「福島Game Jam in 南相馬」(8月27日?28日)が持つ可能性(下)

  「東北ITコンセプト 福島Game Jam in 南相馬」というイベントを8月27日(土)28日(日)に、私自身が代表を務めている国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)と、ユビキタスエンターテインメント、福島県南相馬市が中心になって、南相馬市民文化会館で開催する。

 


完全な回復には時間がかかると思われる現地


 6月に私自身も現地に行って様子を見てきている。仙台から、南相馬市へとずっと海岸沿いを下り続けた。飛ばせば1時間ちょっとという時間だ。海岸
線がずっと2〜3キロ津波でえぐられている様子が、まだ残っており、これがずっと東北地方の海岸を続いていると思うと、いかに今回の震災が、甚大
な被害であったのかを感じさせられる。


 本来、この海岸線を続く国道6号線は、仙台から茨城、水戸を越え、上野
にまで続く街道である。ところが、南相馬市の途中の20キロ地点でぷつん
と切れる。道路の半分をふさぐ、機動隊のバスに、物々しい装備で立ってい
る警官。あたりは田んぼが広がる美しい田舎に過ぎないのに、ここから制限
区域であるという現実感は沸かない奇妙な感覚を受ける。

 

 

 原発の制限区域が障害となるため、そのまま真っ直ぐに進めない。そのた
め、山道に入り、福島側に大回りをしなければならない。その途中の山道も
、忘れられたように美しい広葉樹林が広がっている。途中で、すれ違うパト
カーの異様な多さをのぞくと、原発事故という実感は、その場で感じること
は難しい。


 8月初旬に、打ち合わせのために再び現地を訪れたが、津波を受けた場所
は、まだまだ復旧が進んでいなかったが、一方で、一面雑草に飲み込まれよ
うとしていた。自然の回復力の強さや、時間の経過を感じずにはいられなか
った。


 仙台から首都圏まで南相馬市を通って一気に通じる、長年の悲願であった
、常磐自動車道の全線開通を秋に控えていたそうだが、工事は中断したまま
だ。再開の見えない中、重機が、放置されたままになっている。
 現在、放射線量の安定化にともない、南相馬市南部の制限区域の範囲について、政府内で再検討が行われていると聞いている。すでに商業施設の再開などが、市内では進んでいるとはいえ、生活が元に回復するには、まだ何年もかかるだろう。

 

ITによる復興提案はあまり行われていなようだ


 南相馬市は、今回の「福島Game Jam in 南相馬」を市を上げて、積極的に受け入れることを決めて下さっている。共催組織として、名乗りを上げて下
さり、市民文化会館(ゆめはっと)という、市内でもっとも設備の整った場所の提供を決めて下さっている。


 今後、福島では、一時的に政府等の資金を通じて、生活が成り立ったとし
ても、将来に対しての問題が解決されているわけではない。
 大きな問題は、農業・漁業などの産業の基盤が、今後、何年に渡っても商
売として成り立たない深刻な状態が続くと思われることだ。「福島産」とい
うものは、たとえ安全性が確認されたとしても、将来にわたって、風評被害
から逃れることができない。


 そんななかで、どんな未来を描くことができるのだろうか。どんな将来を
被災地域で生きる若者たちは見つけていくことができるだろうか。自分たち
で、生活を作っていける可能性を、考えなければならない。復興地域は、生
活の復旧だけではなく、将来に向けて街を再建するための方法の模索をはじめなければならない段階に入りつつある。


 南相馬市が今回、積極的に賛同して下さったのは、土地を選ばなくてでも
できるITを復興の一つの可能性として模索することに共感して下さったため
だ。今回の震災で被害を受けた東北三県のなかで、現在まで、復興のなかにITを位置づけているプランの提案は行われていないと聞いている。

 

 

広域的なITの人材育成を念頭に置いた「東北ITコンセプト」

 

今回の「福島GameJam in 南相馬」は、単発のイベントではない。ゲームと
いったデジタルメディアを利用した、広域的なクラスター地域形成を首都圏
と東北地域に広げていこうという「東北ITコンセプト」というプランへの発展を計画している。
 

それは、世界的に今起きているゲーム開発の方法の変化を、復興と結びつ
けて、新しい人材育成にもつなげていくことを念頭に置いている。
 今の時代、ゲームの開発技術を学ぼうと思うならば、どこかの高等教育機
関に属したり、ゲーム会社に勤めなくとも学習することができる。学ぶ手段
がほとんど存在しなかった、10年前と大きく状況は変わりつつある。
 

 そこそこのスペックのパソコンとインターネット回線さえ持っていれば、
開発環境は極端までに安い無料に近い環境で構築できる。インターネット上
には情報がごろごろしており、ビデオチュートリアルなども簡単に受けることができる。


 そして、何かを作れば、スマートフォンのネット販売などの仕組みを利用
すれば、世界に対して配信することも簡単にできてしまう。そのため、HTML5向けのプログラムや、Unityなどのゲームエンジンに注力して技術を習得していくことで、新しい時代に対応した開発者に自分自身で成長していくことができる。


 つまり、原理的には、学ぶ人がどこに住んでいるのかという、土地を選ば
なくなっているのだ。むしろ、本人がどれほど本気でそれを実現化させよう
としているのかという、やる気の方が重要度は増している。
 もちろん、リアルに会って指導を受けたりする意味合いがなくなっている
わけではない。だから、リアルに顔を合わせて学べる場となるゲームジャム
を組み合わせる必要がある。ネット上での広域的な学習環境を整え、それら
のものを高等教育機関と結びつけていく。一方で、インターネット上を通じ
て、東京に集中しているゲーム開発者からもノウハウを学ぶようにしていく
。そして、東北などの地元の人の中から起業をしたり、仕事を得たりできる
ような環境を行政が取り組んで整備していく。
 

緩やかに、産官学を組み合わせて、日本全体を広域なゲームのクラスター
地域へと成長させるモデルを模索することはできないだろうか、と私自身は
考えているのだ。


 但野謙介市議と、様々議論をしているが会話で以下のようなことを言われ
ていた。「例えば、力をつけて地元の人が東京のゲーム会社などで何年か働
いて経験を積むというのでも構わないと思っているんです。ただ何年か経っ
た後に、南相馬に戻ってきて、会社を始めよういう人が出てきてくれると本
当に嬉しい。そこから地域に新しい仕事を作っていくことができるかも知れ
ない」今、日本のゲーム開発力が、海外よりも、相対的に低下しているのは、結局、人材を育てる点が、弱いことが大きな原因だと、私自身は思うようにな
っている。

 

 しかし、多くの人がゲームを自由に開発できていた80〜90年代初
頭時期のような土壌を再び、作り出すことを通じて、もう一度、もっと違っ
た日本のゲームを魅力を作り出す世代が登場することを実現できるのではないかと思っている。
 「東北ITコンセプト 福島Game Jam in 南相馬」は、そのための一つの挑戦である。ゲーム業界の側から、復興支援でもあり、同時に、日本のゲーム産業から、再び様々な世界をアッと驚かせるゲームが次々に出るような時代を作るための、基礎作りにするべきだと思っている。

 なお、当日の会場となる南相馬市民文化会館は、一般の方が来場されても自由に見学できるようにする予定だ。
 

 また、当日の模様は、27日の12時頃から、28日の夕方まで、現地から、キ
ュー・エンタテインメントの水口哲也さんなどをパーソナリティとして参加いただきつつ、USTREAMを通じて中継を行い続けることを予定している。
 

 詳しい情報は、IGDA日本のページ(http://www.igda.jp/ )を確認していただきたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

2011年8月24日 18:12