桜井政博
1970年8月3日生まれ。有限会社ソラ代表。独立したゲームディレクター。代表作は『星のカービィ』シリーズ、『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズ。最新作はニンテンドー3DSの『新・光神話パルテナの鏡』。さまざまなジャンルのゲームを日々研究しつつ、ユーザーに新たな楽しさをもたらすゲーム開発に注力している。

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10 わたしがゲームをする理由

週刊ファミ通2008年4月18日発売号掲載
VOL.233

収録巻はこちら!

桜井政博のゲームについて思うことX


 

10 わたしがゲームをする理由

 

 このまえまで休日や休息などをほとんど捨てて生活していたため、なかなかゲームができませんでした。そして現在、無理のない範囲で積み上がったゲームを遊んでいく、浦島太郎なわたしです。
 『ゲームセンターCX 有野の挑戦状』がかなり良くできていたことにびっくりしたり、ニンテンドーDS版『ドラクエ?』の戦闘のテンポへの気配りに感心したり、『メタルスラッグ コンプリート』でいままで遊んでいなかったシリーズの味を知ったり。そして『ザ エルダースクロールズ ?:オブリビオン』に手をつけて火傷中。こりゃーどこまで遊べばいいんだ!
 そんな中でスゴさを発揮し、心に残ったゲームのひとつに『コール オブ デューティ 4 モダン・ウォーフェア』があります。
 2007年、多くの賞を獲得したすばらしいグラフィック表現。海外のFPSなので、例によってあたかも戦場に放り込まれたかのような、主観視点による臨場感ある展開がなされていきます。免疫が薄い人なら、そのコワさにショックを受けかねないのではないかと。
 その中で、テロリストグループが核爆弾を落とす描写があります。そこは、数多くのゲームをプレイしてきたわたしの中でも、10本の指に入るような、見事な名シーンが展開されました。
 文章では伝え切ることはできないけど、書くとこんな感じ。


 ――軍曹は、墜落した輸送ヘリの中で昏倒から目覚めた。周囲が不自然に暗く、赤茶けて見える。眼底に血が溜まっているのだろうか。動こうにも、カラダが鉛のように重い。どうやら致命的なダメージを受けているらしい。やっとの思いでコクピットにたどりつくと、パイロットは絶命していた。ほかの仲間はどうした? ヘリが墜落するまえ、敵地に取り残された女性パイロットを救い出し、退却したはず。その途中、目の前が真っ白になったのだった。
 周囲を見回しても、人はいなかった。しかし開放された後部ハッチから、外の光が強く差し込んでいる。みんな無事で、外に出て行ったのだろうか。ハッチまでの少しの傾斜が、ガケを上っているかのように急に感じたが、必死の思いでまばゆい光の方向に向かう。
 ヘリからズルリとはい出したとき、希望は絶望に変わった。眼前に広がる、巨大な死神のようなキノコ雲。降りそそぐ死の灰。先刻まで、戦場とはいえ人が営むところにいたと思ったが、それは間違いだったようだ。ここはまさに地獄。この状況で人が、いや生物が生きてゆけるはずはない。そう感じた後、意識が遠のいていった――。


 その後本部の画面に戻り、パネルに"KIA(Killed in Action:戦闘中死亡)"と表示され、つぎの主人公でゲームが継続。
 なんてえげつない……。ここまでやるのか。描写のセンスがピカイチなので、真に迫ります。これだけのシーンを織り込んだスタッフの手腕は、すばらしいです。
 わたしが習慣的にゲームをする理由は、ほかのゲームをよく見て、おもしろさを考えることで、経験を積むことが目的でした。しかし、よく考えると最近はそうでもないかもしれません。
 いまは自分の経験よりも、作り手に対する尊敬が大きいのかもしれません。世の中には、優れた作品を作れる人がいっぱいいるという。
 もし、わたしがゲーム業界と関係ない人であれば、優れたゲームを見ても「すげーなー」で終わっていたかもしれない。しかし、生みの難しさ、苦しさがわかるからこそ、よりゲームを楽しむことがでることを幸せに思います。

 

※転載にあたり、コラム本文に付随していた写真や解説、スーパーヘルプ、ふり返って思うことは割愛しております。あらかじめご了承ください。

 

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2012年4月6日 11:56