プロフィール
佐野正弘

東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では携帯電話業界事情から、スマートフォン、モバイルマーケティング、若者のケータイ文化に至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。著書にXperia入門ガイド(翔泳社)、SEO対策のウソ・ホント(毎日コミュニケーションズ)など。

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そもそも“Wi-Fi”って何だ?(3)

 前回は、狭い範囲でのネットワークを無線にするWi-Fiが、公衆無線LANとして無線インターネット接続サービスにも利用されるようになったこと、そして公衆無線LANが携帯電話と結びついた理由について説明した。

 

 携帯電話やスマートフォンと結びついたことで、公衆無線LANは日本でも急速に数を増やしていることが分かる。ソフトバンクモバイルの「ソフトバンクWi-Fiスポット」が26万以上、KDDIが展開する「au Wi-Fi SPOT」が10万以上と、スポット数を急拡大している。NTTドコモも「docomo Wi-Fi」を拡大させる方針を示しているほか、公衆無線LAN専門の事業者もスポット数を増やしてきており、スマートフォン等で利用できる公衆無線LANスポットは今後も数が増えていくものと考えられる。

 

 だが公衆無線LANのスポット数が急拡大したことで、さまざまな問題も浮かび上がってきている。そしてこれらの事象が、本来高速であるはずの公衆無線LANの低速化を招き、ユーザーの利用を敬遠させる要因にもなってきている。

 

 そうした問題の1つに挙げられているのが“干渉”だ。公衆無線LANは出力が弱いとはいえ、それが同じような場所に密集してしまえば、スポット同志が発する電波が干渉してしまい、通信速度が低下したり、通信ができなかったりするという事象が発生してしまう。各社が急速に、しかもバラバラにスポット数を増やしていることから、Wi-Fi機器同志の干渉が、大きな問題にもなりつつあるのだ。

 

 特に日本では、前々回説明した通り5GHz帯の利用に制限があることから、2.4GHz帯にのみ対応したWi-Fi対応機器というものも少なくない(スマートフォンやタブレットの多くがそれに当たる)。そのため、スポットで使用する帯域も2.4GHz帯に集中してしまい、機器が増えることで干渉を起こしやすくなっている。

 

 こうした問題に対応するべく、同じ帯域の中で空いているチャンネルを自動で探し、変更する仕組みを備えたWi-Fiスポットを用意する、2.4GHz帯だけでなく5GHz帯にも対応した機器を増やすなど、さまざまな施策が取られるようになった。だがそれでも、限られた帯域の中で各社が公衆無線LANスポットを増やし続ける限り、干渉の問題が減ることはない。それゆえ将来的には、スポットの共用化などといった施策も求められてくるかもしれない。

 

 そしてもう1つの問題は“回線速度”である。公衆無線LANスポットの数は確かに増えたが、各スポットのバックボーンとなる通信回線が高速でなくては、そもそも通信速度の高速化が実現できない。Wi-Fiスポットには一般的に、光やADSLなどの固定回線が接続されているものと思われているかもしれないが、最近では必ずしもそうとは限らないのだ。

 

 急速に数を増やしている公衆無線LANサービスでは、特にその傾向が顕著だ。au Wi-Fi SPOTはバックボーンにUQコミュニケーションズのモバイルWiMAXを、ソフトバンクWi-FiスポットはULTRA SPEED、すなわち3G回線を使用しているものが多いと言われている。また公衆無線LAN専業の「モビネクト」なども、光回線を引くことができない場所で、イー・モバイルの3G回線を用いたスポットを提供するケースがあるようだ。

 

 光などの固定回線を敷くとなると、工事にかかる時間や手間が大きく、数を急速に増やすことはできない。だが無線回線であれば、電源さえ確保すれば、後は機材を設置するだけで済み、設置にかかる時間とコストが非常に少なくて済む。それゆえ各社が急速にスポット数を増やしている現状、3GやWiMAXなどを用いたスポットも増えている訳だ。

 

 しかし最近では、スマートフォンやタブレット自体、LTEやWiMAXなどの高速通信に対応したものが増えている。そうした端末でバックボーンが3Gの公衆無線LANに接続すれば、かえって速度が落ちてしまうことになる。しかも公衆無線LANは1人ではなく、多くの人と共有することから、バックボーン回線の速度が遅ければ遅いほど、速度低下が顕著なものとなってしまう。

 

 携帯電話回線のトラフィックを減らすため、特にキャリア各社が力を入れる公衆無線LAN。だがそこで、既存の携帯電話回線より快適な通信速度が得られないのであれば、ユーザーが利用するメリットは薄く、利用されなくなってしまう。公衆無線LANの利用を増やす上では今後、スポットの数を競うだけでなく、その品質も競う必要があるといえよう。

 


▲最近の公衆無線LANは、必ずしも固定回線に接続されているとは限らない。

例えば「au Wi-Fi SPOT」は、WiMAX回線に接続されているものが多い

2012年6月27日 16:45