ソーシャルゲームは個人の嗜好性分析にたどり着く(上)

 読まなければいけない本というのは、ほとんど無限にあるもので、片っ端から読んできてはいるのだが、それでもさらに調べれば調べるほど、調べなければならない領域の広がりが続いていく。

 

 このところ、ゲームから、IT分野まで広げて、「イノベーション」がどのように引き起こされているのかに関心を持っている。ゲームは、コンピュータの発展史と深く結びついており、新しい技術が一般消費者レベルに応用されるようになると、インタラクションの魅力を持つからこそ、まず応用されるようになるのが、ゲーム分野でもあるからだ。

 

 ソーシャルゲームも典型的な現象で、アメリカ発のFacebookでも、日本のDeNAやグリーといった企業もスタートはゲームプラットフォームに自分たちがなるとはまったく考えていなかった。典型的なイノベーションを引き起こす「意図せざる成功」だった。

 

 

 年末から正月には、広島に帰郷する。その間に、必ず、大型書店に立ち寄る。そこで、なかなかネットで中身を見つけられないような本をみて、ぱらぱらと読んで過ごす。もちろん、ゲームショップでどんなものが売れているのかを調べて回ることも仕事の目的で、文房具コーナーでシールが大ブームになっているのを見て驚かされた。

 

 それで、欲しい本を合計していくと、一瞬で1万円を超えてしまうので、ぐっと我慢。そもそも帰郷時にも読まなければならない本を山積みにして戻っており、なんだかんだと片付けたのは3冊程度で、まだまだきりがないからだ。

 

 一方でゲームも遊ぶので、とにかく時間が足りない。この年末は2本のゲームを延々とやっていて、家族のひんしゅくを買った。それらのゲームについては、またそのうち。

 

 それで、本屋にとっては迷惑な話だが、その場で、アマゾンの「ほしい物リスト」にどんどん登録しておく。それから、後で購入することが多くなった。

 

 

 それでも、とても気になった本があって、一冊だけ結局アマゾンで購入した。ジャック・アタリの「21世紀の歴史――未来の人類から見た世界」という本だ。

  

 

 

 

 前半は人間の歴史の政治学的な観点から要約した話が描かれ、後半は、2025年に何が起きているのかを予測しながら描いていく内容。

 

その中で、引っかかっている言葉がある。

 

「超帝国」や「超紛争」、「超民主主義」といった新しい概念の登場を予測している。それらは、ITの進展が行くところまで進み、個人が監視化された社会が登場することにより国家(やその周辺)がさらに強くなっていく姿が書かれているようだ。

 

 

 まだ読み進めている最中で、ぱらぱらとめくった上での感想なのだが、IT化による国境の消失は、特定の地域のクラスター化をさらに押し進め、特定の権力の強化を引き起こすということが、予測されているのではないだろうかと考えている。

 

 アメリカの80年代に続き続けた不況を脱せさせるきっかけを作ったのは、90年代に花開いたアメリカのIT産業の勃興(この中には、マイクロソフトやアップルも含まれる)が大きな要因になった。

 

 現在になって、ソーシャルメディアの中心地が、アメリカの西海岸のサンフランシスコからシリコンバレー地域を中心に、新たにクラスター地域の形成が進んでいるのも偶然ではない。様々な情報と、資金とが集約化されることで、世界をリードする存在であることは大きく変わっていない。

 

 毎年3月に開催される「Game Developers Conference」の内容も、ここ数年、家庭用ゲーム機から、ソーシャルゲームへのシフトを始めているが、これらも決して偶然ではない。

 

 また、GoogleやFacebookの登場は様々な意味で、個人の情報の集約化を進める力を持っていることを世界に示した。

 

 それは国家を超える力を持ち、逆に、相対的に国家の力を弱めている。

 

 個人情報の固まりを、特定の私企業がどんどんと所有していくことは果たして良いことなのかどうかと言うことは深刻な問題になってくるだろう。

 

 その未来を感じさせる一端は、昨年の「PSNの個人情報漏洩事件」で垣間見せる面があるように感じられた。もし、情報がユーザーの名前とパスワードといった情報だけでなく、個人の嗜好性まで含んでいるとしたら、どうなるだろう。そうした情報をPSNは限定的にしか持っていなかったと考えられる。
 

 

 しかし、近年登場する技術は確実に、そこまでたどり着いていくのだ。それらの情報が流出した場合には、とてつもない個人情報の流出になってしまうだろう。今よりも、近未来にITが発展していくに従い、リスクは増大していく。

 

 多くの企業が、利用者の嗜好性を把握し、それを積極的に利用していく時代に突入しようとしている。そして、それはユーザーにとっても、企業にとっても、好き嫌い関係なく、避けられ得ないことなのだ。

2012年1月10日 15:00