今度こそ「モバマス」をやめるんだっ(2)?擬似的ハーレムの世界

 前回に引き続いて、「アイドルマスターシンデレラガールズ(モバマス)」(バンダイナムコゲームズ・DeNA)の話し(結局、まだ遊んでいる)。

 

 特定のキャラをあまり課金しないで育てきってしまうと、あとは他のキャラを育てるしかない。何人も時間をかけて育て、最高のレベルに最高の愛情度にまで達したキャラクターを次々に作ったのだが、どうにも満足度が低い。

 

■自分のほしいレアカードまでは遠く

 

 また、自分の好きなキャラを手に入れるにしても……ガチャで登場しても、高額なお金をつぎ込んで、回す気はさすがにない。高いのだ。しかも尋常ではなく。

 

 そのキャラは、過去に一度しか、Sレアキャラになっていない……不人気キャラということだろう。また、コンプガチャ問題以降、ユーザー間のトレード市場(モバマスでは「フリートレード」)の整備がRMT対策として導入されるようになった。これ自体は非常に優れた安全性を提供するフェアなルールだと思う。ただ、逆にレアカードを手に入れるためにどれくらいの費用がかかるのか、相場が大体わかるようになってきた。ゲーム内の仮想通貨としては、回復アイテムとしてのスタミナが使われることが一般的になったためだ(1スタミナは約100円)。

 

 それで、私がほしいSレアカードの現状のユーザートレード価格を見ると、Sレアは5?600スタミナ(約4?最大6万円)ぐらいで、それを2枚合成したS+レアが1250?1500スタミナ(約10?最大15万円)。さすがに、無理だって……。

 

 つまり、今、自分がお気に入りのキャラのカードで存在しているのは、6種類(スタミナを使って買っても数百円で手に入る)+2種類(ガチャ必須の高価なSレアカード)。Sレアカードを諦めると、可能性空間の果てにたどり着いてしまって、これから先に何かすることがなくなってしまった。

 

 また、気がついたのは、モバマスを続けているうちに、最初は100人以上いるキャラクターの多様性が気持ちよかったのが、だんだんと特定のキャラクターへの偏愛が起きるように心理的に変わっていったことだ。どうも、その心理は比較的普遍的な事象のようだ。


■成長している感覚がどうしても感じられなくなったとき

 

 このゲームでは、他のプレイヤーと対戦しても、別段得るものも、失う物もあまりない親切設計になっている。もちろん、レアアイテムをもらえる「衣装」を6枚揃えるまでのバトルはがんばるのだが、数百円を払えばなんとかなる。

 

 せこいので、課金して豪華なカードをトップに置いている自分より強い相手との対戦は絶対避ける。自分がかなり優位なレベルでも、カードの特性で簡単にボロ負けする。そのため、似たようなあまり課金してないようなユーザーばかりを探して勝ち続ける……。愛情度を確実に引き上げるために、対戦を重ねていくわけだが、だんだんとの消化試合な気持ちになってくる。

 

 イベントが始まっても頑張って手に入れることができるキャラも、自分の好みじゃなければ、ほとんど意味がない。例えば、今のイベントで手に入れられるクール系は、あまり好みのキャラじゃない……。

 

 ソーシャルゲームの重要なところは「成長」をしている気分を感じさせるところにある。これは一般的なRPGなどゲームに普遍的に言えることだが、時間をかければかけるだけ、成長できるという確実性は気持ちを良くさせる。例え、ボタンを押してゲームを進めているだけの、ソーシャルゲームであっても、自分のキャラクターカードの能力が成長していると感じさせるとは、ゲームの強い魅力になっている。

 

 しかし、多様な女の子のキャラクターカードは必要ではないのではと感じるようになった。キャラクターの一人に思い入れが進んでしまうと、最後には、多様な女の子はいらなくなってくるんだなぁ、と感じる。ここには、遺伝的にすり込まれた生物的な本能があるようだ。

 

■男性が自動的に想像するエッチな夢想

 

