南国経営ゲーム「トロピコ4」から見える国家破綻(上)
年末に遊んでいたゲームのことをプレイ日記風に話してみたい。PC向けの「Tropico4(トロピコ)」(日本語字幕版)というカリブ海に浮かぶ南国の島を、経営するゲームだ。都市を発展させていく「シムシティ」と、AIシステムを利用してキャラクターを育てていく「シムズ」を混ぜたようなゲームで、かなり熱中して遊んでしまった。
それで、初めての経営で、本当にショックを受けた。それで、このゲームの恐ろしさを感じさせられたのが、国家が崩壊するプロセスを経験させられたから。
それで、この手のゲームの常で、あっという間に時間が過ぎてしまう。街が育っていって、人口が増加していく様を見ていると、やめられなくなってしまうんだよね。このゲームは簡素AIを持った人間が登場し、それぞれが欲求を持っていて、その幸福度をうまくコントロールしていくタイプ。資源立国や、観光立国、軍事政権、共産主義政権といったまともな国家から、どうしようもない国家まで、カリブ海諸国そのままのゲームプレイができる。
10年ぐらいに一度選挙があって、そこで負けると、ゲームオーバー、また、1950年代から始まるのでアメリカとソ連が存在していて、米ソ冷戦下。どちらの国も干渉してくるので、国際関係も重要で、関係が悪化すると侵攻されるのでゲームオーバーにもなる。
だけど、ゲームバランスは結構甘めな印象でちょっと物足りない(実はそんなことはないことは、後で判明)。
びっくりしたのが、このゲームを開発している会社で、ブルガリアの会社だった。ブルガリアにゲーム会社なんてあるんだろうかと驚いた。つい20年前まで、独裁政権で鎖国していた国じゃなかったっけ。ヨーグルトのイメージしかない国。
それが、カリブ海の国家経営ゲームを作っているのだから、変と言えば変。
Windowsゲーム市場は、ドイツやイギリスが強いので、そうした地域で遊ばれているのだろうと思う。東ヨーロッパでも欧州圏を前提としたPCゲームの会社はいくつかある。実際に、パブリッシャーはドイツの会社だった。
おもしろいのは、どうがんばっても、掘っ立て小屋が立ってしまうところ、どうすればこれをゼロにできるのかがわからない。治安の悪いところには、ごちゃごちゃ立ってすぐにスラム街になってしまう。そこのど真ん中に警察署を押っ立てても、まだそのまわりにスラム街ができたまま。この辺に、お国事情を感じてみたり。 実際に、EUに2007年に加盟しているが、EUの中でも最貧国だった。
ゲームはシナリオをクリアして、継続して国を発展させていた。
資源立国化を目指すシナリオだったので、簡単に輸出で収入が増えていく。国民に支払う給料もどんどん上げて、ゲーム中の重要なパラメーターの「幸福度」もうなぎ登り、島のあまったところを開発して、観光立国もめざす感じも、まあまあ順調。人口が700人(この島では1人=100人ぐらいのイメージで、800人ぐらいになると割と大きな国)を越え、ちょっと人口が多すぎるなあと思いながらも、交通渋滞など、いろいろ問題は起きていたけど、なんでも建設できる100万ドル以上の少々何が起きても大丈夫な貯金もあって、余裕なゲームだなあと思っていた。
ゲームプレイは政権担当50年を経過し、21世紀に突入。素晴らしいと褒めちぎられる。
ところが、ある日、突然、国家財政が赤字に転落し始めた。
原因は、油田の油床の原油が尽きたというメッセージが出てから。
うげげげげ、初めてのゲームプレイということもあって、収支の詳細をまじめに見てなかった。この国の税収をどんどんと押し上げていたのは、「石油」だったのだ。油田に限界があるなんてことも知らなかったし、3機も精油所を建てていたので、儲かっているとときにはよかったけど、逆になると、致命的だったのだ。
毎年10万ドルずつ減少が始まったけど、まあ、代わりの精油所を建てれば、何とかなるだろうと思っていたら、なんと島のまわりにこれ以上の油床がない……。
なんせ、国民の幸福度を引き上げるために、賃金を上げまくって、サービス水準を最高クラスにまで引き上げていたので、あっという間に失われていく資金。
他の鉄鉱石や、ラム酒工場、観光産業があるさ、と思っていたのだけど、石油に比べると話にならないほど利益を生まない。これまで、濡れ手に泡だったんですな……。
「トロピコ4」
2012年1月24日 14:04