桜井政博
1970年8月3日生まれ。有限会社ソラ代表。独立したゲームディレクター。代表作は『星のカービィ』シリーズ、『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズ。最新作はニンテンドー3DSの『新・光神話パルテナの鏡』。さまざまなジャンルのゲームを日々研究しつつ、ユーザーに新たな楽しさをもたらすゲーム開発に注力している。

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10 上は下なり、下は上なり

週刊ファミ通2008年6月27日発売号掲載
VOL.242

収録巻はこちら!

桜井政博のゲームについて思うことX


 

10 上は下なり、下は上なり

 

 ディレクター、つまり監督は、作品を制作するといううえではもっとも重要な役割。ゲームに限らず、その人のアイデアや方向性、指示によって作品が作り上げられていくのだから、その人なくして作品はなしというわけです。
 が、わたしの個人的な考えのひとつで、制作チームのスタッフやディレクター自身にも聞いてみてほしいことがあります。
 ディレクターは、人に何かをお願いする役割の仕事であるだけで、決して周囲の人よりエラいわけではありません。というよりも、少なくともディレクター自身が"エラくない"という腹づもりを持つ必要があるのだろうと思います。
 何かをやろうという提案を最初にする人は、人の協力がなければ進行できません。作業指示というのは一見、"上から下"に行われるように見えるけれど、実際は"下から上"なのです。人にお願いすることでやっと実現することを、つねに忘れてはなりません。
 これはお客さんとメーカーの関係を考えれば、連想しやすいと思います。メーカーがお客さんに対して「作ったから買って」ではなく、お客さんがメーカーに対して「買ってあげる」。"王様"はメーカーではなく、お客さんです。流通としてはお客さんは下流だけど、選択権や対価という意味では上流にあたります。
 だからといってお客さんが何をしてもいいというわけではありませんよね。お金を払っているからと横柄にする人は、お店から文句こそ言われないだろうけれど、器の小ささを露呈しているようなもの。けっきょくは人から軽蔑されたりして、自分に返ってくるものでしょう。
 企画者こそ、お願いを最初に作る人。卑屈になる必要はないけれど、みずから尊大に振舞うのは控えたほうが良いでしょう。逆に、受注側だからと言って、スタッフがふんぞり返るのも間違っています。これは横柄なお客さんと同じ。そもそもディレクターの言うことを聞かないチームは決してまとまらず、機能しません。ましてや仕事なのだし、まっとうに仕事するべき。
 たまに、「うちの会社じゃ企画やアイデア、提案が通らない」というグチを聞きます。これは開発だけに限らず。どこの会社、組織にもあることでしょう。だけど、話が通らなかったことは「説得できなかった自分が悪いから、つぎはがんばろう」と収めておくのが良いと思います。決して、「課長や部長は見る目がない!!」と、相手のせいにしてはいけません。耳を傾けているということは、相手にとって良いプレゼンができれば、アイデアが通る可能性はあるのだから。提案する側は、採用する側より弱い立場になりがちです。
 しかし何より必要なのは、お互いのことを尊重しながら制作に協力し合う姿勢にほかならない! 
 多くの仕事量とストレスにさらされる開発者たちは、すべて"仲間"です。たまには争うこともあるけれど、敵ではないでしょう。"鶴のひと声"のように、議論をまとめるために必要な上下関係もありますが、お互いそればかりに頼るのは、現場の空気を良くしません。
 わたしの場合は基本的に同じ組織でなければたとえ年下でも経験が浅くても、名前には"さん"づけ。立場の違いからエラそうに見えるディレクターってイヤですもの。一方で、対外的なメールで
"様"を使うこともあまりないですが。そういう意味ではただ礼儀知らずなだけかも? 
 いずれにせよ、ジャマになる価値観はポイッと捨ててしまったほうがいいでしょう。作っているものが良くなることを最優先にして、協力しつつがんばりましょう!!

 

※転載にあたり、コラム本文に付随していた写真や解説、スーパーヘルプ、ふり返って思うことは割愛しております。あらかじめご了承ください。

 

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2012年4月6日 11:55