桜井政博
1970年8月3日生まれ。有限会社ソラ代表。独立したゲームディレクター。代表作は『星のカービィ』シリーズ、『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズ。最新作はニンテンドー3DSの『新・光神話パルテナの鏡』。さまざまなジャンルのゲームを日々研究しつつ、ユーザーに新たな楽しさをもたらすゲーム開発に注力している。

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09 ウソの快感

週刊ファミ通2007年9月7日発売号掲載
VOL.217

収録巻はこちら!

桜井政博のゲームについて思うことX

 

09 ウソの快感

 

 トランスフォーマーをプレイしました。おっと、これは決して『トランスフォーマー コンボイの謎』ではありません。『コンボイの謎』を今回の話題にしても、大半をツッコミにしてまるまる1話書ける自信はあります! だけど、昔話ばっかりしていると、ファミコンじじいかよ! みたいなお叱りも受けてしまうので、最近のゲームの話題でいきましょう。
 『トランスフォーマー』は、先日公開されたスピルバーグの映画『TRANSFORMER THE MOVIE』のゲームです。わたしは、日本に先駆けて海外で発売されたXbox 360版をプレイしました。
 『トランスフォーマー』とは、機械の地球外生命体が地球に降り立ち、さまざまな乗り物に擬態。クルマやヘリや飛行機から、一瞬で変形してふたつの軍に分かれて戦うという作品。じつはこの設定、いま調べて初めて知りました……。もちろんゲームも、変形しまくりです。
 ある程度の広さを持つ、3Dで表現された街並。道路を飛ばしているクルマ。ちょっとハンドルがタイトだけど、まぁフツーのドライブゲームに見えます。が、ボタンひとつでガシャンと巨大ロボットに変形! またボタンひとつで旋回しながらクルリとクルマにもどる。変形には約1秒。ワンタッチとはまさにこのこと。なんかすげーなー。これだけでも快感です。
 先ほどのファミコンゲームも、もちろんロボットからクルマに、クルマからロボットに変形しましたよ。でも、それとこれとは喜びが違う。当然のようでもあるけれど、それはなぜ?
 ロジェ・カイヨワの著書、『遊びと人間』に、"遊びを構成する4つの要素"というお話がありまして。
●アゴン(競争)
●アレア(偶然)
●ミミクリ(模倣)
●イリンクス(めまい)
 遊びはこの4つの要素のいずれか、もしくは組み合わせによって生み出されるものだとか。ゲームを語るうえでは、しばしば引き合いに出される理論です。
 こういう人さまの理論をもとにゲームを語るのは、個人的にはあんまり好きではないんですけどね。が、この4つにムリヤリ当てはめてみるのも、トレーニングになるかも。
 この『トランスフォーマー』の快感は何かと考えると、それはもちろん"ミミクリ"の部分が大きいわけです。それらしい街、それらしいクルマ。このふたつでごっこ遊び的な用件は満たせるけど、そこに"変形"という、まったく異質なものが差し込まれる。"模倣"はちょっと違うから模倣なのです。
 グラフィックの美しさはゲーム性に関係ないということはよく言われます。たしかに、そうかもしれない。いわゆる駆け引きには、まったく関係しませんから。
 だけど、少し引いた視点で見て「ゲームが楽しくなる」という意味では、グラフィックやサウンドの方向性も影響はでかいわけです。
 『塊魂』で転がすでかいカタマリ。それを転がす音が「ネトネトネトネト」と粘りがあるものと、「ガンゴンガンゴン」と鋼鉄のような音がするのでは、やっぱり手応え感が違って来るでしょう。
 ビデオゲームは、いわば虚実。テレビ画面という、本当はなんにもない地平に、何か存在するかのように感じさせ、それを愉むもの。どんなにリアルに近づけても、思いっきり現実を無視しても、ウソはウソ。そのなんとも言えない違和感を楽しむのが、わたしはスゴく好きなのです。

 

※転載にあたり、コラム本文に付随していた写真や解説、スーパーヘルプ、ふり返って思うことは割愛しております。あらかじめご了承ください。

 

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2012年4月5日 12:08