「アイドルマスター シンデレラガールズ」にはまって2ヵ月

 モバゲー向けに提供されているソーシャルゲームの「アイドルマスター シンデレラガールズ(通称モバマス)」が面白くて仕方ない。昨年11月から始まったこのゲームは登録ユーザー数が200万人を越えるまでになった。

 


 私自身のプレイ期間はほぼ2ヵ月なのだが、2?3時間ごとにはついつい起動して、ちくちくボタンをクリックしてしまう。ただ、このゲームが、なぜ、おもしろいのか今ひとつよくわからない。

 

 私は、月に数万円を突っ込むような猛者に比べると、あまり課金していない方だと思うのだが(というか月に数百円ぐらいしか使ってない)、本作の開発・運営チームの人たちの実力に、ただただ感心するばかりだ。

 

 

■同じようなカードバトルのソーシャルゲームでもかなり違う

 

 このゲームそのものは、今流行しているカードバトルゲームの一般的な要素は全部揃っている普通のソーシャルゲームだ。ガチャがあり、育成があり、回復アイテムがあり、合成があり、チームがあり、対戦機能があり、イベントがあり。


 収益の基本は、レアアイドルが手に入るプレミアムガチャだろうし、要所要所で使いたくなる回復アイテムだというのもわかる(私が課金するのもこの点)。他のゲームと根本的に違うところはないように見える。

 

 当然、ユーザーデータを分析や解析も行っているだろうし、適度に特に一般的なアイドルの出現率といったものもコントロールしているだろう。絶妙なタイミングで、回復アイテムを使いたくなるように出てくるのもわかっているし、その辺も普通のゲームと変わらないだろう。

 

 だけど、ソーシャルゲームの開発関係者と話しても、なぜ「モバマス」が優れているのかの意見が一致しない。誰もがすごいという高い評価をするのだが、人気の理由の分析がばらばらで、今ひとつ統一した意見にならないのだ。

 

 

 私自身、ここ数ヵ月で15個以上のカードバトルゲームを遊んできている。元々はPCやiPhoneのネイティブアプリを中心に遊んでいたが、だんだんとiPhone用のHTMLベースのゲームも遊ぶようになった。音声もなければ、グラフィックスも大してきれいでもなく、どのゲームも似たり寄ったりのように見える。ただ、だんだんと、良いソーシャルゲームと悪いソーシャルゲームは明確にあるのだな、ということは区別が付くようになってきた。


 そのなかで、遊び続けているゲームで、いくつか残ったタイトルが「モバマス」だったというわけだ。そして、一番時間を使っている。

 

 

 おもしろくないと感じるソーシャルゲームはテンポが悪く、何を目標にして遊んでいけばいいのかが、だんだんとわからなくなっていく。あるゲームでは、魅力的なキャラクターカードが出てくるのだが、対戦機能を実装が間に合わない状態でリリースしていた。そのため、途中まではカードを育てるのが楽しかったのだが、ひたすら同じような敵と戦い続けるのが面倒くさくなってきて辞めてしまった。また、ダークファンタジーを主体にしたゲームも多いが、気持ちの悪いキャラを育てようという気分にも、あんまりならなくて挫折した。

 

 

■ソーシャルゲームに「ロングテール」は成り立っているのか?

 

 アイテム課金型の「フリーミアム」モデルは、ユーザーのお金の支払い方は、よく知られているようにWiredの編集長であるクリス・アンダーソンが提案した「ロングテール」という形に近い状態になることが知られている。


 この概念は、Amazonを例として説明が行われたものだが、売上の上位20%が売上の80%を占めるというパレートの法則として紹介されることが多い。ただ、Amazonのケースでは、たくさんの陳列を容易に探すことができるインターネット特有の環境を利用して、一般の書店では掘り起こすことができなかった残りの80%のニーズを取り込み、20%の収益を出せるため、収益にばかにできないほどの貢献が存在するという考え方だ。

 

 

 ソーシャルゲームやPCのオンラインゲームの場合にはよく知られているように、課金をする5?10%程度のユーザーの支払いによって収益が支えられる。大半のユーザーはお金を支払うことがなく、ただ乗りをして遊んでいるという状態になる。「ロングテール」のテール(しっぽ)の部分の支払いがゼロという状態で、また離脱率も高いため、この理論がどこまで当てはまっているのか怪しい部分がある。


 また、その大量のユーザーのコストが、お金を払っているユーザーが負担している構造になるため、ビジネスモデルとしては、パッケージゲームに比べて「いびつ」ではないかという指摘が行われてきている。これは、アメリカのソーシャルゲームについても同様で、もっと新しい課金方法を見つけるべきだという、議論はくり返されている。しかし、2000年に韓国でアイテム課金のビジネスが登場して以来、このビジネスモデルを覆すようなモデルは登場していない。

 

 

 しかし、一方で、無課金ユーザーを多数抱えておくことが、ソーシャルゲームでもオンラインゲームでも、重要であることも知られている。お金を支払うユーザーの優位性を感じる気持ちを形成するからだ。そのゲームの世界の中で、「オレはスゲー」という気持ちを持続してくれるためには、ジョーク風にいうなら無課金の「愚民」がたくさんいればいるほど感じることができるからだ。

 

 そうした、人間の本能的な部分を刺激して、収益を引き出そうという仕組みも、ソーシャルゲームがどこか「いびつ」ではないかと、社会的には批判されやすいポイントになっている。ユーザーの行動データを解析して、ユーザーがどんな刺激を求めるのかを先読みして、仕掛けを作り課金させる。そして、できるだけ重課金へと移動させていく。それが、理想的な形態だ。

 

 もちろん、どれくらいのユーザーが課金をしており、さらに課金ユーザーが月にどれぐらいの支払いを行っているのかという情報は、各ゲーム会社にとって、ノウハウの中心部分であるため、ほぼ表に出てくることはない。そのビジネスの不透明さも、「コンプガチャ問題」のときに批判を受けた部分でもある。特に、投資家向けの情報開示の少なさは、現在でも、その点に対しての不満は高い。「人間の本能を利用した気味の悪いビジネス」なのではないか、という潜在的な批判が収まっているわけではない。

 

 

 ただ、この2ヵ月あまり、延々と「モバマス」を遊び続けることで、私自身は少し意見が変わり始めている。課金ユーザーの中だけで「ロングテール」が成り立つと考えた方がよいと思えるのだ。私のような低課金ユーザーをバンダイナムコゲームスは軽視していないように感じられる。多分、それが楽しめている理由なのだろうと。

 

(C)窪岡俊之 (C)NBGI

2012年6月18日 19:44