 文化人類学では、過去の一夫多妻制を認めている未開社会でも、ほとんどの人が、一人の人としか婚姻関係を結ばないことが明らかにされている。現在の一夫一婦制は、キリスト教が形成した法体系の影響が大きいといわれており、必ずしも合理的な理由が存在するわけではない。しかし、最大の理由は、男性によって、多数の妻たちとさらに生まれてくる子供たちを、食べさせるだけの食料を手に入れるコストがバカにならないためだ。人類が誕生して200万年あまりの狩猟採集社会では、常に食料は足りず、その人の経済力が大きいかどうかに、多くの妻を持つことができる傾向があったようだ。

 

 しかし、男性は、そもそもどうしようもない生き物で、多数の女性を自分のものにしたいと考える。

 

 2002年にアメリカに進出しようとしたユニリーバが、男性用芳香剤を売り出すために、マーケティング調査を行った。その結果は興味深い物だった。男性は一日のうちに32回もセックスのことを考えている事が明らかになったのだ。それが明らかにしているのは、男性は自動的にそういうことを考えてしまうようにできているということだ。(※注1)

 

 実際、ユニリーバは、男性がどのように性を考えているのかの徹底したオンライン調査を行ったという。アメリカ、イギリス、メキシコ、南アフリカ、そして、日本。15歳から50歳までの世界各地のものだ。匿名で調査されたものは、女性を口説いたりするときや、どんな場面を想像するとか、女性を前にどんなときに自信を失うか、一日何回セックスのことを考えるのか、といったきわどい質問が含まれていた。それによって、全世界の男性がなににそそられるのかが明らかにされた。

 

 「回答は、文字通り正直そのものだった。男性たちが挙げた夢の場面第一位は、いかにも月並みで、出来の悪いポルノ映画のような内容だった。自分がバスタブかスパで、湯に浸かっている。そのまわりを裸の女性が3、4人取り囲んでいる。かたわらにはコルクを抜いたシャンパンのボトルがあり、吹き出した泡が湯の中に流れ落ちている……」(P.113-114)

 

 なんとも、どうしようもないイメージだ。

 

 そのため、特に若い年齢で、女性経験の少ない男性に狙いを定めた広告キャンペーンを張った。男性が、その芳香剤をかけた瞬間に、突然、山のように女性が押しかけてくるというCMキャンペーンだ。

 

 このCMの効果は強烈で、芳香剤は大ヒット。ところが、たくさん浴びるほど女性を惹きつけられると勘違いした人たちが大量に使い始め、学校がその香りでいっぱいになり匂うようになるところまでいき、アメリカでは問題になったことがあるそうだ。

 

 もちろん、そんなことは現実には起こらないことは、ちゃんと彼女がいたりする人だとわかるよね? わからない? オレはリア充じゃない? そういうウブな人がこのキャンペーンに見事にはまった。

 

■ソシャゲの女の子は男性にとっての理想郷

 

 現実に、たくさんの女性と一度に付き合うことは、現実的ではない。男性が夢想する世界と、現実とは常に大きなギャップがある。

 

 男性がハーレムを夢想するには理由がある。自分の遺伝子を残せる可能性が高まるからだ。一方で、女性は、男性に自分だけに集中することを望む。それは人間の子供が生まれたあと成長するためには非常に時間がかかるためだ。女性もまた、自分の遺伝子を残そうと、他の男性をどうすれば排除でき、安定したいい生活ができるのかを、未開社会の時代から考えて行動する。

 

 男性向けのラノベの世界は当然、そういう女の子に囲まれたハーレムの世界、男性の理想郷になっている。また、モバマスのような、特に、男性向けのソシャゲで、女の子を育てるタイプのゲームも同様だ。数々の女の子に褒めちぎられ、擬似的であれ恋愛感情を持たれているような気分になる。擬似的なハーレムによるリア充だ。

 

(※注1)マーティン・リンストローム『なぜ、それを買わずにはいられないのか』(文藝春秋)

2013年2月25日 19:23