桜井政博
1970年8月3日生まれ。有限会社ソラ代表。独立したゲームディレクター。代表作は『星のカービィ』シリーズ、『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズ。最新作はニンテンドー3DSの『新・光神話パルテナの鏡』。さまざまなジャンルのゲームを日々研究しつつ、ユーザーに新たな楽しさをもたらすゲーム開発に注力している。

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03 『ディグダグ』の完璧なゲームデザイン

週刊ファミ通2004年6月25日発売号掲載
VOL.61

収録巻はこちら!

桜井政博のゲームについて思うこと2


 

03 『ディグダグ』の完璧なゲームデザイン

 

 『ファミコンミニ』第2弾の発売日に、任天堂の宮本茂さんからそのフルセット10作品をいただきました!! 輝かしいソフト10本を掲げながら、京都の方角に何度か深々と頭を下げたのち、おもちゃ売り場に駆け込む子供のようにダッシュでプレイしてみましたとさ。
 その中のひとつ『ディグダグ』をプレイしてみて、うーん!! と唸ってしまいました。これ、完璧なゲームデザインだなぁと。
 "ディグダグ"と書くと、某もぐらポケモンを想像してしまう方も多いと思いますが、これは地中を掘り進む主人公が、ポンプで敵に空気を送り込んでふくらませ、破裂させて倒すゲームなのです。
 『ディグダグ』というタイトルから、このゲームの本質を"穴を掘るゲーム"だと形容してしまうのは、ちょっと物足りない。では、"敵を破裂させるゲーム"なのかというと、これもさにあらず。じゃあ本質は何か?
 それは、"岩を落とし、まとめて敵を退治すること"であり、そのほかはあくまで副次的な要素なのでした。少なくともいま、わたしはそう感じています。昔もそのように遊んでいたハズなのに、昔はまだゲームに対する理解が甘く、ぜんぜんわかっていませんでした。
 『ディグダグ』では、地中を掘るときに、岩の下の土を掘るとしばらくあとに岩が垂直落下します。そこに多くの敵を巻き込んでつぶすことができれば、より高得点が狙えます。何より、気分がスッキリする。で、岩の真下に深い垂直な穴を掘って、より多くの敵を一気に巻き込もうとがんばるのですが、欲張れば欲張っただけ見事にミスしやすくなるんですよね。細かい解説は省きますが、そのあたりのバランスがすばらしい。ルールがちょっと異なるだけで、このバランスは成り立たないと思います。逆に言えば、敵をふつうに破裂させるだけのプレイをしているだけでは、物足りなく感じることでしょう。良くないプレイには、おもしろさを含めてそれなりのリターンしか返ってきません。そこもスゴイ。
 じつはわたしが幼いころは、ゲームセンターで『ニュージグザグ』というまがいものが蔓延しており、そちらのほうがよく遊ばれていたような気がします。と言うか、『ディグダグ』を置いているゲームセンターが少なかったのです。ちなみにファミコン版が出たのは、それから少し経ってからのこと……。
 『ニュージグザグ』では、落ちる岩の速度が速すぎて岩から敵が逃げ切れなかったり、落ちてくる岩をすり抜ける裏ワザがありました。便利ではあったけれど、いま思えばとても原作の駆け引きを表現しているとは言えなかったものでした。うーむ。これも当時はわからなかった。ゲームは、快適であればいいというものではありません。
 ただ、『ディグダグ』のようなゲームを現代の新作として成り立たせようと考えた場合には、もっとプレイヤーの動機をあおる必要があるのでしょう。どんなに敵を上手に倒しても、得られるものがハイスコアだけでは物足りない。現代のゲームは、言わばごほうび漬けであり、それに慣れたお客さんは、プレイヤーの行動=プレイヤーの報酬にならないと、物足りなく感じる体質になっているのではないかと感じます。
 『ディグダグ』のバランスはこの手にはまず合わないものだし、なかなか難しいものですね。

 

※転載にあたり、コラム本文に付随していた写真や解説、スーパーヘルプ、ふり返って思うことは割愛しております。あらかじめご了承ください。

 

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2012年3月28日 12:22