「Homeworld」がリメイク化で成功

ユーザー開発の「ガンダム」のストラテジーが遊べる

「Homeworld」がリメイク化で成功

 

 10年以上、続編がリリースされていなかったゲームが、ユーザーコミュニティに支えられる形で人気が続き、リメイク版が開発され、商業的にも成功したゲームが登場した。今の時代のゲームの姿を象徴しているように思われるケースとして紹介したい。


 2015年2月25日に発売になった、宇宙艦隊同士のリアルタイムストラテジー(RTS)の「Homeworld Remastered Collection」(Windows用、米Gearbox Software)だ。コンテンツ配信システムの「Steam」向けにリリースされた。99年に発売された「Homeworld」、03年に発売された「Homeworld 2」のインターフェイスを共通化し、グラフィックスのディティールアップを行ったリメイク版だ。

 

 

 

 

 オリジナル版を開発したのは、第二次大戦をモチーフにしたRTS「Company of Heroes」などで知られる、カナダのバンクーバーにある開発会社Relic Entertainment(13年より、セガの開発子会社になった)だ。

 「Homeworld」の評価は極めて高く、発売当時の北米の各ゲームメディアの平均点を計算するメタスコアで100点満点中93点という評価をとっていた。三次元空間を利用できるゲームシステムは斬新で、何十隻も登場する宇宙船が艦隊を組んで宇宙を飛ぶ姿は美しい。両軍の乱れ飛ぶ戦闘機のなか、自分の艦隊が、一斉に砲門を開いて、レーザー攻撃を敵艦隊に向けて発射する姿は、まさに「男のロマン」というという印象のするゲームだ。「宇宙戦艦ヤマト」や「銀河英雄伝説」を連想せざるを得ない。

 銀河系辺境部から、自分たちの本当の故郷である中心部の恒星を目指し、軍事国家と戦いながら旅をしていくというストーリーもゲームを盛り上げる。今回、もう一度最初からプレイしてみたが、十数時間の争いの後、終盤の敵の大艦隊との激突をしのぎきったときの達成感は大きなものだった。

 銀河帝国が確立された以降の混乱を描いた「2」は、さらにインターフェイスが洗練され高い評価を獲得した。個人的には、いまだに、このゲームを越えたといえる宇宙艦隊同士の戦いを扱ったRTSは出ていないと思っている。

■日本で話題となった「ガンダムMod」

 今回のリマスター版がリリースされるまでには長い道のりがあった。03年に、Relicがパブリッシャーの米THQに買収された。当時は、欧米で、家庭用ゲーム市場が盛り上がる一方で、パソコン向けのRTSの人気が下がっていった時期でもあった。そのため、ビジネス的に大きな成功が期待できないと考えられたようで、「Homeworld」の続編の開発が行われなかった。

 そうした状況のなか、シリーズのクリエイターたちは、07年にRelicを辞め、「Homeworld」の名前を冠さない宇宙船RTSを新規開発するために、独自にスタジオを設立した。

 しかし、「Homeworld」のユーザーコミュニティは、ゲームを発展させ続けた。「2」のリリース時に、一時、Relicはソースコードをユーザーコミュニティ向けに公開していた。そのコードを使って、Modを開発し続けるユーザーがいたのだ。

 「Homeworld」は、欧米圏のパソコンゲームで一般的なMod戦略がとられている。ModはModify(修正する、改善)の意味で、非商用という制限を付けて、開発環境の一部を公開し、ユーザーが独自にゲームのデータを改変することを認めるという戦略だ。これにより、ユーザーがゲームの追加コンテンツを独自に開発してくれるため、人気ゲームの寿命が延びるメリットがある。

 ユーザーはオリジナルの宇宙船を登場させたり、追加シナリオを作成したりという活動を積極的に行った。また、「スターウォーズ」や「スタートレック」などの艦船や戦闘機にデータを入れ替えたものも登場した。

