プロフィール
佐野正弘

東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では携帯電話業界事情から、スマートフォン、モバイルマーケティング、若者のケータイ文化に至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。著書にXperia入門ガイド(翔泳社)、SEO対策のウソ・ホント(毎日コミュニケーションズ)など。

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どう変化した? 携帯電話のコミュニケーションスタイル(4)

 前回までは主に、SMSやEメールなど、携帯電話で文字をやり取りするコミュニケーションの変化について触れてきた。携帯電話のメールがコミュニケーションのあり方を大きく変えたことは間違いないが、一方で携帯電話が“電話”たる所以の音声通話については、現在に至るまでどのように変化し、我々のコミュニケーションにどのような変化をもたらしているのだろうか。

 携帯電話の音声通話も、時代のニーズとともにいくつか大きく変化した要素がある。最初の変化は、携帯電話の“音”に関するもの。携帯電話が普及期にあった1990年代後半から2000年前半、つまり2Gの時代になるのだが、この頃のコミュニケーションはまだインターネットはおろかショートメッセージもあまり普及しておらず、携帯電話の主要サービスは音声通話であった。

 しかし一方で、この時期は加入者が急増していたこともあり、基地局の整備が間に合わず、人の多い場所では携帯電話が利用できなくなるなどの問題をもたらしていた。そこで、1人当たりの通話に用いる帯域を半分にすることで、基地局当たりの接続回線数を増やし、つながりやすくするという手法がとられたのである(これを“ハーフレート”と呼ぶ)。だが当然ながら、帯域幅を狭くするということは、やり取りできるデータの量が減ることでもあり、ハーフレート導入の弊害として、音声通話の品質が大きく落ちて不満が高まることとなってしまったのだ。

 特にハーフレートを積極採用したのが、NTTドコモなど大手キャリアであったことから、当時の新興キャリアで会員数がまだ少ないデジタルホン(現在はソフトバンクモバイル)やツーカー(後にKDDIに吸収)などは、通常の帯域幅を維持する(フルレートと呼ばれる)ことで音質が高いことを積極的にアピールし、会員獲得につなげるというPR手法を実施していた。またIDOとDDIセルラー(現在のau陣営)も、CDMA方式を採用したことで、他社より音質が高くなるというアピールをしていた。こうした経緯から、携帯電話の音声通話はつながりやすさだけでなく、音質も重視したサービス展開がなされるようになったのである。

 次の変化は、音と同様に音声通話の重要な要素となる“料金”だ。音声通話の料金は従来、30秒当たりいくらという従量制で、料金プランによっては無料通話時間が設けられる……という仕組みが基本であった。だがそうした常識を打ち崩したのがウィルコムである。

 同社は自社のバックボーン回線を、NTTのISDNから自社の光回線に切り替えることで、2005年にウィルコム同士の通話が定額でし放題となる「ウィルコム定額プラン」を実現。無料で連続通話できるのは2時間45分までという制限こそあったものの、モバイルでの音声通話が定額でできること自体当時は画期的であり、非常に大きなインパクトをもたらしたのである。その後ウィルコムの定額通話は、コミュニケーション需要の高い女性を中心とした若年層に人気を博し、女子高生に携帯電話とウィルコムの“2台持ち”スタイルが広まるなど、大きな影響を与えている。

 “自社内の音声通話が定額”というサービスはその後携帯電話キャリアも取り入れるようになり、ソフトバンクモバイルが「ホワイトプラン」に代表される、21時?翌1時以外の同社同士の通話を定額にする料金プランを投入したほか、au陣営も指定した3つのau携帯電話に対する音声通話が定額になる「ガンガントーク」(指定通話定額)を導入。NTTドコモもXi対応スマートフォンの提供に合わせ、NTTドコモ同士の音声通話が定額になる「Xiトーク24」を導入している。

 しかし定額音声通話は、自社回線を利用することで、他社に料金を支払う必要がないからこそ実現できるもの。他社回線に接続する場合は接続料(アクセスチャージ)を支払う必要があることから、他社との音声通話を定額で実現するのは困難とされてきた。だが2010年、ウィルコムが10分間の通話を月500回、携帯・固定など相手を問わず定額で利用できるオプション「誰とでも定額」を導入したことでそれを実現。時間こそ短いが、キャリア間の壁を取り払って定額通話ができることから人気を博しており、定額音声通話は新しい次元に入りつつあるといえる。

 次回は“VoIP”など携帯電話の音声通話にもたらされつつある新たな変化と、音声通話の変化が何を変えてきたかについて触れてみたい。

▲“定額通話”のパイオニアとなったウィルコムは、現在も音声通話に力を入れる。

写真は筆者の私物でもあるPHS端末「nico.」(WS005IN)

2012年7月25日 14:10