桜井政博
1970年8月3日生まれ。有限会社ソラ代表。独立したゲームディレクター。代表作は『星のカービィ』シリーズ、『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズ。最新作はニンテンドー3DSの『新・光神話パルテナの鏡』。さまざまなジャンルのゲームを日々研究しつつ、ユーザーに新たな楽しさをもたらすゲーム開発に注力している。

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02 スペランカーになりたい

週刊ファミ通2004年2月27日発売号掲載
VOL.45

収録巻はこちら!

桜井政博のゲームについて思うこと


 

 


02 スペランカーになりたい

 

 友人に子供ができたということで、お祝いを持って友人たちといっしょに家に押しかけました。子供はまだ生まれて間もないようで、それはもうデリケートそう。ちょっと触れるにしても、おっかなびっくりです。
 そんなとき、その友人宅にファミコンがあり、なぜか『スペランカー』がささっているのを見つけてしまったのが運のツキ。『スペランカー』とは。'85年、アイレム社が海外のブローダーバンド社からライセンスを受け、ファミコン向けに販売していました。巨大な洞窟内で、冒険家の主人公が銃や爆弾、ジャンプを使い、宝捜しのために下へ下へと降りていき、地下遺跡(?)を見つける全4ステージのゲームです。
 このゲーム、知っている人には言うまでもなく、ある特徴によって半ば"伝説化"していると言っても過言ではないゲームです。その特徴とは、とにかく主人公が"か弱い"こと。じつは微生物なんじゃないか!? とも思える耐久力で、はかなく命を散らしていきます。
 自分の爆弾や照明弾で死ぬ!
 ちょっとの段差を飛び降りただけで即死!
 はしごで一瞬横に動いただけでツルッと落下死!
 一歩も動かなくてもエネルギーがなくなって昇天!
 下り坂をジャンプしたら高低差でショック死!
 降りていくリフトの上で垂直ジャンプしてもミス!
 もちろん、流砂やコウモリのフンに触れようものなら一撃死!
 パワーアップを取ったらその速さに耐えられず自滅!
 とにかく死ぬ! いやがおうでも死にまくり!
 ふつうのゲームでは落下死がある場合、地面まで落ちてから「グキッ」とやられるのが礼儀ですよね。しかし、『スペランカー』の場合は、ミスが確定したら空中でもその時点でやられてしまうので、さらに弱さが引き立ちます。ゲーム史上最弱の主人公として彼を挙げる人も少なからずいるでしょう。そして、それ故にいわゆる"クソゲー"扱いする人も。だけど、これはこれで意図的なバランスなのです!
 思わずプレイしてみましたとも。最初の2プレイぐらいはおもしろいほどやられまくってゲームオーバーになったものの、すぐに何周でもクリアーできるようになりました。しかし、とにかくいつ何時死んでもおかしくないゲームなので、緊張度が違いますね。プレイが安定するまで、ギャラリーも固唾を飲んで見守っていたものです。『電流イライラ棒』を思い出させるようなこの感触、いまのゲームではもう味わえませんねぇ。
 ちなみに『スペランカー』は、のちにアーケード版も出たのですが、高いところから落ちても耐え抜く、頑丈で元気な主人公になっていました。これはこれで、ちと残念。良かれと思って特徴をそいでしまうと、フツーのゲームになっていってしまうのですよね。アバタもエクボと言うことだし。
*   *   *
 友人に子供ができたということで、お祝いを持って友人たちといっしょに家に押しかけました。子供はまだ生まれて間もないようで、それはもうデリケートそう。ちょっと触れるにしても、おっかなびっくりです。そう、それはまるでスペランカーのように。
 ……あ、いっしょにするなと。では名前は"スペラン子"でどうか。だめですか。そうですか。

 

※転載にあたり、コラム本文に付随していた写真や解説、スーパーヘルプ、ふり返って思うことは割愛しております。あらかじめご了承ください。

 

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息をするがごとく日々ゲームを遊ぶゲームデザイナーの思うこと

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2012年3月27日 11:51