桜井政博
1970年8月3日生まれ。有限会社ソラ代表。独立したゲームディレクター。代表作は『星のカービィ』シリーズ、『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズ。最新作はニンテンドー3DSの『新・光神話パルテナの鏡』。さまざまなジャンルのゲームを日々研究しつつ、ユーザーに新たな楽しさをもたらすゲーム開発に注力している。

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04 もののたとえと指示のありかた

週刊ファミ通2004年9月3日発売号掲載
VOL.70

収録巻はこちら!

桜井政博のゲームについて思うこと2


 

04 もののたとえと指示のありかた

 

 あまたの苦労を乗り越えて、ついに伝説の神剣を手に入れた!
 味方はほぼ全滅した。もう戦力は私しか残っていない。空には暗雲がたち込め、地平線は無数の敵軍で覆われている。しかし、手にした神剣は希望の光に満ちている。これさえあれば、私は負けない!!
 ……最後の戦いがいま、幕を開けようとしている。

 現場監督であるゲームディレクターは、ゲームを目指す方向性により近づけるべく、現場のスタッフにさまざまな指示を出します。社風や職種によって、要望を出す方法は大きく異なりますけれど。
 その中でもいちばんムズカシイのが、"音"関係の指示。カタチに残らないあいまいなものですからね。たとえば効果音をいまよりもっとキモチよくしたい場合、ディレクターはサウンドデザイナーにどう指示するのか? もうそこは擬音をクチにしながら。「ここは"ボキョ"、ではなくて"バッツーン"と!!」、「この"ザシャシャシャ"は最初にパンチをつけて"ズボウヮシャシャシャ"で!!」みたいなやりとりが、常時行われます。それは端から見たらかなり滑稽だろうけど、やむなきこと。ハズカシくなんかない!!
 音楽の指示もまた、ムズカシイ。音はゲーム自体と深いつながりがあります。ゲームは打てば反応があるものだから、音楽によるノリ、リズム感など、感触を刺激するものはとっても重要!! なので、スケジュールが許す範囲であれば、あれやこれやと調整要望を入れ、わたしは今日もサウンドスタッフを困らせるのでした。音楽に深い知識もないくせに。
 作ってもらいたい曲が、既存の何らかの曲に近い場合はサウンド担当にサンプルを聴いていてもらえば大きくハズレません。が、意外にもほとんどの場合、その手は使えないのです。欲しいのは、制作中のゲームに合わせた、ゲームならではの音楽なので。
 ……ならどうするのかと言うと、ゲーム中にその音楽が使われる役割や意図、目的、シーンをとにかく説明し、お客さんの立場で理解してもらうのが基本です。
 あるとき、作ってもらった曲に一発オーケーを出したことがありました。これはわたしのプロジェクトの場合、20曲に1曲ぐらいあれば良いほうであり、稀なケースです。
 『カービィのエアライド』において、"伝説のエアライドマシン"という要素があります。街中に隠された3種類のパーツを、奪ったり奪われたりしながら必死に集めると、その試合中とびぬけて強いマシンが使えるというものです。このマシン完成後の音楽制作の指示は、あえて冒頭の文章のようにしてみたのでした。もちろん、『エアライド』には、"神剣"も"無数の敵"も"全滅する味方"も出ませんけれど。
 わたしはふだん、"もののたとえ" の多用はなるべく避けています。もちろんこのコラムでも。自分で「うまいたとえだなぁ」と感じることも、受け手の層によってイメージが違ってしまい、言わんとすることがブレますからね。しかし、場合をうまく選べば、比喩もけっこう使えるのかも? と思った次第。
 その後、サウンドスタッフから伝え聞いたハナシによると、『糸井重里のバス釣りNo.1』の制作時、糸井さんは"魚がエサをつつき、竿がピンピン反応する音"に、こんな感じの発注を出したそうで。
 「何て言うかな〜、こう若いおちんちんが、ピクピクするような音」
 うーん、こりゃぁかなわない!!

 

※転載にあたり、コラム本文に付随していた写真や解説、スーパーヘルプ、ふり返って思うことは割愛しております。あらかじめご了承ください。

 

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桜井政博のゲームを作って思うこと
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2012年3月29日 11:45