プロフィール
佐野正弘

東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では携帯電話業界事情から、スマートフォン、モバイルマーケティング、若者のケータイ文化に至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。著書にXperia入門ガイド(翔泳社)、SEO対策のウソ・ホント(毎日コミュニケーションズ)など。

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どう変化した? 携帯電話のコミュニケーションスタイル(3)

 前回、前々回と、日本の携帯電話におけるテキストメッセージのやり取りの主流が、世界的に主流のショートメッセージサービス(SMS)ではなく、「iモードメール」に代表されるEメールとなった経緯と要因について解説してきた。今回からはさらに現在に至るまで、メッセージツールがどのような発展を遂げていったかについて解説していこう。

 その前に、音声通話ができる携帯電話で、人々がわざわざテキストによるメールのやり取りをするのは何故だろうか。その要因として大きいのは、音声通話よりコミュニケーションにかかるコストが“安い”こと、そして紙の手紙や電報、FAXなどと比べ、メッセージのやり取りが“早く”できることにあったといえる。そうしたことから、日本の携帯電話におけるテキストメッセージは、“安さ”と“早さ”、そして前回説明した“表現力”が加わった形で発展を遂げていくこととなる。

 その代表的な事例の1つとして、NTTドコモが2004年にサービス開始した「デコメール」に代表される、“装飾メール”が挙げられるだろう。これは携帯電話上でHTMLメールのやり取りができるサービスで、通常のメールにはない色や画像などを用いて、内容を飾り立てることができるのが大きな特徴だ。誕生日や、お正月などの“あけおめメール”などで、装飾メールを受け取った人も少なくないのではないだろうか。

 装飾メールは、先に挙げた“安さ”“早さ”“表現力”の3拍子が揃ったことで、普及につながったサービスの代表例だ。通常のメールでは不可能な、画像を用いてメールを可愛く装飾できる“表現力”の高さが、コミュニケーション需要の高い女性を中心にヒットしたのは言うまでもないが、“早くて安い”という要素がなければ、ここまで大きく広がることはなかったと考えられる。

 先に触れた通り、装飾メールサービスを最初に提供したのはNTTドコモであり、同社の装飾メールサービス「デコメール」は、現在主力の3G携帯電話サービス「FOMA」の“900i”というシリーズの携帯電話に搭載される形での提供となった。当時はまだ「mova」、つまり2Gの携帯電話が主流であったが、デコメールはメールの中に画像を用いる場合が多いことから、スピーディーに送受信するため、より高速な3G向けのサービスとして提供された訳だ。

 そして装飾メールの普及には、パケット定額制の貢献も大きい。メールの中に画像が入ればその分データ量が増え、通信料金も上がってしまうため、頻繁に装飾メールのやり取りをするとかなりの料金が請求されてしまう。それゆえパケット定額制が導入され、データ通信量に上限ができたことで、はじめて安心して装飾メールが利用できるようになり、大きく広まったといえるだろう。

 装飾メールに“早くて安い”という条件が整ったことから、表現力の面で発展を遂げた要素として、「デコメ絵文字」に代表される、装飾メールの仕組みを用いた絵文字にも触れておきたい。NTTドコモがデコメ絵文字を2006年に導入したことで、従来各キャリアが用意していたもののみに制限されていた絵文字の数が、無限に増やせるようになったことから、高い人気を博してその後の定着にも至っている。

 

▲装飾メールや装飾メールによる絵文字は、

表現力と早さ、安さという条件が揃ったことで普及した

 

 

 “早さ”“安さ”“表現力”という、日本の携帯電話におけるテキストメッセージツールの発展要素は、スマートフォンになった現在でも大きな影響をもたらしている。実際、近頃スマートフォンで人気のコミュニケーションツール「LINE」(NHN Japan株式会社)が人気を博しているのも、この3つの要素が大きく影響しているといえる。

 LINEは、インターネットを経由して無料で音声通話ができることが当初大きな注目を集めたが、現在はむしろ、チャット機能(トーク)に注目が集まっている。LINEはパソコンのメッセンジャーツールのように、入力したメッセージがすぐ相手に届くため、携帯電話のEメールよりスピーディーなメッセージの交換が可能だが、さらに文章だけでなくさまざまな表情のキャラクター画像(スタンプ)を送りあう仕組みを用意し、高い表現力も備えている。

 しかもスマートフォンではパケット定額制サービスを契約することが一般的。それをベースとして、表現力の高いコミュニケーションが素早くできることから、LINEは日本で非常に高い人気を博すようになったといえよう。

 次回は、音声通話によるコミュニケーションの変化について触れていきたい。

 

 

▲スマートフォンで人気の「LINE」は、

スピーディーなコミュニケーションと画像(スタンプ)を用いた表現力の高さで人気に

2012年7月18日 18:20