「Mass Effect 2」に感じる北米と日本の物語文化の違い(後編)

前回、「Mass Effect 2」から観た作品文化の違いを欧米側の視点から解説したが、今回は日本側の視点を中心に掘り下げていきたい。

 

 

■極めて日本的なガンダムの世界
日本で最もよく知られているスペースオペラである「ガンダム」と欧米作品を対比すると、その違いはもっと明瞭になる。ガンダムは極めて日本的な世界だからだ。ガンダムの世界は、基本的に日本人だか、外国人だか、わからない様な国籍不明のキャラクターたちが、地球圏と呼ばれる地球と月の間の狭い世界で争いをしている。宇宙にいるスペースノイドと、地球に住む人々の対立が、延々と描かれていく。
この構図は「ファーストガンダム」以来、どの作品でも変わらず、何十年も経った後の世界でも解決されることもない。いつまで経っても、宇宙にいる人たちは何とか地球から宇宙に進出するように強制し、それに賛成か反対かで戦争している。
そのため、人類と異なる種類の異星人は登場しない。太陽系の外側の宇宙への本格的な進出もない。そういうことは、起きるかもしれないが、それは遙か遠い未来の話と漠然とぼかされている。
もちろん、これはそれがひな形として「ガンダム」という商品が完成されたことが大きく、今後も簡単には変わる事はないだろう。しかし、この広がりのない世界は、外国人に対して閉鎖的な側面を持つ日本社会の縮図のように見える。
実際に、ガンダムは海外では人気がない。人気があるのは、ガンプラ雑誌まで存在する香港ぐらいだろう。外国人を観光で秋葉原に連れて行くことがあるが、埋め尽くすガンダム製品に関心を持つ人はほとんどいない。我々、日本人にスタートレック好きや、スターウォーズ好きが限られるのと同じような理由であろう。ピンと来ないのだ。

 

■欧米と日本で好まれる物語が違う
最近、2000年代に入って、日本のゲームが、欧米圏で人気を獲得できない一つの理由には、「それぞれの社会で支持される<物語の祖型>が異なっているからではないか」と思うようになっている。
欧米圏のゲームで必ずと言っていいほど登場するオッサンキャラは、大人として子供が目標にできるようなヒーローだ。そして、自分の外側にいる誰かと協力するか、裏切るのか、どちらにしても対立する目標に対して世界を動かそうと考える。主人公達の外側にいる人々の中から、突然重要な存在が現れることもある。
そして、必ずと良いほど、善と悪の戦いになる。BioWareのゲームが人気があるのは、キャラクターを選択肢によって、善的な存在にも育てられるし、悪的な存在としても育てられる「モラル」がテーマになっている点にある。その究極の選択をどちらを選んで進めていくのかが、物語パートの重要なポイントになる。
その多様性を見るために、ついつい二周目をやりたくなるように作られている。

一方で、日本には、そこまでの区分けがない。むしろ、好まれる世界はますます閉じる方向へと向かっている。最初から決められたメンバーが、最初から閉じている世界の中で、世界の運命を決める。
「エヴァンゲリオン」にしても、「涼宮ハルヒ」シリーズにしても、最近、日本で人気のある物語は、世界を救う関係者は最初から閉じられており、そのキャラクターの内的な葛藤が問題になる。そして、主人公の外側にいるものは、「やられメカ」と呼ばれたりするように、存在していてもいなくても変わらないものとして取り扱われる。世界は、そういう意味では一つなのである。
「Mass Effect 2」のようなRPGをシステムを日本風に取り込んで、登場することはできないだろうかと思うこともある。そのときには、善と悪ではなく、日本的な曖昧でありながらも、どちらの物語も統合できるような展開を持つ物語を生み出すことで新しいスタイルが登場する可能性があるのではと思う。

 


「Mass Effect 2」公式サイトより

 http://www.xbox.com/ja-JP/Marketplace/Product/MassEffect2/02story


■評価の割に販売結果はもう一つ
ただ、「Mass Effect 2」はセールスとしては大成功とは言えない結果だった。大型タイトルとして期待されながら、昨年1月発売と、クリスマスシーズンをはずしてしまったのと、Xbox360独占タイトルであったために、販売は200万本代にとどまっている。米国のゲームは、返品や売れない場合、値下げが行われるため、利幅が小さくこの本数では赤字であろうと推測する。
欧米のユーザーにとっても、リッチな物語とはいえ、多量のテキストを読むゲームは案外と面倒くさいと思われているのかな、という感じもする。
そういう意味では、通好みのゲームなのだろう。ただ、欧米では、今年1月にプレイステーション3へと移植したバージョンがリリースされ、完結編の「3」は今年後半に発売が予定されている。
日本での発売は明らかになっていないが、洋ゲーと呼ばれるゲームの最高傑作の一つではあるので、ゲーム好きにはオススメはしたい。

 

2011年2月7日 19:04