プロフィール
佐野正弘

東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では携帯電話業界事情から、スマートフォン、モバイルマーケティング、若者のケータイ文化に至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。著書にXperia入門ガイド(翔泳社)、SEO対策のウソ・ホント(毎日コミュニケーションズ)など。

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“フィーチャーフォン”と“ガラケー”(1)

 iPhone 3Gの投入以降、スマートフォンという呼び名が広く使われるようになったが、その一方でもう1つ、使われるようになった言葉がある。それが“フィーチャーフォン”と“ガラケー”というものだ。この2つはいずれも、2つ折りやスライド型といった、いわゆる従来型の携帯電話のことを指すものだ。しかしそもそも、なぜ同じものを呼ぶのに、2つの呼称がが存在するのだろうか? その理由を知るには、それぞれの言葉が使われるようになった背景を知る必要がある。

 まずは“ガラケー”という名称の由来と用いられるようになった背景について説明しよう。ガラケーとはそもそも「ガラパゴス携帯」の略称であり、この呼称が生まれた背景には、“ガラパゴス”という言葉が大きく影響している。

 ガラパゴスとは本来、南米エクアドル領にあるガラパゴス諸島のことを指す。ガラパゴス諸島は、他の大陸から隔絶された環境であることから、“ガラパゴスゾウガメ”“ガラパゴスペンギン”などその環境に合わせ生物が独自の進化を遂げていることで知られている。ダーウィンの進化論の起源になったことでご存じの方も多いかもしれない。それがなぜ携帯電話と結びつくのかというと、ガラパゴスという言葉が、ある事象を示すビジネス用語として用いられるようになったことにある。

 ビジネス用語における“ガラパゴス”は、ガラパゴス諸島の生物のように、製品やサービスがある固有の環境に適合して著しい独自進化を遂げたことで、他の周辺の環境から孤立してしまうことを指す。ガラパゴス化した製品はその市場に適し高度化が進む一方、世界の潮流から外れることでグローバルスタンダードから取り残され、後にグローバル製品の高機能化や低価格化によって駆逐されてしまう危惧があることから、問題があるという評価がなされることが多い。

 そしてガラパゴス化の代表例としてしばしば挙げられるのが、日本の携帯電話だ。日本の携帯電話は、iモードに代表されるインターネット接続サービスや、ワンセグ、おサイフケータイによる電子決済機能など、利便性が高く豊富な機能を備えるなど大きな進化を遂げた。だが音声通話とSMSが利用の中心であった海外においては、日本製の高機能携帯電話がほとんど受け入れられなかった。一方で近年、海外発のスマートフォンが日本にも急速に入り込み、従来の携帯電話の立ち位置が失われようとしている。それゆえ2000年代後半頃から、従来の携帯電話のことをガラパゴス化の象徴として、“ガラパゴス携帯”と呼ぶ向きが強くなっていったのである。

 その略称であるガラケーという言葉が広まったのには、iPhone、そしてAndroid搭載端末など、現在スマートフォンと呼ばれている端末が、国内に投入された影響が大きい。iPhoneに飛びつき、Androidに高い関心を示したIT先進層が、スマートフォンと従来の携帯電話を明示的に差別化する言葉として、“ガラケー”という言葉を用いるようになったのだ。

 当時ガラケーという言葉を積極的に用いる人は、従来の日本の携帯電話に対する“蔑視”の意味を込める傾向が強かった。従来の携帯電話はキャリアが主導して開発していたことから、通信回線への影響や、サポートのしやすさなどを考慮し、アプリやWebサービスの開発をするのに大きな制限を設けることが多かった。だがパソコンによる、オープンで自由なアプリ・ネット環境に馴染んでいたIT先進層は、携帯電話のキャリア主導でクローズドな環境を嫌う傾向が非常に強かったのだ。

 こうしたことからガラケーという言葉は、IT先進層が日本の携帯電話を批判する蔑称として用いられるようになり、それがIT先進層に支持を得ていた、Twitterなどパソコン寄りのWebサービスを経て広まったものと見られている。そしてこのガラケーという言葉の広まりが、フィーチャーフォンという呼称が用いられる要因にもなっているのだが、それについてはまた次回説明しよう。

 

 

▲“ガラパゴス”という言葉を逆手にとったのがシャープ。

電子書籍サービスや自社のタブレットに

「GALAPAGOS」という名称を付け、大きな話題となった。

2012年8月8日 16:50