プロフィール
佐野正弘

東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では携帯電話業界事情から、スマートフォン、モバイルマーケティング、若者のケータイ文化に至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。著書にXperia入門ガイド(翔泳社)、SEO対策のウソ・ホント(毎日コミュニケーションズ)など。

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“フィーチャーフォン”と“ガラケー”(3)

 前回、前々回と、“フィーチャーフォン”“ガラケー”といった、従来型の携帯電話の呼び方が現れるようになった背景について解説してきた。ポジティブかネガティブかといった違いはあるが、いずれの呼称も、iPhoneなどのスマートフォンが台頭し、一般化してきたことによって生まれたワードであることに違いはない。

 ではそもそも、従来の携帯電話とスマートフォンとでは、一体何が違っているのだろうか。今回は、スマートフォンの“定義”について触れてみたいと思う。

 多くの人にとってスマートフォンとは何か? と聞くと、汎用のOSを搭載し、タッチパネルで操作するもので、PC向けのWebサイトが閲覧できるフルブラウザが搭載されており、アプリで機能を追加できる……。 などの答えが集まってくる。だが実はそのいずれも、スマートフォンと従来の携帯電話を明確に区別する要素にはなり得ない。

 OSについて言うなら、iPhoneに搭載されているiOSや、BlackBerryに搭載されているOSなどは、アップルやRIMが自社で独占的に利用している、汎用とは言えないものだ。一方、NTTドコモのiモード端末のように、Symbian OSやLinuxなど、汎用的なOSを用いて作られているものもある。

 タッチパネルで操作できるという点で言うなら、まずキー主体で操作するBlackBerryの多くの端末が、スマートフォンの定義から外れてしまうだろう。また携帯電話にも、過去を振り返れば2画面の全面タッチパネルを用いた三菱電機製の「D800iDS」などがあった、さらに歴史をたどれば、1996年には全面タッチパネルを採用した、パイオニア製の携帯電話「DP-211」が既に存在している。

 

▲全面タッチパネルを採用した携帯電話は1990年代から存在する。

写真はパイオニア製の「DP-212」


 では、フルブラウザやアプリはどうかというと、これも定義を決定づける要素とは考えにくい。そもそも現在の日本の携帯電話は、既にフルブラウザが搭載されているものがほとんどだ。またアプリでいえば、Androidなどと同様、Javaでアプリを開発・提供できる仕組みは従来の携帯電話にも存在するし、auの携帯電話などに採用されているプラットフォーム“BREW”であれば、スマートフォンのように端末内の多くの機能を制御できるアプリを開発可能だ。

 “アプリを自由に配布・インストールできることがスマートフォンと携帯電話との明確な違いだ”という意見も多く見られるが、それも製品やサービスを提供する事業者の考え方による所が大きく、決定的な要素とはいえないだろう。事実スマートフォンの側にも、自由度の高いAndroidを搭載しながら、アプリの追加インストールができないようにした「らくらくスマートフォン」のようなものが出てきている。

 

▲スマートフォンの中にも、アプリの追加インストールができない

「らくらくスマートフォン(F-12D)」のようなものが存在する


 こうしたことから、スマートフォンと従来の携帯電話を明確に分けることができる要素というのは、厳密には存在しないことが分かる。両者は、固定電話から派生してきたのが携帯電話、パソコンから派生してきたものがスマートフォン、という違いしかなく(この区別の仕方も、ページャーから派生したBlackBerryを考慮するなら、厳密ではない)、日本の携帯電話のように高い機能を備えた端末と、スマートフォンとの違いは非常に曖昧なものなのだ。事実、海外の統計などでは、かつて日本の携帯電話が“スマートフォン”としてカウントされていたこともある。

 もっとも、スマートフォンのように定義が曖昧なまま“なんとなくそういうもの”として広まっているものは、ことに変化の速いITの世界などではよくあることでもある。例えばSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)を見ても、その定義の中にカテゴライズされるサービスは、Facebookやmixiなどコミュニケーション主体のものだけでなく、現在はゲームがサービスの主体となったMobageやGREEが含まれることも少なからずあるし、場合によってはTwitterやLINEなどもその範疇に含めてしまうことがあったりする。

 そもそも製品やサービスを作る側からしてみれば、別に定義を作りたくてものを作っている訳ではなく、定義付けは二の次でもあったりする。それゆえ進化が速い分野においては、さまざまな人の手によって定義が拡大解釈されたり、後から強引に定義付けされてしまったりすることも多く、どうしても定義そのものが曖昧になりがちだということは、覚えておきたい。

2012年8月21日 14:14