桜井政博
1970年8月3日生まれ。有限会社ソラ代表。独立したゲームディレクター。代表作は『星のカービィ』シリーズ、『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズ。最新作はニンテンドー3DSの『新・光神話パルテナの鏡』。さまざまなジャンルのゲームを日々研究しつつ、ユーザーに新たな楽しさをもたらすゲーム開発に注力している。

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08 決断をさきに延ばすな

週刊ファミ通2006年3月24日発売号掲載
VOL.147

収録巻はこちら!

桜井政博のゲームについて思うことDX


 

08 決断をさきに延ばすな

 

 ゲーム企画者としてのわたしが心掛けていることのひとつに、"決断をさきに延ばすな"というものがあります。くだいて言えば、"いますぐ決めろ!"
 ゲームって、基本的に「やってみなければわからない」もの。作る側なら、なおさらそうなのです。たとえば、プログラムが実際に仕上がり、操作できるプレイヤーキャラクターを動かしてみないとその感触がわからない。たとえば、敵を設定して戦ってみないと、自分や敵の強さがわからない。……当たり前ですよね。単なる足し算と引き算ならともかく、単純でないいろんな要素が絡むのだから。結果、「実際に動かしてみてから判断しましょう」ということになります。これはこれでオーケーなのでしょう。そのほうが効率よく進められることは少なからずあるし。
 しかし、ゲーム開発に限らず、いろいろな局面で"もっと熟成させ、わかるようになってから"という判断を下したとき。ほんの少しでいいから「本当にあとでいいのか?」と自分に疑問を抱いてみたほうがよいでしょう。いや、むしろ「いまやらないで、いつやるつもりなんだ!?」という気がまえのほうが良いかも。
 暫定でもいいから、とりあえずの判断でもいいから、自分が良いと思える範囲で決めてしまえ! 判断が甘かったら、あとで調整すればいい。間違っているところは、指摘をもらえばいい。とにかく、いま決めてしまう。それがラフになってさきに進めるのであれば、いつまでも迷走して進めなくなるよりいいじゃないですか。
 企画者の責任というのはどんな仕事においても甚大なもので。ヘマをすると、多くの人が精魂込めた仕事をドブに捨ててしまいかねません。そのときの考えや詰めが甘かったがゆえに、全面やり直し! みたいなことになったら、目も当てられない。だからこそ、判断は慎重にしたいところなのですが。
 しかし、決められるときに決めなければ、誰がいつ決めるのか? 誰かに投げっぱなしにして、あるいは企画を放置しておいて良くなることがあるのだろうか? ディレクターが思い浮かべたイメージをもとに、スタッフに「こんな感じで作っといて」と言うことも、まぁ許されます。複雑なゲーム作りは、それを許容できるゆとりがなければいけません。優秀なプログラマーはそんな発注でもいろんな解釈をしてキチンと作るし、優秀なデザイナーはちゃんと反芻し、良い提案をして来るものです。が、そのスタッフにふさわしい企画者であろうとするならば、素早く明快な解をすぐ出してこそ。けっきょく同じです。
 企画者、とりわけ最初にアイデアを出すメインの企画者は、本来孤独なものだと思います。道なき道をひたすら突き進んで、チームのために通るべき線をいちばん最初に引く仕事なのだから。視界の先は真っ暗でも当然。世論もチームの仲間も、その先には見えないハズ。人に理解されなくて当然の仕事なのです。そうなると誰かに頼りたい。しかし、頼ってもいいけどすべてがそれでまかなえるハズもない。
 お客さんにはあんまりわからないかもしれないけれど、頓挫する開発プロジェクトってすごく多いのですよ。そんなピンチを迎えるまえに、企画者やチーフの心にひと言「決断をさきに延ばすな!!」。最悪の事態を避けるため、誰よりもさきに進みましょう。
 がんばれ! 粘れ! 道は自分のあとにできるものなのだから!

 

※転載にあたり、コラム本文に付随していた写真や解説、スーパーヘルプ、ふり返って思うことは割愛しております。あらかじめご了承ください。

 

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2012年4月4日 11:48