて販売されます。情報その者に課金するには、性善説に立たないとできない。その価値の評価も人によって違いすぎる。
 ネット社会になって、情報が物質から切り離されたとき、あらためて『人間は情報単体にお金を払うべきなのか』が問われているわけです」(P.145-6)

■情報となったゲームで収益を上げる難しさ
 今まさに、パッケージという物理的メディアをしっかりと持つ形で販売されてきたゲームが、ソーシャルゲームのようなクラウドや、スマートフォンに見られるようなネット販売のみというモデルの台頭によって、ゲームのあり方を変えようとしている。それはゲームが「物理メディア」から分離されて、単体の「データ」だけの存在に変わってきている。つまり、ゲームが純粋な「情報」に近づいている。


 そうすると本来、「情報」そのものは無料で交換が可能であるために、実際に、斉藤さんが指摘する「お金と情報の相性の悪さ」が顔を出す。iPhone向けのゲームの4割無料で、有料ゲームでも平均販売価格が約1ドルであったり、また、大量の無料でそれなりに遊べてしまうソーシャルゲームがネット上に溢れかえるという現在の状況だ。


 これは、別にゲームだけで起きている現象ではない。書籍、映画、アニメ、音楽などなど、デジタルデータという生の「情報」に変換できてしまうものは、容易にコピーできてしまうために、お金と交換することが、極めて難しい性質が顔を出してしまう。


 結局、「情報」をお金に変換するためには、ゲーム・映画・アニメなどはCD、DVDや専用カートリッジ、書籍であれば紙という形で提供した方が、値段を維持しやすい。極端な話、インターネットの普及以前は、メディア代を払って、そのなかに情報が乗っかっていた。ほしいのは情報そのものだったのだけど、それを手に入れるためには、物理メディアを手に入れるしかなかったから、誰もそれを疑問に感じることがなかった。
 しかし、時代は大きく変わりつつある。そして、コンテンツ事業者の多くが、「情報」を「お金」にどうすれば変換できるのかで、真剣に悩んでいる。

 では、急激に広がっているソーシャルゲームは、なぜ強くなれたのか。斉藤さんは期せずして、ソーシャルゲーム登場以前に、その本質を見抜いていた。ソーシャルゲームとは、ゲームでありながら、ゲームとはまったく違う性質を作りだした。それは「情報」を「情報」で戻す仕組みである「相場」情報だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2011年7月19日 16:11