プロフィール
佐野正弘

東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では携帯電話業界事情から、スマートフォン、モバイルマーケティング、若者のケータイ文化に至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。著書にXperia入門ガイド(翔泳社)、SEO対策のウソ・ホント(毎日コミュニケーションズ)など。

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携帯電話を“ユーザーの視点”で見るということ

 現在多くのメディアにおいて、さまざまな角度から携帯電話に関する記事が掲載されているのは、多くの方々がご存じの通りであろう。特に昨今はスマートフォンがブームとなったことから、スマートフォンやそれに関する情報が大きな注目を集めたことで、携帯電話に関連したニュースが増えているように感じる。

 それを示す例として、“プラチナバンド”が挙げられるだろう。利用する側からしてみれば本来、携帯電話は通話や通信ができさえすればよく、どの周波数帯を使っているかを気にすることではない。にもかかわらず、電波の免許獲得や周波数帯の高低などが大きなニュースとして取り沙汰されるというのは、従来では考えられなかったことでもある。それだけ、携帯電話の世界への関心が高まっているということなのだろう。

 だがそうした報道などを見ていて、常に気になることが1つあるある。それは、多くの記事がパソコンやIT、ガジェットに詳しい人の視点で書かれているということだ。筆者もスマートフォンに関する多くの記事を扱っているだけに、そうした視点で記事を書くことが求められることも少なくない。だがその視点だけで携帯電話の世界を見てしまうと、見えてこない部分がある。それが、携帯電話を使っている一般的なユーザーの視点だ。

 「どう変化した? 携帯電話のコミュニケーションスタイル(2)」で触れた、日本の携帯電話でSMSではなくEメールが普及した要因の評価についても、そうした視点の違いが色濃く影響している。どちらかというとオープンでフラット、かつグローバルであることを好む傾向が強いIT寄りの視点では、SMSの互換性がないことがEメール普及の要因とする説が多く見られる。だがそこには、携帯電話でEメールを好んで利用している一般層の視点が欠けてしまっており、携帯Eメールが持つ文字数や絵文字の多さなど、表現力の高さが受け入れられたことは見落とされがちだ。

 こうしたことから、筆者はなるべくIT・先進層寄りの視点ではなく、携帯電話を実際に使っている一般ユーザーの視点を重視するよう心がけている。かつてのケータイ小説、最近ではMobage、GREEなどの携帯電話向けソーシャルゲームなどがそうであったように、利用者が多く知名度もあるにも関わらず、ITやビジネス寄りの視点に立つとその姿が全く見えず、ほとんど取り上げられなかった事柄や要素が、携帯電話の世界には非常に多いからだ。

 視点を変えることの重要性を感じるようになったのは、筆者がかつてエンジニアをしていた頃、コンシューマーゲームを手掛ける企業から、主にいわゆる“ギャル向け”の携帯電話コンテンツを手掛ける企業に転職した影響が大きい。当時筆者はバリバリIT寄りのエンジニアだったので、コンシューマーゲームと比べ嗜好、動向などが全く異なるユーザーを相手にすることに対し、かなり面食らった記憶がある。だが全く異なるユーザーを相手としたコンテンツを手掛けていくことで、従来自分が見ていたのとは全く異なる所にマスとなるユーザーや市場が存在しており、メディアで取り上げられているのとは異なる視点や考え方が多く存在することに気づかされたのだ。

 そうした視点に立って携帯電話の世界を見れば見るほど、日本で携帯電話を利用している一般的なユーザーの視点に立った見方が欠けているのではないかと強く感じるようになったし、それがライターを始めるきっかけの1つにもなっている。ゆえに今後も、ガジェット好きや先進層の視点ではなく、一般ユーザーの視点を持って携帯電話の世界を見ることの重要性を、広く訴えていきたいと考えている。

 それではまた、どこかでお会いする日を。

2012年8月29日 18:22