桜井政博
1970年8月3日生まれ。有限会社ソラ代表。独立したゲームディレクター。代表作は『星のカービィ』シリーズ、『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズ。最新作はニンテンドー3DSの『新・光神話パルテナの鏡』。さまざまなジャンルのゲームを日々研究しつつ、ユーザーに新たな楽しさをもたらすゲーム開発に注力している。

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02 ほめてやれ!

週刊ファミ通2003年12月19日発売号掲載
VOL.36

収録巻はこちら!

桜井政博のゲームについて思うこと


 


 

 

 

 

 

 

 

02 ほめてやれ!

 

 とあるアクションゲームをプレイしました。群をなす敵をばっさばっさと倒すたび、別のキャラクターの実況で「お互いに殺し合う人間どものおろかなことよ」とか、「たくさん殺して満足したか?」などと皮肉を言われまくる主人公。
 うーん。マズい。物語としては問題なくても、ゲームでその手の見せかたの多用はイカンでしょう!
 多くのゲームには"敵キャラクター"が出てきます。プレイヤーにとっての障害、ジャマな存在、ストレス、驚異、そして倒すべき相手として……。敵がいなくてもゲームを成り立たせることは可能ですが、それはともかく。
 ゲームの中で"敵を倒す"という行動は、"与えられたストレスを見事にクリアーした"という、良いことのハズなのです。なので、敵を倒したらほめる! ひたすらほめる! 良いことをしたんだ! えらいっ! と、ほめたたえてしかるべきだとわたしは考えています。
 もちろん、「えらいっ!」とメッセージを出すという意味ではないですよ。どんな遊びを求めてゲームを買うのか。作り手と遊び手でずれていませんか?
 最近はゲーム機の表現力が豊かになって、記号のように単純なものだった"敵キャラクター"も、より具体的に表現できるようになりました。表現も効果音もリアルで、敵を倒すことがあまり良いことのように見えなくなってきた側面もあります。生々しい暴力描写は、ちょっとキツイですしね。
 でも、敵を倒さないで進む楽しさがあるゲームならまだしも、敵を倒すのはゲームの目的なのだから、それをうまくこなしたら、本来遠慮なくほめてほしい! 「たくさんやっつけて、強いねぇ!」と。拍手喝采、大声援ですよ。ごほうびもかかさずに! そのほうがプレイしているほうも楽しめるし、気分がスッキリしますよね?
 ゲームだって、お話の展開に繊細で深い表現を施すことは充分可能でしょう。なので、敵を倒すことそのものに哲学的な意味を持たせるのは、ストーリー的には有効かもしれません。そういうソフトの価値も認めます。が、お客さんがナニを求めてパッケージを買うのか、ということは、誤解がないように伝えなければ。ストーリーを推したいのなら、その手のものが好きな人だけが選んで買えるように伝えればいいんです!
 アクションゲームは、多くの場合敵を倒してスッキリしたり、攻略を楽しみたいために買うものだから、そこは分けてほしい。売りを明確にできず、パッケージの裏側にストーリーがつらつらと記されているのを見ると、このゲームの楽しさって、つまりどこなの? と思ってしまうこともあります。
 ともあれ、お話を見せたい(場合によっては"押しつけたい"?)ばかりに、遊ばせる相手にうしろめたさを感じさせすぎてはいないでしょうか? ストーリー制作だけに目がいってしまうと、そういうワナにはまりがちだと思うので心配なのです。ゲームはおもしろいのが何より! なので……。『スマブラ』などでは、歓声を入れたりすることで"ほめる"役目を果たせるようにしています。
『真・三國無双』シリーズで百人斬りなどを達成すると、「お前こそ万夫不当の豪傑よ!」と武将からほめられたりしますよね。こういうゲームを見るたび、「うん! それそれ!」と思ったりするわたしでした。

 

※転載にあたり、コラム本文に付随していた写真や解説、スーパーヘルプ、ふり返って思うことは割愛しております。あらかじめご了承ください。

 

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桜井政博のゲームを作って思うこと
4月2日発売 1155円[税込]

日本のゲーム業界を牽引する気鋭のゲームデザイナーのゲーム論

●カラーページに『新・光神話 パルテナの鏡』開発中のゲーム画像を掲載!! 
●スペシャル特典として、ニンテンドー3DS用ソフト『新・光神話 パルテナの鏡』で遊べる"ARおドールカード"2枚を綴じ込み! 

2012年3月27日 11:48