 「Homeworld」は日本語化がなされなかったが、ユーザーが開発したModによって一部で高い評判を得た。「ガンダム」のデータに入れ替えるModを開発したユーザーが登場したためだ。

 

 

 

 

 「2」のModとして、05年にリリースされた「GUNDAM Mod」は、「機動戦士ガンダム」の一年戦争とオリジナルビデオ「0083 スターダストメモリー」に登場する連邦軍とジオン軍のメカに入れ替えることを行っている。CPUを相手に対戦できるのだが、登場するメカの完成度は高く、ほれぼれとしてしまう。艦船としてホワイトベース、ムサイから、モビルスーツのガンダム、ジム、ザク、ドムなどなどが登場する。

 ゲームを実際に遊んだ際の映像は、圧巻としかいいようがない。大量のモビルスーツの乱戦に、メガ粒子砲を撃ち合う艦隊戦は、一度はこんな戦闘シーンだけを見てみたいとアニメを見ながら思っていたようなシーンそのものだ。胸アツである。(もちろん、非公式だ)

 

 

 

 

 開発を行ったのは、ガンダムの人気が高い香港在住と思われる2人のユーザーだ。09年まで、メカの追加が行われるアップデートが続いた。最終版の「3.1」では、大型モビルアーマーのデンドロビウム、ノイエ・ジールまで追加された。

■ユーザーコミュニティに支えられリマスター化が実現

 13年に、THQが倒産し、「Homeworld」の権利は再び中に浮くことになった。その際に、負債の整理のためのIPの一つとして競売が行われた。インディ系企業が、クラウドファンディングサイトの米Kickstaterで「モバイル版と3」の開発をすると発表し出資を募った。目標額は5万ドルに設定されたが、最終的に1318人から、5万8000ドル集めることに成功した。まだまだ、根強い人気があることを証明した格好だ。

 ただ、その額では、とてもIPは買えず、結局は、Gearboxが135万ドルで獲得し、リメイク版の開発を行うことが発表された。また、オリジナル版のクリエイターたちが作った開発会社 Blackbird Interactive に出資している。この会社では、「Homeworld」の精神的な続編と位置づけられる、地上での戦いをテーマにしたRTSを開発している。


 そして、発表から1年半、めでたく発売が始まったというわけだ。1ヶ月間の予約キャンペーンで10万本の注文を集めることに成功している。

 2月24日に、Gearboxの社長兼CEOのRandy Pitchford氏はTwitterで「大手パブリッシャーは気にとめた方がいいよ。Homeworld Remasterdはたった30日の販売キャンペーンをやっただけで、小売店に強く力を入れた戦術を採らないで、10万本の予約注文を得たことに」(筆者訳)と、リマスター版の販売の立ち上げが十分な成績を収めていることを示唆するつぶやきを投稿している。

 リマスター版でも、Modの開発は推奨されている。ただ、開発環境は再構築されたために、古いModはそのままでは動かない。ただ、救済策として、今回のリマスター版には、オリジナル版も付属している。

 すでに日本人ユーザーの中に、オリジナル版を使って「Gundam Mod 3.1」が動作することを確認しているユーサーがいる。インストール方法も紹介している、ハンドル名Style one氏は「自分はこれだけでゲームを買う価値があった」とSteamのフォーラム内に書いている。

 日本語化はされておらず、今後の予定もないものの、「2」向けには、日本語化Modが開発されているため、いずれユーザーの有志によりにリマスター版の日本語化も行われるものと思われる。


 「Homeworld」のリマスター版を遊びながら思うのは、続編こそ開発されなかったが、長い間のユーザーコミュニティのサポートによって、息の長い人気を持続でき、再び日の目を見ることができるようになったゲームだ。

 Mod戦略は00年代に一般化し、08年以降、スマホの登場によって、「ゲーム開発の民主化」といったうねりを生み出した。ゲームにとって、ユーザーコミュニティから、積極的にサポートを受けられるかどうかは、ますます重要になってきているのではないかと感じられる。

2015年3月5日 18:46