桜井政博
1970年8月3日生まれ。有限会社ソラ代表。独立したゲームディレクター。代表作は『星のカービィ』シリーズ、『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズ。最新作はニンテンドー3DSの『新・光神話パルテナの鏡』。さまざまなジャンルのゲームを日々研究しつつ、ユーザーに新たな楽しさをもたらすゲーム開発に注力している。

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09 ヨコなのにタテが重要

週刊ファミ通2007年3月16日発売号掲載
VOL.195

収録巻はこちら!

桜井政博のゲームについて思うことX


 

09 ヨコなのにタテが重要

 

 開発中の『大乱闘スマッシュブラザーズX』を、熱中しつつ対戦しているプレイヤーを後ろから見ていて。ヘンなゲームだなぁと、いつも感じます。我ながら。
 等身もまちまち、世界観もまちまちなキャラクターが、飛んだり跳ねたりしつつ、ケムリを上げてロケットのように吹っ飛んでいく。ゲームデザインとして、とっ散らかっているけれど、まとまってもいるような。もちろんそこは『スマブラ』が持つ独特の味なのだけど、それはどこから生まれ得たのか? みずからゲームデザインをしているわたしとしては、それについていくつかの答えを持っているつもりです。
 そこで、その一端として今回の話題。もしもゲームの"進化樹"を作るとしたら、『スマブラ』のゲーム的なルーツに該当しそうな作品は、いったい何なのか? 『ストリートファイター』などの対戦型格闘ゲームとか、『ダウンタウン熱血物語』などのアイテムが転がっているような乱戦アクションゲームを挙げることは、カンタンだけど安易だと言えますね。
 わたしとしてはコナミの『ショーリンズロード』を挙げたいです。これは、"少林寺への道"とも呼ばれる、1985年の作品。もう20年以上もまえになるとは……。ゲームセンターで『イーアルカンフー』をヒットさせたKONAMIが、続けて出した中国拳法風アクション。操作はキックボタンとジャンプボタンだけとシンプル。スティックを上下に入れると、床をすり抜けて上下移動します。で、大量に出現する敵を蹴飛ばして倒しまくる。
 見た目もゲーム内容も、『スマブラ』とはまったく似てないです。「あーなんとなくねー」と思われる方もいるかもしれませんが、まぁその程度でしょう。しかし、ポイントとなる駆け引きがあるのでした。
 『ショーリンズロード』で、平地で多くの敵とただキックのみで戦った場合。キックの間合いは狭く短いのに対し、相手は多数で攻めてくるのだから、プレイヤーはすぐに不利になってしまいます。そこで、ジャンプを駆使したり、上下にす速く移動して自分の位置を敵からズラします。群がる敵に対して攻防で優位を保つため、上下に"位置移動"するわけですね。
 ゲームに慣れてくると、位置移動しながら攻撃して、ちょうど敵に当たるように位置取りをする呼吸ができてきます。上に飛んだり下に飛び降りたりしながら、とにかく敵に揺さぶりをかけ、逃げるべき状況と攻撃すべき位置を見極めて進めると。
 つまり、"位置エネルギー"の作品なのですよ。横にしか攻撃できないのに、自分が相手に対して上にいるのか下にいるのかが、攻略のうえですごく重要になる。『スマブラ』も、必然的に空中戦になるように作られています。この理由は、"乱戦"を形成するうえで通ずるところがありますね。
 そして、内容がちょっとバカバカしい。敵を蹴ると、"バカン"という心地よい音とともに、"シェー"に似たようなポーズで敵がポトリと落ちる。なんかこう、マジメではないわけで。
 『ショーリンズロード』は、キックで敵を制圧するゲームです、なんてひと言で言ってしまうとバイオレンスみたいだけど、基本的にはネアカなゲームです。明るく楽しくいきましょう、と。ここも『スマブラ』っぽいところかな。
 で、『ショーリンズロード』が、ニンテンドーDSの『コナミ アーケード コレクション』に入って発売されたとか。横長になってしまった画面が気になるけど、久々に遊んでみようかなぁ。

 

※転載にあたり、コラム本文に付随していた写真や解説、スーパーヘルプ、ふり返って思うことは割愛しております。あらかじめご了承ください。

 

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2012年4月5日 12:08