PS4世代の評価指標「バトルフィールド4」のすごさと課題

 相変わらずソニー・コンピュータエンタテインメントの「プレイステーション4」で遊んでいる。今の時点で、最も次世代機感がするゲームはFPSの「バトルフィールド4(以下、「BF4」)」EA(米エレクトロニック・アーツ)だと思っている。PS4の性能向上のメリットを十二分に受けていると思えるからだ。

 

 ただ、開発費が数十億円に達すると思われる「BF4」は、EAの業績を悪化させており、PS4世代のゲーム会社のリスクを早くも露見させている。

 

 ゲームの完成度の高さと、企業にとっての業績が必ずしも、連動しないということを紹介したい。

 

■PS4の高性能さのメリットを存分に受けている「BF4」

 

 「BF4」は、元々ハイエンドPC向けに開発されていたゲームであるため、PS4のパワーを遺憾なく発揮している。同時接続の64人対戦に、広大なフィールドを60フレームで遊べる。ゲームを遊び始めた瞬間に、過去のゲームとはまったく違う強烈なインパクトを受ける。

 

 このゲームの売りである、マルチ対戦モードばかりやっている。困るのが、遊んでいるだけで時間がどんどん失われていくことだ。1ゲーム20~30分なのだが、あまりにおもしろくて、やめ時が見つからず、気がつくと2~3時間消滅していることもしばしば。

 

 このゲームのマルチ対戦は、家庭用ゲーム機ではまったく新しい体験だ。

 PS3世代では、24人対戦(12人対12人)しかできなかったが、PS4では、64人(32人対32人)で遊ぶことが出来る。人数が多いため、激しい乱戦になる。右も左も常に銃撃音と爆音が鳴り響く。また、市街地、荒野、海など10種類の様々なバリエーションのマップが用意されており、それぞれ、戦い方が変わる。

 

 また、このゲームの特徴である兵士だけでなく、戦車や飛行機、ヘリ、船などの乗り物で戦うこともできるので、これまた、いろいろな戦い方がある。下手な人でも、味方を支援できることはたくさんあるので、十分に楽しめる。

 

 ハイエンドPC向けに出ていた高画質の映像を、PS4のハードパワーを利用して、表現しているので映像も圧巻だ。

 

 何より気持ちいいのが、PS3世代では、1秒間に画面を書き換える回数が30フレームだったのが、PS4では映像が自然に見える60フレームになっていることだ。没入感がまったく変わり、さらに高まる。

 

 しばらく、「BF4」は、PS4向けの最高品質のゲーム「AAA」タイトルの基準となると思う。

 

 これほど作り込まれたゲームを開発できる会社や開発スタジオは世界的にも限られている。大型FPSの開発費を負担できるのは、EAか、「コール オブ デューティ」シリーズの米アクティビジョンぐらいだろう。他社が追いつくためには、もっと、サーバやグラフィックス技術が簡単に利用でき、コストが下げられる大きなイノベーションが必要になるだろう。

 

■ハードの切り替え期でEAは巨額赤字に

 

 ところが、「BF4」はEA最大のタイトルの一つだが、利益に貢献できているのかは現在のところは怪しい厳しい現実がある。

 

 米ゲーム調査サイトVGChartzによると、「BF4」の販売本数は、PS3とXbox 360版を合計すると、約470万本。PS4とXbox One版は、共に100万本ちょっとで、合計は約220万本。「BF4」の全プラットフォームの合計では、13年中に690万本売り上げている。

 

 比較として「モンスターハンター4」(カプコン、3DS用)は約320万本で、2倍以上違う。

 

 ところが、この販売本数では、EAという巨大ゲーム会社を支えるためには足りない。11年発売の「バトルフィールド3」の場合、PS3とXbox 360版の11年末までの販売本数は、約950万本と1.5倍も多い。

 

 06年頃のPS2からPS3へと切り替わる時代にも起きたことだが、新ハードの切り替え時期には、ゲームソフト全体の販売本数が低下する傾向がある。EAにも同じことが起きており、他のシリーズ物も含め、ゲームの販売本数が全体的に落ちている。

 


 この結果が、EAの業績に直撃している。

 

 1月28日に発表した13年10~12月期決算の結果によると、売上高は8億800万ドル(前年同月は9億2200万ドル)、純損益は3億800万ドルの赤字(同4500万ドルの赤字)。年末の時期は、欧米では最大の商戦期で、その時期を逃すと、業績の急回復は不可能に近い。

 

 1ドル100円と考えると、年末3ヶ月で12年は45億円の赤字だったのが、「BF4」など旧ハードのゲームが全体的に売れなかったので、13年は308億円の巨額赤字になってしまったということだ。深刻な経営危機とも言える状態にある。

 

■今年も「BF4」が業績に貢献できるのかはわからない

 

 「BF4」のような世界レベルで追従できる会社が限られるクオリティの高さを実現しているゲームでも、それが安定して利益を生み出せる保証はない。むしろ、ちょっと条件が変わると、巨大な赤字になるリスクがある。

 

 「BF4」は、2年に一度、新作を発表すると言うペースであるため、今年、拡張パックを販売するにしても、どれくらい売上げに貢献するのかは、不明瞭だ。

 

 先月、米投資会社Wedbushが、今年中にPS4は全世界で1200万台、Xbox 0neは900万台の販売台数に達するという予測を発表している。13年末までに両ハードが売れた台数は約700万台であった。そのため、14年末までに、新世代ハードの販売台数は現在の約3倍になる計算だ。

 

 仮にPS4とXbox One版の「BF4」の拡張版が発売され、3倍売れると仮定してみると、PS4とXbox One版の販売本数の合計は660万本となる。これは、PS3やXbox 360版が300万本売れないと、まだ11年の「BF3」の950万本にまで届かない。旧ハードの市場は縮小が早い傾向があるため、300万本の達成は容易ではないだろう。

 

 PS4世代で、2014年中は、大型ゲームで十分に企業が利益を出すことは容易ではないと考えられる。ゲーム会社にとって、新世代のハードでAAAタイトルが、企業に十分な利益をもたらしやすい環境になるには、普及がもう少し進んだ2015年までかかるだろう。

 

 「BF4」のケースでは、巨額の開発コストがかかる大型タイトルの売上げの変動によって、露骨に大手企業の業績が変わるリスクが広がっていることを示している。すでに、PS3世代でも、開発コストが高騰し、大型タイトルのギャンブル性が増していると言われてきた。

 

 これが、日本では新しいゲームタイトルが登場しにくい要因の一つだった。

 

 やはり、新しい世代に変わっても、そのギャンブル性は変わっていない。

 

 その意味でも、「BF4」がPS4やXbox Oneでヒットし、EAの業績に貢献するのかは、家庭用ゲーム市場が再び成長するのかを占う上で、重要な指標になるだろう。

 

 FPSでは、特にマルチ対戦に対応しているゲームでは、「BF4」を越えるゲームはすぐには登場してこないと思われる。PS4ユーザーであれば、この新しい世代の基準となるだろう「BF4」を、一度は遊んでおく価値はあると思う。

 

 まあ、ぐだぐだ言わずとも、おもしろいゲームなので……。

2014年3月6日 21:04