Oculusがおもしろさを劇的に変える宇宙船ドッグファイト

Oculusがおもしろさを劇的に変える宇宙船ドッグファイト

 7月末に販売が開始された米Oculus VRのヘッドマウント型ディスプレイ「Oculus Rift DK2」を暇さえあれば触って遊んでいる。DK2は、開発者向けのハードであるため、まだまだ、一般に普及するには来年以降までと時間がかかるだろう。現在、発表されるものの大半は技術デモで、長時間遊べるゲームは少ない。

 

Oculus Rift DK2

 

 ところが、Oculusだからこそ体験出来るバーチャルリアリティ(VR)の魅力を感じられるような本格的なゲームに出会った。ロシアのGaijin Entertainmentの「Star Conflict(スターコンフリクト)」(Windows、Mac用)だ。宇宙船同士の戦闘を扱ったMMOスタイルのゲームで、リリースは13年2月。無料プレイのアイテム課金方式で提供されている。ロシアを中心に欧州圏で遊ばれているが、大成功を収めているタイトルといえるまでにはなっていないようだ。

 このゲームが9月に、Oculus DK2に対応しており、最近プレイして、過去にないゲーム体験に衝撃を受けた。VR空間では、360度すべてが宇宙という空間内で、敵戦闘機と、ドッグファイトをするのはとても楽しい。敵機との距離感が正確に把握しやすく、世界への没入間が強烈だったのだ。

 筆者のプレイ時間は、すでに10時間近い。Oculusでも長時間遊べるゲームが登場しつつあると強い印象を抱いている。

 

「Star Conflict」のスクリーンショット

 

 

■リアルを追求していないために遊びやすい

 元々、Oculus専用に開発されていたゲームではないため、キャノピーといった自機の見る方向をさえぎるものはない。ガンダムのコクピット内の360度モニターというのは、こんな感じなのではないかという気分にさせてくれる。

 操作が、適度にいい加減なのも遊びやすい理由だろう。

 欧米圏では、Oculus向けゲームとして、宇宙船同士のドッグファイトゲームが次々に開発されている。その多くが、「リアルなシミュレータにこだわっている」と標榜している。欧米圏では映画「スターウォーズ」に代表されるSF映画内で想定されている「リアルな宇宙戦闘機のドッグファイト」という暗黙の常識を、VRで実現したいという気持ちが強いのだろうと思われる。

 ところが、その暗黙の常識を持たない筆者には、ひたすら操縦は難しい。いくつかのゲームを遊んでいるが、宇宙船が“正確に”挙動するために、敵機を補足することさえできなくて嫌になる。

 「Star Conflict」は、その辺がゲームっぽい作りで、大ざっぱなコントロールで適当に飛んでくれるし、いい加減な照準でも敵にダメージを少しは与えてくれる。

 アイテム課金型ゲームらしく、初心者にも継続的にゲームを遊んでもらうための工夫が凝らされている。対戦時には、必ず、コンピュータが操作する下手な挙動をする戦闘機も混じるように設定されているので、慣れていないユーザーでも1度の対戦で、敵機を何機かは撃ち落とす楽しさを体験できるようになっている。

 高速型を選んで敵機にピタリと背後に食いついて撃墜するのも楽しいし、中型船の支援艦を選んでレーザー砲で正面から激突するのも楽しい、大型艦で遠距離からレーザー砲を狙い当てるのもスリルがある(大型のレーザー弾が遠距離から飛んでくるのも、なかなかの迫力)。プレイスタイルによって、対戦中に頻繁に体験することになるVR映像も変化する。


■宇宙空間をテーマにしたデモやゲームは酔いにくい

 Oculusでは「VR酔い」を抑えられるかどうかが、普及のために乗り越えなければならない重要な課題と考えられている。見えている映像と身体の動きが違っているために引き起こされる車酔いに似た現象だ。

 「Star Conflict」は比較的VR酔いをしにくいように感じる。宇宙空間とVRとは相性がよいということが、Oculus用に開発された様々なデモから、経験的に明らかになってきている。宇宙空間は邪魔する障害物が少ないために、プレイヤーが操作する戦闘機を急激に加速しても、自分の見えているものが、突然、変化することが少ないからではないかと考えられている。


 ソニー・コンピュータエンタテインメントの「プロジェクトモーフィアス」向けデモの「サマーレッスン」で話題になった、バンダイナムコゲームスの「鉄拳」プロデューサーの原田氏が、先月に行われたイベントで「VRでエースコンバットのようなゲームをプレイするとVR酔いになるかどうかを個人的に実験している」と述べていた。原田氏によると、自分が操る戦闘機が、水平線から15度傾くと気持ち悪くなり、30度も傾くと、その日に仕事にならないほど残る酔いが起きてしまうらしい。

 「Star Conflict」でも、同様の現象が起きる。宇宙船のドッグファイトを繰り返して、自機を上下左右反転しまくっていると、だんだんと気持ち悪くなってくる。ただし、気持ち悪さを意識的に、抑える方法もあることにも気が付いた。太陽光の当たる方向を、常に上方になるようにできるだけするように心がけるのだ。

 「Star Conflict」の対戦空間には、宇宙にもかかわらず、上下がある。対戦マップの場合、惑星の超高高度で争っている設定で、常に上方には太陽があり、下方には惑星の地表が広がっている。対戦空間にある小惑星などの障害物はすべて、その光を受けてくっきりと影がある。

 気持ち悪くなるのが、宇宙船の上下が反転しており、光と影も反転している状態のときなのだ。普段見ている光の様子と風景が違うと、脳が混乱するのだろうと思っている。


■VRが引き起こす「陸酔い」の問題

 ただ、VR酔いとは、別の問題に悩まされることになった。連続して4時間遊んだ翌日に「陸酔い(おかよい)」になってしまったのだ。陸酔いとは、プールや海で泳いだり、船に乗ったりした後、陸に戻っても、波に揺られているような感覚が残ることをいうが、それに似た現象を経験した。翌日、椅子に座っているだけで、身体全体が勝手にふわーっと回転しているような、若干不快な感覚に悩まされたのだ。

 「Star Conflict」では、宇宙船を回転させながら加速・減速を繰り返すので、VR空間の視界もぐるぐると回転する。それが平衡感覚を狂わせてしまい、その感覚が残ってしまうようなのだ。時間が経てば、いずれ治るのだが、1日かかった。

 こうした陸酔いは、過去のゲームハードを使ったときに経験したことがない。

 今はまだ大半のVRゲームは、短時間しか遊ぶことが想定されていないため、陸酔いは目立った問題として、注目されていない。しかし、VRゲームを長時間プレイするユーザーが多数登場するようになるにつれて、陸酔いの問題も、やがて様々に報告され、普及をする上では障害となる課題になるかもしれない。


 それでも、陸酔いをするとわかっていても、やめられない。

 一度、全天球の宇宙空間で飛び回る開放感を知ってしまうと、モニターでプレイしようとはとても思えないためだ。戦闘機をアップデートするための経験値を稼ぐために、何度かパソコンのモニターで遊んでみようと試みたが、続かなかった。もう、Oculusを使わないで遊ぶことはないだろ

2014年12月4日 19:06