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佐野正弘

東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では携帯電話業界事情から、スマートフォン、モバイルマーケティング、若者のケータイ文化に至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。著書にXperia入門ガイド(翔泳社)、SEO対策のウソ・ホント(毎日コミュニケーションズ)など。

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SMSの相互接続が実現、その利用は広まるか?

SMSの相互接続が実現、その利用は広まるか?

 

  ▲受信したSMSの例。半角160文字程度の短いメッセージがやり取りできる

 6月1日に、ドコモ、KDDI、ソフトバンク、イー・アクセスの4社は、7月13日からSMS(ショート・メッセージ・サービス)の相互接続を開始すると発表した。そこで今回はSMSと相互接続に至る背景、その影響などについて考察してみよう。

 そもそもSMSとは、携帯電話の回線を利用して、半角160文字程度の短文を送りあうことができる、メッセージサービスのこと。ほとんどの携帯電話に用意されている基本的なサービスであり、日本では1通2?5円程度でメッセージの送信が可能だ。キャリアによって名称や仕組みがやや異なり(auの場合は「Cメール」)、送受信可能な文字数や使える文字などに若干の差があるものの、サービス内容は大きく変わらない。
 

 このSMS、海外では広く利用されているサービスとなっている。国・地域を問わず、通話よりも安い料金でメッセージのやり取りができることから、日常的な会話から決済手段に至るまで、非常に幅広い用途に使われているのである。それゆえSMSは多くの国の人々にさまざまな影響を与えており、例えば人気のソーシャルサービス「Twitter」に、140文字という文字数制限が設けられているのには、SMSの文字数が大きく影響したといわれている。

 だが日本の場合、SMSは同じキャリア同士でしか送受信できないようになっていた。例えばNTTドコモの携帯電話の場合、同じNTTドコモの携帯電話同士でしかSMSのやり取りはできず、auやソフトバンクモバイルの相手とSMSを交わすことはできない。



▲日本におけるSMSと携帯メールの違い(NTTドコモの場合)。相手先の指定や文字数、送信可能な相手などが異なる

 この問題を解消するべく、日本の携帯電話各社は2009年9月に、SMSを異なるキャリア間同士でもやり取りできるよう検討することに合意。そして今年、ついにSMSの事業者間接続が実現する形となったのである。これと同時に、各社はSMSの送信料を値下げ(NTTドコモの場合、1通5.25円から3.15に変更)したり、送受信文字数を増やしたりする(auの場合、半角100文字から170文字に拡大)するなどの施策を打ち出している。

 しかしここまで読んでいて、「なぜSMS?」ということに疑問を抱く人が少なくないかと思う。なぜなら、日本でも携帯電話によるメッセージのやり取りは日常的なコミュニケーション手段として広く利用されているものの、それはSMSではなく、NTTドコモの「iモードメール」をはじめとした、いわゆる“携帯メール”だからだ。

 日本では、まだ携帯電話契約数が5000万に満たず、携帯電話によるメールの利用が広く普及していなかった1999年に、NTTドコモが携帯電話からインターネットのサービスが利用できる「iモード」を開始、人気を博した。と同時に、送信可能な文字数が多い上にキャリアを問わずメールのやり取りできる、iモードメールをはじめとした携帯電話によるEメールの利用が一気に普及。そのため、他社の携帯電話に送信できず、また文字数の制約も大きい、SMSの利用価値は低くなってしまったのである。

 そして現在、携帯メールはパケット定額制など各種割り引き施策の普及により、写真を添付したり、「デコメール」などで装飾を施したリッチなメールを、異なるキャリア相手でもタダに近い感覚で送受信できたりするのが当たり前となっている。さらに最近では、先に上げたTwitterや、各種SNSなどソーシャルサービスの利用が携帯電話でも広まってきており、こちらもパケット定額制のサービスを適用することで、料金を気にせず利用できる。

 一方海外でも、iモードの登場と同時期に、同種の携帯インターネットサービスが登場したものの普及せず、日本のようにEメールの利用が広まらなかった。それゆえiPhoneをはじめとしたスマートフォン人気が高まる2008年頃まで、パケット定額制、ひいてはデータ通信サービスの提供や利用も大きくは広がらなかったのである。日本と海外とでSMSの重要性が大きく異なるのには、こうした背景の違いがある。

 それゆえ日本においては現在、海外に友人や家族がいるならともかく、(家族間などの例外を除き)送信するのにお金がかかる上、短い文章しか送れないSMSを利用する理由を見いだすことができない人が大多数を占めているといえる。無論、SMSの相互接続が実現することで、電話番号しか分からない相手にも、キャリアを問わずメールを送ることができるようになるというメリットはある。だがそれでも、日本では既に普及している他のサービスと比べ、明確なメリットに欠けることから、相互接続後もSMSの利用は限定的なものにとどまる可能性が高いと考えられよう。

2011年6月3日 15:42