プロフィール
佐野正弘

東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では携帯電話業界事情から、スマートフォン、モバイルマーケティング、若者のケータイ文化に至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。著書にXperia入門ガイド(翔泳社)、SEO対策のウソ・ホント(毎日コミュニケーションズ)など。

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どう変化した? 携帯電話のコミュニケーションスタイル(1)

 携帯電話は、その名前が示す通り元々は“電話”としてスタートしているため、携帯電話を使ったコミュニケーションといえば音声通話が基本だ。だが現在では“メール”に代表されるように、携帯電話で文字を交わしてコミュニケーションすることも、一般的となっている。そこで今回からは、携帯電話のコミュニケーションスタイルがどのように変化しているのかを振り返ってみよう。

 先に触れた通り、電話である携帯電話でのコミュニケーションに、大きな変化をもたらしたのは“文字”だ。モバイルでテキストを交換するコミュニケーションは、古くはポケットベルの頃からなされていたものだが、それが本格化したのは携帯電話による文字サービスが広く普及してからである。

 携帯電話で文字を送りあうサービスといえば、多くの人はiモードメール、spモードメールなど、キャリアが提供するEメールサービスを思い浮かべるかもしれない。だが携帯電話には、Eメールサービスが提供される以前から、携帯電話同士で数十?百数十文字程度の文字を送りあえる“ショートメッセージサービス”が提供されていた。

 このショートメッセージサービス、日本とそれ以外の国とでは、利用頻度や普及の度合いが全くといっていい程異なっている。その要因の1つに、携帯電話の通信方式の影響があると言われている。

 ショートメッセージサービスが広く利用されるようになったのは90年代からと見られており、その時期に普及していた携帯電話の通信方式は、現在より1つ前の世代である“第2世代”に当たる。そして海外で採用されていた第2世代の方式は、ヨーロッパを中心として全世界に広まり、現在も多くの国で利用されているGSM方式、そして主に米国やアジアを中心に広まったCDMA方式であった。

 これらの方式には、最大160文字の文字を相互にやり取りするショートメッセージサービス(SMS)の仕組みがあらかじめ組み込まれていた。しかもSMSは元々、国をまたいで移動することが多い欧州で誕生したGSM方式に向けて考えられた仕組みであることから、異なるキャリア間、もしくは国をまたいでのメッセージのやり取りも可能な環境もしっかり整えられた。こうしたことから、通話より安価でメッセージをやり取りできるコミュニケーション手段として、SMSが広まったといえる。

 一方、日本ではIDOやDDIセルラーグループ(現在のau)が途中からCDMA方式を採用した以外、多くのキャリアがPDC方式、そしてPHSと、日本独自の通信方式を採用していた。また日本は島国であり国をまたいでの移動が少なく、海外の人とメッセージ交換する必要性も薄かった。こうしたことから当初、ショートメッセージのサービスは各社が独自に実装したものが用いられていたのだ。

 しかもこの時期は、携帯電話市場の拡大期にあり激しい競争下にあったことから、一部を除いてキャリア間の互換性がとられることもなかった。それゆえ日本のショートメッセージサービスは、同じキャリア同士でしかメッセージのやり取りができないものとなっていたのである。

 採用する通信方式の違いで環境の差ができたことから、海外ではSMSの利便性が高まり現在でも広く利用されている一方、日本では利便性の悪さから他のサービスに押され、ショートメッセージが積極的に利用されなくなってしまった……。 というのが、一般的な説となっているようだ。2011年7月に日本でもようやくSMSの互換接続がなされ、異なるキャリア間でメッセージの交換ができるようになったが、既にスマートフォンが人気を博し、多彩なコミュニケーションサービスが利用できるようになった現在の日本において、短いメッセージを送るのにお金がかかるSMSの存在意義を高めるのは難しいだろう。

 しかし歴史を紐解くと、日本でショートメッセージが積極的に利用されなくなったのには、通信方式以外にも大きな理由があるように見える。それについては、次回説明しよう。

 

▲海外ではSMSが今なお広く利用されていることから、Eメールクライアントならぬ

SMSクライアントも存在する。写真はAndroid向けの「GO SMS」

2012年7月4日 16:41