プロフィール
佐野正弘

東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では携帯電話業界事情から、スマートフォン、モバイルマーケティング、若者のケータイ文化に至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。著書にXperia入門ガイド(翔泳社)、SEO対策のウソ・ホント(毎日コミュニケーションズ)など。

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そもそも“Wi-Fi”って何だ?(1)

 携帯電話キャリア各社が相次いでWi-Fiスポットの数を増やすようになり、最近では多くの店舗で“Wi-Fiが使えます”ということを示すステッカーを見かけるようになった。さまざまなメディアにも頻繁に取り上げられ、普遍的な言葉になりつつある“Wi-Fi”。だが、そもそもWi-Fi、そして“無線LAN”とは、一体何なのだろうか。そしてなぜ、携帯電話と結び付きつつあるのだろうか。今回からは、その辺りをテーマに解説していこう。

 まずは無線LANについて説明しよう。無線LANとは文字通り、“無線”の“LAN”のこと。LANとは“Local Area Network”の略で、同じ部屋の中など狭い領域にある、コンピューターやプリンタなどを繋いでデータの交換ができるよう、構築されたネットワークのことを指す。ちなみに複数のLANを繋げることで、広域でデータの交換をできるようにしたものを“WAN”(Wide Area Network)と呼び、大まかに言えば、インターネットは世界規模のWANということになる。

 LANを構築するには通常、有線のケーブルを用いて機器同士を接続するが、ケーブルの変わりに電波を用い、無線で接続できるようにしたのが無線LANだ。無線LANを実現するための規格は、かつてはさまざまな種類が存在したようだが、現在は“Wi-Fi”がスタンダードとして広く利用されている。

 Wi-Fiとは、Wi-Fi Allianceという団体が発行している、無線LANの標準規格「IEEE 802.11」シリーズの通信規格に準拠していることを示すブランドのこと。現在はWi-Fiが無線LANの一般的な規格として用いられているが、あくまで規格の1つ、ということに変わりはない。それゆえ無線LANイコールWi-Fiという訳ではないので、注意されたい。

 Wi-Fiの元祖であり、1997年に策定されたIEEE 802.11は元々、2.4GHz帯を使って最大2Mbpsの速度を実現する規格だった(ニンテンドーDSなどはこの規格を採用している)。だが固定通信では光ファイバー、無線通信ではWiMAXやLTEなどの高速規格が広まっている現状においては、この速度はあまりに低速であり、Wi-Fiがボトルネックとなって通信速度を落としてしまうことにもなりかねない。

 そこでWi-Fiも、高速化のためさまざまな拡張仕様が追加されてきた。1999年に承認されたIEEE 802.11bでは2.4GHz帯で最大11Mbps、IEEE 802.11aでは5GHz帯を用いて最大54Mbpsを実現。2003年に承認されたIEEE 802.11gでは2.4GHz帯でも最大54Mbpsを実現し、2009年に承認されたIEEE 802.11nでは、双方の帯域で最大600Mbpsもの通信速度を実現できるようになった。なお無線LANの高速化にも、OFDMやMIMOなど、最近の携帯電話の高速化に用いられているのと同じ技術が導入されている。

 ちなみに無線LANに用いられている2.4GHz帯と5GHz帯は、多くの国において、出力が弱い機器であれば免許不要で利用できる、解放された帯域となっている。それゆえ無線LANだけでなく他の民生機器でも使われているため(2.4GHz帯であれば、Bluetooth対応機器や電子レンジなどが相当)、機器によっては電波の干渉に注意する必要がある。

 また日本においては、5GHz帯は既に気象レーダーなどで用いられていることから屋外の利用に制約があり、屋内外問わず利用できる帯域が少ないなど不便が多い。そのため日本では、2.4GHz帯を用いて無線LANを利用している人が多いようだ。

 次回は無線LANの利用の広まり、そして携帯電話との結び付きについて説明しよう。

▲イー・モバイルの新しいWi-Fiルーター

「GL04P」は高速通信のLTEに対応していることから

「IEEE 802.11n」を採用し無線LAN部分を最大300Mbpsに高速化

2012年6月13日 19:14