南国経営ゲーム「トロピコ4」から見える国家破綻(下)

 先週に続いて、ブルガリアの会社が開発した「Tropico4(トロピコ)」の話。

 

 国の財政が悪化し始めたので、とにかく緊縮財政だと、一度、紙幣を2万ドル増刷(設備購入に制限がかかる)、全体の賃金の抑制を始めた。

 

 観光業のアピールのために、宣伝広告も積極的に展開。資金は増えたり減ったりしていたけど、減少自体は止められず、一時的に回復したかに見えても、翌年は減少。どんどんと、国家のキャッシュフロー(自由に使えるお金)は失われていき、10年経たない間もなく赤字に転落。赤字に転落すると、新しい建物を作ることもできない。とにかく黒字化のために緊縮財政をしなければならない。

 


 やむを得ないので、さらに賃金カット。もう大胆な全体的な大幅カットにまで踏み込んだ。(このゲームは税金という考え方がなく、個々の国民の賃金のコントロールと、住居の賃料を決めることで、税金相当というルールになっている)

 

 ところが、それでも赤字が止まらない……。支出は減少しているはずなのに、今度は観光業や輸出品のサービスレベルが悪化したために、観光客が減少し、輸出の金額が減少するという結果に。

 

 赤字は止まらず、あっという間に、マイナス20万ドルオーバーに。国債増発のために、国際関係は悪化していく。それでも、辛うじて選挙に勝って政権は維持。

 

 しかし、経済の好転は見られないので、最終手段で、賃金を果てしなくゼロにした。どんどん島中にできあがるスラム街。当然のように、さらに税収が減少。そして、そこまでやっても一瞬黒字化するのに、翌年には、さらに赤字が拡大……。下がる国民の幸福度……。

 

 最終的に、先進国の攻撃をなくさせる核ミサイル計画まで進めていたのに、その開発資金もなくなって、国際関係が最悪になったソ連が侵攻してきて、ゲームオーバー。

 


 このゲームの教訓は、国家財政が悪化すると、打つ手がなくなるということ……。

 

 石油という恩恵を得ていた状態が、ある種、異常だったわけで、それがなくなると国家を成立させていた基礎条件が崩壊する、そうするとどんなに調子がよかった国家も、どうしようもなくなるという恐ろしさを感じさせられた。

 

 財政の余裕がないまま赤字は拡大し、仕方ないので賃金カットすると、収入が減少するので、GDPがさらに減少し、税収が減るという悪循環。

 

 「Tropic4」のシナリオを遊んでいて思ったのは、落ちるときの速さと、一度財政が悪化したときの手の打てなさ。赤字の状態では手が打てないので、何とか手を施そうとするのですが、打つ手ための選択肢が、まだキャッシュフローが黒字の状態であっても、減少する時には選択肢がほとんどない。

 

 ゲームを通じて、国の債務危機問題を考えさせられるとは……。

 

 日本でも、国がなんとかしなければという指摘は、さんざん出ますが、本当に今の日本の政府って、打てる選択肢が限られているんだなあというのが、実感として感じらる結果に。

 


 もし、この状況を改善するには、私がプレイした場合は、どうすればよかったのか?

 

 多分、片っ端から、管理費用がかかる住居とかを破壊して、サービス産業系の人は、掘っ立て小屋に住んでもらうようにすればよかったのかなとか……。でも、破壊を設定しても、シムシティのようにすぐにビルが破壊されず、半年近く待たされるので、その間はお金がかかり続けるので、間に合わなかったよなあとか……。また、この場合も国民の不満が高まる一方だったよなあとか……。

 

 まだ、資金が残っているうちに、軍事独裁政権に切り替えて、国民を統制すればよかったのかなあとか……。しかし、大幅な賃金カットを始めたときには、すでにキャッシュフローはマイナスだったので、そういう手も打てる状態ではなく……。

 

 強いリーダーシップって、結局、独裁政権のことじゃん。って、不景気が行くところまでいくと、プーチンみたいなのが出てくるのって、こういう背景があるんだなあと考えてみたり。 そして、ロシアの財政を回復させたのは、天然ガスといった資源による収入が大きかったりして。


 

 でもまあ、これは所詮は、ゲームなので、何回かやれば最適解は見えてくるんだろうと考えはした。だけど、現実はそんなに甘くないし、やり直しはきかないわけで。 YouTubeにとてもうまく街を発展させている人の動画があがっているのだけど、最初から丁寧に都市計画をしたんだろうなあと想像できた。

 

 ちなみに、2回目は観光立国を、最初から目指すシナリオをだったのだが、エコで富裕層が集まるまさに南の島という観光地化を狙って、風力発電で全島の電力をまかなおうとしたのだが……維持コストが高すぎの割に発電力が小さい……。

 

 10機以上も立てたら、利益のほとんどが、風力発電の維持管理費に消えるという状態で、黒字ではあるけど、あんまり儲からない。しょうがないので、ガス発電に切り替えて、風力を全部ぶっ壊したんだけど、それでもあんまり儲からない。異様に成長の遅い国家になりました。

 

 ゲームの設定にもよるので簡単に結論づけられませんが、エコ発電では、とても国の電力消費量をまかないきれない結果になった。

 

 この2回目のプレイの教訓は……観光立国って、石油などの二次産業より、あんまり儲からない……。 秋葉原が、萌え文化が中心になっても、電気街時代に比べると儲からなくなったと言われる背景はこういうことかと。

 

 なんだか、いろいろ国家の経営という意味で教訓を感じさせるゲームだったりして。

 

 残念ながら、ソフトウェア産業といった、現在の先端産業は存在しないので、どういう影響をもたらすのかは試すことができないのだけが。

 

「トロピコ4」

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2012年1月31日 10:01