桜井政博
1970年8月3日生まれ。有限会社ソラ代表。独立したゲームディレクター。代表作は『星のカービィ』シリーズ、『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズ。最新作はニンテンドー3DSの『新・光神話パルテナの鏡』。さまざまなジャンルのゲームを日々研究しつつ、ユーザーに新たな楽しさをもたらすゲーム開発に注力している。

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03 オリジナルゲームのピンチ

週刊ファミ通2004年7月9日発売号掲載
VOL.63

収録巻はこちら!

桜井政博のゲームについて思うこと2


 

03 オリジナルゲームのピンチ

 

 最近、"オリジナルゲーム"がめっきり売れなくなったなぁ、と感じています。つまり、何らかの続編でも、版権ものでも、スポーツものでもない、まったく新しいゲームのことです。この傾向は最近多くなってきたわけではないのですが、近年さらに深刻化していると感じるのでした。わたしの調査では、2003年度にいちばん売れたオリジナルゲームの売上ランキングは推定約50位! ファミ通の期待の新作に並ぶオリジナルゲームは、30本中2本! これはキビしい。新しい遊びを楽しめる可能性自体が減っているのです。どこも苦しみながらゲームを作っていますから、リスクの高い手段をどうしても取れない事情はよくわかります。だけど、新しいものを作ること自体がリスクだなんて!! ちょっと寂しい気がしませんか?
 では逆に、オリジナルのゲームが売れていないのはナゼなのか?
 わたしの立場は、見かたを変えれば3つあります。ゲームを作る開発者、ゲームをプロデュースすることで販売に携わる売り手、そして、ゲーム自体を実際に遊ぶお客さん。それぞれのわたしは現状を見て反省せざるを得ないのでした。
●開発者のわたし
 もっとおもしろくて完成度の高いオリジナルゲームを作ることができなかった。幸運にも"ゲームを作る"という自由としあわせを与えられた開発者なのだから、新しい遊びを作ることにもっと価値を感じるべきだった。わたしが悪かった。
●売り手のわたし
 安定路線ばかりを狙って、オリジナルゲームのおもしろさを正しく伝えられない自分が悪かった。実績がすでにあるものは、伝えやすいし売りやすい。でも、それだけでは現状はなにも変わらないし、消費されるだけだ。
●お客さんのわたし
 もっとオリジナルゲームを理解し、食わず嫌いせずに実際に遊んでみることが必要だった。昔感じた楽しさに身を委ねるのはラクだけど、雑誌などの情報からゲームのおもしろさを見抜くことができたハズ。何らかの偏見を持ち、新しさを支持しないわたしが悪かった。
 オリジナルゲームが売れないのが"悪い"のかといえば、じつは良いも悪いもなくて、単なる現象にすぎません。売り手にとっては、より売れるものを手掛けようとする。お客さんにとっては、自分にとっておもしろいものがあれば買おうとする。そんなものでしょう。
 だけど、いまの人気タイトルも、かつては1からスタートしたオリジナルでした。オリジナルが出なければ、新しい道もできないというものです。0を1にする、つまりまったくない状態から新しいものができることは、けっこうタイヘンです。考えることも、作ることも、売ることも、買うことさえもハードルが生まれます。既存のものが作った道を行くほうが、すべての面でラクではありますが、それを前提にしすぎるのも問題ですよね。
 いろいろな制作者からハナシを聞いてみれば、どうやらオリジナルを作りたがっている人はいっぱいいるようです。アイデアは業界内にはまだまだ山ほどありそうで、期待できます。だけど、どんなに良いタネがあっても、良い土や水がなければ芽の出ようもないのだよなぁと悩む今日このごろです。
 ゲームだってまだまだ捨てたもんじゃない!! そう信じています。

 

※転載にあたり、コラム本文に付随していた写真や解説、スーパーヘルプ、ふり返って思うことは割愛しております。あらかじめご了承ください。

 

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2012年3月28日 12:21